ミシマガシネマ

©2014 MANDARIN CINEMA - MARS FILM - FRANCE 2 CINEMA - FOZ

 前回の映画鑑賞後の座談会が楽しかったので、今回も座談会形式でお届けします。
 今回の課題作品は、『17歳』『8人の女たち』などの作品で異彩を放つ、フランソワ・オゾン監督の最新作『彼は秘密の女友だち』。


 幼い頃からの親友のローラを亡くし、悲しみに暮れていたクレール。ある日残された夫・ダヴィッドと生まれて間もない娘の様子を見るために家を訪ねると、そこにはローラの服を着て娘をあやす、ダヴィッドの姿があった。
 ダヴィッドから「女性の服を着たい」と打ち明けられ、驚き戸惑うクレールだったが、やがて女装した彼を「ヴィルジニア」と名づけ、絆を深めていく。心から楽しげに化粧品やアクセサリー、洋服を選ぶヴィルジニアに影響され、クレール自身も女らしさが増してゆくのだが──。


 という、気になるストーリーです。
 ダヴィットを演じるのは、フランスの俳優ロマン・デュリス。『タイピスト!』のスポ根(?)ルイ・シャール役も素敵でした。クレール役はアナイス・ドゥムースティエ。フランス界で今注目の、若手女優さんの一人だそうです。今回は映画部女子ーずでお届けします。

彼は秘密の女友だち 公式サイト http://girlfriend-cinema.com/

8月8日(金)より全国順次公開



<今回のメンバー>
    

*簡単紹介
シオデ...立誠シネマスタッフ・塩出さん、ヒラタ・ハセガワ・アライ...ミシマ社メンバー

2015年8月 今月の一本

2015.09.03更新

<予告編をどうぞ〜>

注意:今回もネタバレ多発です!!!!!


とにかく、ロマン・デュリスがすごい

 今日は、ホリベさん・タモンさんは多忙でお休み。トリイさんは、なんと映画を観ていないとのことで不参加です。

 ええーーー、トリイさん、早速ダメダメじゃないですか。


 ということは、今日は女子4人ですね。にしてもこの映画、すごく良かった!!


 とくにダヴィット/ヴィルジニアを演じている、ロマン・デュリスが本当にすごくて、圧巻でしたね。

 

 女装をしたダヴィットに、クレールがはじめて出会うシーンが印象的です。赤ちゃんを抱っこして階段を上るダヴィットの脚が、本当に綺麗で...! 「なんかエロいな」とすら思いました(笑)。

 しかも、時を増すにつれて、だんだんと女子度が増していっていましたよね。


 私は、はじめのほうはダヴィットが「女の格好をしている男」にしか見えなかったんですね。けれど見てるうちに、もう「女の人」にしか見えなくなっていった。

 

 本当に上手いですよね。脚の綺麗さや仕草の部分、すっごく研究されてるんだろうなと感じました。フィルターが解放されて、女装が自由にできることに対しての喜びの表情や、はしゃぐ表情がすごかった。

 もう、目が輝いていましたよね! ロマン・デュリスの凄さを感じました。

(C)2014 MANDARIN CINEMA - MARS FILM - FRANCE 2 CINEMA - FOZ



ひと捻り、さらにひと捻り

 

 予告編では少ししかストーリーが明かされていなかったので、女装をしたダヴィットが、女ともだちとしてクレールと近づいていく...という流れを見て、単純に女友だちの話なんだと思ってました。けれど観ているうちに「ほぉ〜なるほど、もう一捻りありましたか」と。

 まだ自分の中でいまいち整理がついてない部分がたくさんあります。
 映画の終わり、お腹が大きくなったクレールと、ダヴィットが歩いていましたよね。わたしは、クレールにはジルとの間の子どもができて、ダヴィットはあくまでもものすごく近しい女友だち、という終わり方なのかとはじめは思ったんです。けれど後から、最終的にヴァルジニアとしてのダヴィットとくっついて、という終わりなのか? と思ったら、そうとしか思えなくなってきて......。

 でも、どっちとも取れますよね。私は、「もう女とか男とか関係なく、好きなのはこの人」という感じかなと思いました。

 

 わたしはすぐに「あ〜別れたんだなぁ」って思いましたね。

 そっかあ。「性とか関係なく好きな人と一緒になって、性差を乗り越える!」みたいな感じということですか?

