ミシマガシネマ

 今回は、それぞれのおすすめの映画ではなく、ひとつお題の映画をあげて、それについてみんなで話すことになりました。
 お題になった映画は、ディズニー映画『トゥモローランド』。
 ウォルト・ディズニーが晩年にずっと構想していたという未来都市の謎をめぐり、冒険に憧れる勝気な17歳のケイシー(ブリット・ロバートソン)、その存在を知る男フランク(ジョージ・クルーニー)、そして、謎の少女アテナ(ヒュー・ローリー)の3人を軸に繰り広げられる、ミステリー・ファンタジーです。

<今回のメンバー>
      

*簡単紹介
ホリベ...顧問(恵文社一乗寺店店長・堀部さん)、タモン...装丁家・矢萩多聞さん、シオデ...立誠シネマスタッフ・塩出さん、ヒラタ・ハセガワ・アライ・トリイ...ミシマ社メンバー

2015年7月 今月の一本

2015.07.19更新

(C) 2015 Disney Enterprise,inc. All Rights Reserved.


トゥモローランド 公式サイト http://www.disney.co.jp/movie/tomorrowland.html

6月6日(金)より全国公開



 ※ 完璧にネタバレです。ご注意ください!


 今日は、トリイさんが初参加です。トリイさん、大学時代に映画撮ってたらしいじゃないですか。


 ええ〜〜!



 いや、ほんと、そんなたいしたことないんだけどね...


 

 どんどんキャラが怪しくなっていきますね。


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 ホリベさんは、『トゥモローランド』はこの映画部で話になる前から、観ようと思われていたんですか?

 うん、観る気でしたよ。すこし前に、「懐かしい未来」というテーマでイベントをしたことあるくらい、気になるテーマではありました。
 むかし思い描いていた、たとえば星新一の小説に出てくるような未来って、大体ロボットは人型でしたよね。ロボットは人間の忠実なしもべで、未来都市は流線型で、空にエアカーが飛んでいて...というものでした。でも、そういう未来はある時期から描かれなくなってしまった。たとえば『ブレードランナー』のような、混沌とした、すこし暗い未来が描かれるようになったんですね。人間の下僕としてテクノロジーがあるのではなくて、テクノロジーに支配されたネガティブな未来像みたいなものが蔓延しはじめた。


 うんうん。


 まさに『トゥモローランド』って、楽観的ともいえるポジティブな未来像をみんなが思い描かなくなったから、こういう暗い未来になったんだ、という話ですよね。......さておき、結論から言うと、映画自体はあんまり面白くなかった。


全員爆笑

 ちょっと脚本が失敗だったかなと思います。未来の描き方って、いろいろありますよね。超未来で科学技術が発達しているのになぜか蒸気が上がっていたり、火花が散っていたり......「スチームパンク」という言葉もあったりして。


 ちょっとレトロな要素と、未来がくっついている。


 そうそう。この映画って、そういう要素も入っているでしょう。フランク・ウォーカーの家とか。


 あの家はたまらなかったですね! 子どものときってあんなことばかり考えてたなあ、もし悪い奴が来たらここに罠作ってやろうとか(笑)。



 ぼく、あのお風呂ほしいです。いろんなボタンがあって。


 でもたぶん、本当にあれくらいの技術があったら、すでに操作方法がボタンとかじゃないはずなんですよ(笑)。科学技術が発展しきっていないときに描く未来って、そういうものでもあるんですよね。
 けれどあまりに技術が発展して、現実が、昔思い描いた未来を超え始めたいま、想像力を使う余地がなくなってきている。まさにあの映画のメッセージは、「それでも楽しい未来を描こうよ」というものでしたよね。

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エッフェル塔が最高潮!

 でもなにかと解説が必要な感じですよね。予備知識がないとか、お約束になっている設定があまりにも向こうの都合になっているので、こちらのほうからわかってあげないといけない部分が多かったという面では、私も脚本が微妙だったと思いますね。

 トゥモローランドに行ってからの盛り下がり具合が半端じゃないんですよね。都市の中枢に行くまでがもう少し丁寧に描かれていたら、冒険譚としてはもっと面白かったんじゃないかなあ。


 たしかに、エッフェル塔にいくまでのディティールはすごく完璧で、期待値がガンガン上がっていくのに、そこからの着地点が拍子抜けでしたね。


 そうなんですよ。この『トゥモローランド』の元ネタは、ウォルト・ディズニーが晩年、長きにわたって構想していた「エプコット」という未来計画都市ですよね。彼が理想とした都市構造や、細かいところがもう少し見れるのかと期待していたんです。
 でも、ただ人がいっぱいいて流線型の車や機械がビュンビュン飛びまわっている風景しか見れなかったじゃない? それこそ遊園地的な世界というか。意識の高い人たちが住んでいて、ひとつの合理性の元にシステマチックに生活が行われているというシーンがほとんど出てこない。残念だったなあ。

 システムがかなりアップデートされた未来でありつつ、手塚治虫の『メトロポリス』やスチームパンクの要素を取り入れて描かれていたら、すごくよかったんだろうなと思うんですけどね。


エスケープ・フロム・トゥモロー

 話が飛躍するんですけど、トゥモローランドの人たちが、一方的な価値観で歴史や運命をコントロールしようとするじゃないですか。ぼくは子どものころから、ディズニー映画全般にあの雰囲気を感じていたんですよね。みんな笑顔だけど、裏で何かされている気がするザワザワ感。ある時期からディズニー映画を見るのが怖かった。


 洗脳されそうな感じ、ってことですよね。


『エスケープ・フロム・トゥモロー』ランディ・ムーア/監督(アミューズソフトエンタテインメント)

 この映画もちろんディズニー制作だから、ディズニーの思い描いた世界がものすごくポジティブなものとして描かれているんだけど。『エスケイプ・フロム・トゥモロー』という映画が、タモンさんがおっしゃっているような一面を描いているんですね。ランディ・ムーアという監督の作品なんですが、ディズニーに無許可でゲリラ撮影をした映画です。
 彼は幼い頃からディズニーランドに連れて行かれていてミッキーやミニーたちの笑顔の世界が同調圧力のように思えてすごく怖かったそうです。無菌状態の未来を一面では素晴らしいと思えるけど、そういうことを感じる人はすごく感じるんですよね。


 わ、気になります!


