ミルコの六本木日記

第32回 知らないひとに襲われる

2012.03.02更新

国道で信号待ちをしていたら、右側の背後から自転車で何者かが迫ってき、
私の運転席側の窓をものすごい力で叩いた。
叩いて、そのままスピードを上げて去っていった。
全身真っ黒で、深くフードを被っている。
知らないひとだ。
なぜ私のクルマを襲ったのだろう?
何か失礼があったなら謝りたい。
しかし停車位置も合っていたし、迷惑をかけた覚えはない。
また、よしもとばななさんの、"「なんくるない」の私 " (ミルコの六本木日記 第4回)だと思った。
無差別にやったのだろうが、その拳には恨みの感情があったように思えて、私は怯えた。
助手席に父が乗っていたので、なんとか気持ちを落ち着けてそのまま帰ったが、
ウチの前であのフードの男が待っているかもなどと想像して怖がり、警察を呼ぼうかと思ったほどだ。

外に出れば、いろんなひとがいる。
いま、私は社会復帰中である。
久しぶりに頻繁に電車に乗り、人に会っている。
社会にはあたたかく素晴らしいひとがたくさんいるが、ひどく苛ついているひともいるのだと思うと、
外の世界も、内側の世界も、同じだと思えてくる。
得体の知れないパワーを持つ細胞は、おそらくいまもその残党が、ひっそりと私の体内にうずくまっているだろう。
けして治ったとは思っていない。
病いを抱えて生きていくのだと、心得ている。
体内にある恐怖から解放されることはないように、外の世界へ踏み出すならば、それなりの覚悟と用心が要る。

「しっかりしなければ」

見知らぬひとからの攻撃によって、私は暫くの眠りから醒めた。

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山口ミルコ(やまぐち・みるこ)

プロデューサー、編集者として出版社で20年、現在はフリーで芸能、文芸のさまざまな企画にかかわっている。趣味は楽器演奏。「ジャズジャパン」、フリーペーパー「BIGBAND!」、富士通テンの音楽情報サイトKOBE jazz jp などにエッセイを書いている。
著書に『毛のない生活』(ミシマ社)がある。

http://kobejazz.jp/

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