 うーん、「乗り越える」というのとはちょっと違う気がしたなあ。単純に「性別なんて関係ない」ということじゃなくて、性別というものはすごく複雑で、何が性なのかというのはわからないな、と思いました。

 私、観ているうちに自分も男か女かわからなくなってきて、すごい変な気持ちになりました。

 

 ダヴィットもクレールも、すごく揺れ動いていましたよね。それに見事につられてしまって、「え?こんな展開?」「それでまたこんな展開?」「え?」と、監督に遊ばれてしまいました(笑)。


それぞれに思いを巡らすと...

 わたしも遊ばれまくりました。いまだにわかってません(笑)。
 あの、はじめはダヴィットは、自分は女が好きなのであって、男には興味がない。自分は心は男だというんですよね? でも途中から「女装しているこの姿が本当の自分だ」と。女の姿をしているのが本当の自分で、それは「ヴィルジニアという女」が「クレールという女」を好きっていう意味になっていく。はじめは男が女を「いいな」と思っていたけど、その男は、途中から自分は「女」だって思い始めたという......。


 そこに、もうひと捻りがあるってことですよね。

 はじめは女装が好きなだけで、自分は女だとは思っていなかった。けれどだんだん、女の姿をしているのが本当の自分だ、となる。けれどそう思いつつも、女装しているわけですよね。いや、女装と思うからちがうのかな、うーーんと......

 はじめは、性が変わることに対する喜びとしての女装だったかもしれないけど、より魅力的な女になりたいと、変わっていく。それはグラデーションだったのか、どこからそうなったかはわからないけど、私は最初から「男が女装している」というより、「体は男だけど、心は女」という感じで見ていました。体は男で心は女、恋愛対象は女、みたいな。
 そう考えると、性ってすごくいろいろあるんだな、と思って。じゃあクレールはどうかというと、体は女で心も女で、恋愛対象は......

 男女どっちも、っていうことですよね?

 そっか、ジル(旦那)と結婚をして、愛していたわけだから!

 でも無意識には女が好きで、女としてのヴィルジニアに惹かれたんだなって思う。

 ダヴィットは、「ローラがいた時には女装したいとは思わなかった」って言ってましたよね。

 そうは言っていたけど、「本当に?」「してたんじゃない?」と思ってました。無意識的に、女装をしたい気持ちはあったけど、女性の夫として生きているから抑えていたんじゃないのかな、と。
 自分は男でいるか、女装している=女の心になるか、というところで押さえつけられていたと考えると、男の心で女性を好きになった、というのがローラと結婚した理由だったんじゃないのかなあ。だから、無理して女性と結婚したんじゃなくて、男の気持ちとしてローラのことを好きだった。だからローラと結婚していたときは、女装しなかったのかな、と思いました。

 映画館で隣の男に脚を触られるシーンがあったけど、ダヴィットはただ単に綺麗になりたいというか、「綺麗」と思われることに快感があるのかな、と思ったんです。私も、男性のスーツとか着て「カッコイイ」って言われてみたいし、そういうのと一緒なのかなって思っていたんだけど、でもどうなんだろう...。


愛情と性欲は違う?

 最後の終わり方は、クレールとダヴィットがパートナーシップを組んで、二人の間の子を身ごもっているんだと思ったんですね。けどそう思いつつも、クレールとジルは夫婦のままで、ダヴィットには別のパートナーがいて、いままでの関係もそのままで繋がっている......というかたちのエンディングも想像してしまいました。

 私は、クレールはジルとの子どもを身ごもったのかな、とはじめは思っていました。クレールとローラの関係も少しそうなのかもしれないんですが、友情と愛情って似ているのかな、ってこの映画を見ていて思ったんです。そういうふうに観ていると、クレールとジルも愛情で結ばれているし、ダヴィットとクレールも友情みたいな愛情みたいなもので繋がっていて、ジルとダヴィットも友だちだし......もう、みんなで仲良く生きていけないのかなあと(笑)。

