みんなのおむすび

 ほかほかごはんに好きな具材を合わせるだけ。シンプルで安くて、だれにでも作れるおむすび。 なのに、口にすると不思議な満足感が――。そこに秘められた "おむすびの心" を探るべく、創作野菜料理家・宮本しばにが、日本中のおいしいおむすびを巡り、レポートをお届けします。
 今回ご紹介するのは、長野県の村田真彌子さんが作る、香りのよいおむすびです。

第3回 村田真彌子さんの「香るおむすび」

2015.07.25更新


 村田真彌子さんは長野県松本市を拠点に「香り・色・スパイス・ハーブ」をテーマにした講座や施術を行っているセラピストです。
 植物から抽出される香りを利用する「アロマセラピー(=芳香療法)」や、薬用植物であるスパイスやハーブなどの自然療法をはじめ、色彩心理、月の満ち欠けと心身のリズムとの関連性......といったテーマに長年取り組んでいます。
 独自の視点と知識を駆使した、一人一人のリズムに合わせた心の処方することで定評があり、私自身も彼女と「食と色」をテーマにしたコラボ講座を開催したことがあります。

 村田さんは、子供の頃から「体調の優れない時にいただくといい食の知恵はあるのに、気持ちに元気がない時にそれに添うお食事がないのはなぜだろう?」と考えていたそうです。
 その疑問は、セラピストとしての人生を歩むうち、食に色彩や香り、月のリズムといった新しい視点を取り入れることで、解決することになります。
 色彩や香りは本能を刺激します。料理に色や香りを意識して取り入れるだけで、身体だけではなく、心にも良い影響を与えてくれるのです。また、色や香りは記憶や食欲など、脳の働きとも関係していますから、音楽と同じようにダイレクトに人の内側へ働きかけてくれるものでもあります。人の内面的な調和を図るために、とても大切な要素なのです。

 私自身、国内外のレストランに行ったときに印象的だった料理の味、色、香りはどこかで記憶していて、帰ってからその料理を再現しようとすると、そのときの情景、香り、色、空気、様々な記憶が自然に蘇ります。色や香りが人の繊細な部分に作用することが、このことからも分かります。

 小さい頃に食べたおむすびの記憶が、その人の人生の「温かな記憶」としてあるのは、色や香り、環境など、様々な要素が、脳、心、身体全体に染みこんでいるからではないでしょうか。温かな記憶を生み出す場所「キッチン」で働く人の役割は、とても大きいと思います。
 
 村田さんは現在、食に五感を上手く取り入れるための知恵を「心模様に合う食」として、講座などで紹介しています。そんな彼女が作ってくれたのは、スパイスやハーブを加えた「香るおむすび」。4種類ともに香りを意識した、記憶にも結び付きやすいおむすびです。


ハーブやオイルで香りづけ


 「クミンシード&チーズのおむすび」はフライパンで炒めたスパイスの香ばしさが引き立っています。チーズを入れるのは昔、食が細かった村田さんが少しでも食べられるようにとお母さんがおむすびに入れたそうで、今は彼女もそのおむすびを受け継いでいます。


 「ごま油のおむすび」(写真左)はご飯にごま油を混ぜるという、シンプルだけど面白い発想のおむすび。これは、油脂を使うとおむすびが冷めても美味しいからだそうです。
 「オイルのカロリーを気にして敬遠する方も多いのですが、オイルの種類によっては、健康維持・増進のために積極的に摂りたいものもあります。私自身、落ち込んだときにはまず、ぐっすり眠る。そして、好きなことをしたりお気に入りの場所に行ったりする。それでもダメならスプーン1杯のオイル(特に不飽和脂肪酸のオメガ3)を摂ります」と村田さん。
 なるほど、そういえばイタリアでは子供が風邪をひいたとき、寝る前にお母さんがオリーブオイルをスプーン1杯飲ませる、と聞いたことがあります。

 「シーチキンそぼろおむすび」(写真中)に入れるのは、甘辛に炒め煮したシーチキンと、「ネトル」(西洋イラクサ)というハーブ。ネトルは、カルシウム、ビタミン、鉄分を含んでいてミネラル豊富です。アレルギー体質に良く、血行促進、浄血作用があるそうです。強壮作用も見込めるので季節の変わり目や、忙しい毎日を送っている人にも良い働きをしてくれるようです。

 「甘酢生姜のおむすび」(写真右)は、暑い夏など食欲がないときにも食が進む味。さっぱりと寿司飯の様な感覚で食べられるので、簡単にお寿司風にアレンジできて、子どもと一緒にも楽しめそうですね。



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おむすびの心 その三

香りを意識したおむすびは、記憶にも結びつく。色と香りを心身に響かせよう!
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村田真彌子さんが主宰する「EVERGREEN」
http://evergreen.naganoblog.jp/

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文:宮本しばに 写真:野口さとこ

【文】宮本しばに(みやもと・しばに)
創作野菜料理家。20代前半にヨガを習い始めたのがきっかけでベジタリアンになる。結婚してから東京で児童英語教室「めだかの学校」を主宰。その後、長野県に移り住む。世界の国々を旅行しながら野菜料理を研究。1999年から各地で「ワールドベジタリアン料理教室」を開催。2014年10月には「studio482+」を立ち上げる。料理家の視点でセレクトしたキッチン道具&食卓道具のオンラインショップをスタートさせる。 著書に『焼き菓子レシピノート』『野菜料理 の365日』『野菜のごちそう』(以上、すべて旭屋出版) ほか。日本のソウルフードであるおむすびには日本独特の精神性があると感じている。売り物ではない「家庭のおむすびの心」の部分を、全国を歩きながら探索中。
studio482+

【写真】野口さとこ(のぐち・さとこ) 北海道小樽市生まれ。写真好きな両親の元、幼少期より写真に興味を持つ。 大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、写真家活動を開始。出版・広告撮影などに携わる。 2011年、ライフワークのひとつである”日本文化・土着における色彩”をテーマとした写真集『地蔵が見た夢』(Zen Foto Gallery)の出版を機に、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどのアートフェアで展示される。2014年12月より、移動写真教室”キラク写真講座”を主宰している。
http://www.satokonoguchi.com/

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