ミルコの六本木日記

第34回 地球のいいなり

2012.05.11更新

毛のない生活』が出て以来、思わぬ懐かしい方から連絡をいただく。
どんなに離れていても、あいだがあいても、ある時期を共に過ごした仲間や大切な人とは再びつながれるのだと思うと、励まされる。
がその一方で、そのうちの何人もが、乳がんに罹患していることを知る。
私の本を手に取ってくれたのだから、つまりそういうことでもあるのだが、乳がん蔓延を実感させられ胸がいたむ。
同じ病気になってもひとそれぞれ、病いの性質も治療への取り組みも違うが、どうあっても、同時代を生きた人と、ある修行をしている気がしてならない。
何かの課題を一緒にしょっている。
それを見つめる時間を、与えられている。

本が出て、インタビューを受けたり、同じ体験者の方と交流の機会が増えるにつけ、がんというやつの面倒に直面する。
ないがしろにすると暴れ回り、可愛がりすぎるとつけあがる。
内面の怪物とはよく言ったもので、敵は外ではない、自分のなかに飼っているのだということを、体験的に学ばざるをえない。
予想はできたことなのだが、がんの本を出したことの、リバウンドがちょっときていた。
病気の人として生きていく感に、落ち込みぎみだった。
「もうわりと元気なんですけど」と口では言っても、「治った」と思えないのは生体の奥深さに参っているからだ。
内澤旬子さんがご著書のラストで " 身体のいいなり" を導きだすくだりは見事としかいいようがない。

意志だけで生きてきたこれまでの人生、身体はつらかったけれども、楽しいこともたくさんあった。 身体(と生活)を極限まで無視した分、得がたく面白いことを見れたし、学べたという自負はある。 でも癌を作るまで(?)身体を本気で怒らせることになったのはまずかった。
『身体のいいなり』(内澤旬子、朝日新聞出版)

これを読んで気づかねばならない。
世紀をまたいで生きる私たちの修行は、"地球のいいなり"を思い知ることなのだと。

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山口ミルコ(やまぐち・みるこ)

プロデューサー、編集者として出版社で20年、現在はフリーで芸能、文芸のさまざまな企画にかかわっている。趣味は楽器演奏。「ジャズジャパン」、フリーペーパー「BIGBAND!」、富士通テンの音楽情報サイトKOBE jazz jp などにエッセイを書いている。
著書に『毛のない生活』(ミシマ社)がある。

http://kobejazz.jp/

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