 姿にこだわらず自分らしく生きていって、その中でいろんな関係があっていいんじゃないか、というのは、わたしも考えましたね。

 けれどセクシャルなところに焦点を当てると、愛情と性欲みたいなものは違ってくるのかなあと私は思いました。クレールとジルの間に、愛情はあったのかもしれない。でも、セックスシーンでは、クレールはあんまり乗り気じゃなさそうに描かれてましたよね。
 そう考えると、みんなで仲良くっていうのは素晴らしいし、これから3人でパートナーになるという選択肢ももちろんあるのかもしれないけど、愛情だけで関係を結ぶというのは、現実的にはなかなか難しいのかもなぁって。
いい具合にジルが鈍感に描かれていましたよね。クレールがめっちゃ落ち込んでるのに、昇進の話をしたりとか(笑)。

 してた!!!(笑)

 たしかにセクシャルな描写は重要な要素としてたくさん描かれているような気がしました。映画自体もそういう部分にスポットを当てたものだから、愛情や友情と性的なものとは切り離せないというようにも感じたけれど、フランスのお国柄、そこに焦点をあてている気も少し感じたかな〜。

(C)2014 MANDARIN CINEMA - MARS FILM - FRANCE 2 CINEMA - FOZ



性別はとってもあいまいなもの

 けれど、男女という性別のなかだけではなくて、女の人でも女性らしくあることに対する揺らぎというか、戸惑いみたいなものを持っている人はいますよね。たとえばダヴィットのように着飾ったり、きれいな格好をするのに抵抗があったり。女の人の中でも色々揺らぎがある中で、ダヴィットみたいな人を見ていると、何がどれかわからなくなってくる。じゃあ女らしいってなんなんだろうとか......。

 そうですよね。逆だから、揺らいでるから余計に象徴的なものを求めて、ハイヒールだったり女装をするようになるのかもしれない。

 この映画、「今から女装や同性愛の映画を観ます」という構えがなくて、すごく自然な感じでした。登場人物たちも、彼らの住んでいる町の風景とかも、一般的な、ふつうな感じだったから、なんか、自分にすごく近い気がして。「自分もそこの一部だ」と思うくらい不思議な気持ちになりました。
 だから、もしかしたら自分はいまは仮の女性の姿だけど、よく考えてみると、人間はたぶんみんな、出処は同じですよね。そう思うと、自分の裏側は男なのかなとか、いろいろ思いました。


 いろいろと考えさせられる映画でしたね。

 それが、重く考えさせられるといういうよりも、フワッと考えさせられるというか。
 あとこれだけは最後にどうしても伝えたいんですけど、あのクレール役のアナイス・ドゥムースティエの髪型が、どタイプでした。アプリコットオレンジのような髪色もすごく良かった。髪の毛先がくるんとなっているミディアムヘアに、もうトキメキすぎて仕方なかったです!!

 かわいかった! 映画のために、監督に言われて髪を染めたらしいですね。

 ファッションも素敵でしたよね。そうそう、私が観たとき、映画館にはやっぱり女性が多かったんですよね。女同士で話したい映画ではあるなとも思うんですけど、だからこそ男性の視点もぜひ聞いてみたい。トリイさん、なんで宿題をやってきてくれなかったんだろう......(笑)。


 トリイさーーーん!

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 この冬には、『博士と彼女のセオリー』で素晴らしい演技を披露したエディ・レッドメインが世界で初めて性転換手術を受けた女性を演じる『The Danish Girl(原題)』も公開されますね(アメリカで、ですが)。性、というものに対して、映画界で注目が集まっているのでしょうか。こちらも日本公開が待ち遠しい〜!


 さて次の課題映画は、9月11日全国公開『キングスマン』!
 コリン・ファースがスパイ役というだけで、胸がときめきますね!!!

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2015年、映画をもっと楽しもうと、ミシマ社有志で発足。
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たくさん映画観るぞー!

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