深みにはまる、タモンさん


 ぼくは、物語の最後がすごく気に入らなくって。



 あれはダメですよねえ。


 結局、選民思想というか、選ばれた人間が世界をコントロールしていく...みたいな終わりがなあ。脚本を書いた人がどう考えたかわからないけれど、ウォルト・ディズニーってそういう人だったんじゃないかな、と思うんですよ。


 

 それはあると思います。


 ちょっとウォルト・ディズニーのこと調べたんです。そしたら出るわ出るわ。『エスケイプ・フロム・トゥモロー』じゃないけど、深みにはまってしまって(笑)。
 アメリカに「デモレー団」という、ボーイスカウトみたいな小さな組織がある。秘密結社フリーメイソンの子団体なんだけど、彼も若いときに参加していた。その団員はみんなバッチをつけているんです。

 

 おおぉ!!!


 デモレー団の紋章が刻印されているバッチを付けた若者たちが、世界を理想の形に変えていく。


 それってまさに! じゃないですか!!


 そうそう。ウォルトは幼少期からそういう思想を持っていたから、理想都市を描くと自然にこうなるんだなと、自分のなかですごく筋が通った。最後にバッチを持って、子どもたちが選ばた人間を探しに行きますよね。それって、デモレー団が新しい団員を探しに行くようにも見れるわけじゃない? ディズニー自身、ひどい人種差別主義者だったとも言われている。
...と、そんなことをネット検索しているうちに「なんで僕こんなこと調べてるんだろう」と思って(笑)。

 あはは!!


 映画はイマイチだったけど、まんまと乗せられてしまいました(笑)。アメリカ人がこの映画を観て、どれくらい伏線を拾うのかわからないけれど、男の子心をくすぐるというか、カルト、SF、陰謀論とかが好きな層にはたまらない要素がいっぱいありますね。


 タモンさん......調べすぎじゃないですか?



 そうだね、ちょっと夢中になっちゃったね(笑)。


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それが、物語の面白さ

 けれど失敗作であろうとなかろうと、映画を観るだけで、タモンさんのようにディズニーについて調べてみたり、色んなことに興味を持てますよね。そういうことが、僕は好きなんです。
 サントラの曲が気に入ったら、そのアーティストにも興味を持ったりして、そこからどんどん能動的に自分の興味が広がっていく。そうなるとたとえばCDショップに行くときも楽しみになったりとか、本屋さんに行くときも棚の見方が変わるでしょうし。そういう広がりがあるのが面白いと思うんですよね。

 わたしは頻繁に映画を観るようになるまでは、「これって自分だけが感じてるのかな」「本当にそれを意図して作られてるんかな」とか、映画が発しているものを自分はうまく受け取れないかもしれない、と思ってました。

 脚本を書いている人が正解と思って書いていることはあっても、観る人がこう観ないといけないっていう正解はないと思います。背景を調べれば調べるほど楽しめるし、単にプロットが面白いというだけでも成り立ちますよね。
 映画だけじゃなく、小説とかもそう。主人公に著者の言いたいことを言わせているのって、最低でしょう。


 なんかいますごい発言出ましたね(笑)。でも、その通りですね。


 「少年犯罪は良くない、あなたたちは裁かれるべきよ」とか、登場人物にそのまま語らせるのなんて最低だと思うんです。現実離れした冒険譚を書いているんだけど、実は自己鍛錬であるとか、平たく言うと友情みたいなものの良さというのが、読んだ後になんとなく残る、というのがいい物語だと思う。フィクションって全部そうですよね。
 最近の映画だけじゃなくて、昔からいろんなメタメッセージは含まれてるし、小説だってありとあらゆるものはそう。そもそも作者が正解とも思っていないこともありますしね。

 そうですよね。そういうエンターテインメント的なものって、幅を拡げる余地があるのかもしれないですね。逆にシリアスなものはドラマとしてしか観れないけれど。


 

 全然違う角度から観れるのって、すごく面白いと思いました。


 わたしはシンプルに、アテナ役のラフィー・キャシディがすっごく可愛いと思いました。次の作品でも、彼女が出てきたらすぐにわかると思う。これからずっと成長を見続けるんだろうなって。そんなシンプルな楽しみ方もいいかな、と思いましたね。

 わたしは、最初にアテナが着ていたお洋服がすごくいいなと思って、誰が衣装担当なんだろうと思って調べたら、『オーシャンズ11』やウディ・アレン監督の映画も担当している、ジェフリー・カーランドだったんです。このデザイナーさんだから、この映画を観よう、っていうのもいいなと思いました。


 衣装つながりっていうのも面白いね!


・・・

 たいへん盛り上がった映画部座談会。
 ひとつの映画からたくさんの世界に広がり、そしてそこからまた広がりがある。
 そんな映画の楽しさを知れた回でした!

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ミシマ社 映画部

2015年、映画をもっと楽しもうと、ミシマ社有志で発足。
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たくさん映画観るぞー!

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