みんなのおむすび

 2016年10月、ミシマガで「みんなのおむすび」を大人気連載中の料理家・宮本しばにさんのレシピ集『野菜たっぷり すり鉢料理』(アノニマ・スタジオ)が発刊になりました。

「擦る」だけではなくて、たたく、つぶす、おろす、あえる......ええっ、こんなすり鉢の使い方があったの!? と、その新しさと可能性、そしておいしさにびっくりして、すり鉢の魅力を再発見できる一冊です。
 素敵なお料理のお写真の数々は、この「おむすび」連載でもおなじみ、野口さとこさんが撮られています。

 今回は著者である宮本しばにさんと、企画・編集を担当された友成響子さんに、すり鉢料理の魅力をうかがいました。前後編でお届けします。

(聞き手・構成:新居未希、写真:野口さとこ)

番外編 『野菜たっぷり すり鉢料理』刊行インタビュー(後編)

2016.11.25更新

(前編はこちら)

すり鉢でこれも作れるんだ!

―― レシピを見ていると、「あ、これは家にあるぞ」と思うもので作られているものもたくさんですね。うわぁ、この「豆腐コロッケ(p.34)」むちゃくちゃ美味しそう。

友成豆腐コロッケも、お豆腐ってけっこう水切りするのが大変ですけど、すごく簡単な方法をしばにさんが本のなかで教えてくださっているんですよ。

しばにそう、お豆腐をお湯でゆでたあとにね、ぎゅっと水分をしぼるだけ。すごい簡単なんです、じつは。

―― えっ! ゆでるんですか? お豆腐の水切りって、なんか重石をのせて、とかして、すごく時間がかかるイメージでしたけど......。

しばにそうそう。でもそれだと、1日前にやっておいたりしないといけないじゃない。「よし作ろう」と思ってもなかなかすぐにはできない。でも、この方法だと思いついたらすぐできて、おすすめです。でもゆでたばかりのお豆腐はやっぱり手ですぐにしぼると熱いから、私は30分くらい重石をして水分をぬいてから、ぎゅぎゅっとしぼってます。それでもうできちゃうから、簡単なの。中国の精進料理を手本にしてますけれど、そうすると短時間で水分が抜けちゃいます。

―― レシピ本とかでもちょくちょく「水切りをする」とか書かれてますけど、これに一体何時間かかるんだよ! ってずっと思ってたんですよね(笑)。

友成さらっと書かれてますよね(笑)。今これを、と思ったときに作りたいですもんね。

しばにこの本に載せている「豆腐シュウマイ(p.28)」も、この水切りの方法で簡単につくれるからおすすめですよ。水切りした豆腐と調味料をすり鉢でまぜて成形して、片栗粉をまぶすだけ。

友成このシュウマイ、すごく新しい味というか、これまで食べたことがないおいしさ感じでした。

―― え!(ページを見て)シュウマイって、蒸し器がなくてもつくれるんですか? 土鍋でも? うわー、土鍋だったら持ってます、私。

しばにそうそう、土鍋でできるの! なかなか蒸し器ってそろえたりするの難しいでしょう。土鍋にね、おちょことか小皿とかなにか、土鍋の底から高さがでるようなものを置いて、もうその上にお皿や網を置けばいいの。クッキングペーパーがなかったら、キャベツや白菜の葉っぱなんかを置くと、くっつかないし。実際、中国でも蒸すときはそういうふうに工夫したりしています。あとは熱湯を注いで蒸せばいいわけです。普通のお鍋でもできますよ。

―― うわぁ、これ嬉しい。すごいテンションあがりました。すぐやります。(*詳しい方法は写真付きで本のなかにも載ってます!)

しばにうまいどぉ、これは。このシュウマイはかなりおすすめ。余ったらね、そのまま揚げてもおいしいです。揚げシュウマイの豆腐版。

―― ひぇ〜、聞いてるだけで、もう美味しい...!


これが噂の豆腐シュウマイ。美味でした...。


且緩々で料理をしよう

しばにでも私は、ただレシピを教えたり、すり鉢ってこうなんですよ、というだけではなくて、その先のことを伝えたいと私はいつも思っていて。
「且緩々(しゃかんかん)」っていう、「落ち着いてゆっくりやりなさい」という意味の禅語があるんだけど、すり鉢はその代名詞かなあって。若いお坊さんが、自分が行のなかで早く悟りを得たいがために、なんでも急いでやっていたのを、上のご住職が見て「且緩々」とおっしゃった、という話なんだけどね。
 とくに都会のひとはみんな、忙しく働いたり生活したりしているから、30分で作らなきゃいけない、15分でなにか用意しないといけない、というのはすごくわかるの。でもそのなかで、ガチャガチャガチャッと急いだ料理をしてしまうと、食べるひとにもガチャガチャガチャッという気が伝わってしまうから。

―― うぅっ、たしかに。

しばにそれは、目にみえないものだし、知らぬ間にいつの間にか心に入っていくもの。だから、料理をするひとはすごく大切な役割を持っていると思うんです。忙しいなかで、「食べさせなきゃ!」って焦る気持ちももちろんわかるけど、料理を作るひとは、みんなの健康や気持ちに直に関わる大切なお役目を担っている。だから「15分で三品つくろう」じゃなくて、15分で一品だけでも大切に丁寧に作ったらいいと思うの。三品をガチャガチャとつくるんじゃなくってね。

―― そう言ってもらえると、なんだか安心するというか、心が落ち着きますね。

しばになんだか、私もすり鉢をきっかけにすごく成長させてもらっているなと思っています。私はこういうことをしたいんだ、伝えたいんだ、ということ、この本を作っていくなかで気づかされたことがたくさんある。私にとっても、すごくありがたい一冊です。



(左)表紙にもなっている蕎麦サラダ。もはやこれは発明。むっちゃおいしいです。
(右)なんとすり鉢で、パスタも!

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文:宮本しばに 写真:野口さとこ

【文】宮本しばに(みやもと・しばに)
創作野菜料理家。20代前半にヨガを習い始めたのがきっかけでベジタリアンになる。結婚してから東京で児童英語教室「めだかの学校」を主宰。その後、長野県に移り住む。世界の国々を旅行しながら野菜料理を研究。1999年から各地で「ワールドベジタリアン料理教室」を開催。2014年10月には「studio482+」を立ち上げる。料理家の視点でセレクトしたキッチン道具&食卓道具のオンラインショップをスタートさせる。 著書に『焼き菓子レシピノート』『野菜料理 の365日』『野菜のごちそう』(以上、すべて旭屋出版) ほか。日本のソウルフードであるおむすびには日本独特の精神性があると感じている。売り物ではない「家庭のおむすびの心」の部分を、全国を歩きながら探索中。
studio482+

【写真】野口さとこ(のぐち・さとこ) 北海道小樽市生まれ。写真好きな両親の元、幼少期より写真に興味を持つ。 大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、写真家活動を開始。出版・広告撮影などに携わる。 2011年、ライフワークのひとつである”日本文化・土着における色彩”をテーマとした写真集『地蔵が見た夢』(Zen Foto Gallery)の出版を機に、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどのアートフェアで展示される。2014年12月より、移動写真教室”キラク写真講座”を主宰している。
http://www.satokonoguchi.com/

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