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第1回 寺子屋ミシマ社(前編)

2009.07.21更新

2009年6月6日、土曜13時。
小雨降る自由が丘のミシマ社オフィスで、初めての試みが行われました。

第1回寺子屋ミシマ社前編 ミシマ社画像 300ピクセル

その名も「寺子屋ミシマ社ワークショップ」。

寺子屋ミシマ社ワークショップとは、参加者30名で「出版社を立ち上げた」という過程のもと、
書籍の企画から「売る」までの過程を通し「出版社を作るということ」を1日で疑似体験できるのです。

はてさて、一体どんなイベントだったのか。
参加いただいた方の体験談を引用しながら当日のあの熱気をお伝えします!!

1.集ってくださった方たち

当日、それはそれは個性派の方たちばかりにお集まりいただきました。
ここからは一番詳細にまとめてくれたMさんのレポートに沿ってお届けします!
まずは開始前の様子から。

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私は現役の書籍編集者だ。出版業界に身を置いて約10年ほど。
最近、なんとなく自分の仕事にマンネリを感じるようになってきた。
そこで、ブログで知った「原点回帰の出版社」ミシマ社の、「寺子屋」と銘打ったワークショップに参加してみることにした。
他社ではいったいどうやって本をつくっているのか、ちょっと勉強してみて刺激をもらおうという気持ちである。

到着すると、すでに玄関前など入り口のあたりに人が結構集まっていた。

第1回寺子屋ミシマ社前編 靴の画像 250ピクセル

私の前にいた若者たちは、どうやら誘い合ってきたようで、楽しそうに会話を交わしている。
またいつもの感じか......とちょっとおじけづく(いつもの感じというのは、パーティとかでよく経験する、自分ひとりだけ知り合いが誰もいなくて、なんで来たのかよくわからなくなっちゃう感じのこと)。

20畳くらいの畳スペース。ぜんぶで30人と聞いていたが、7割がたがすでに来ていて、体育座りをしたりあぐらをかいたりしている。
20代の人がメインで、男女比は半々といったところ。

見回してみると、意外にひとりで来たふうな人も多そうにみえた。
しかし、ミシマ社のスタッフの人に挨拶したりしている人もいて、「あるいはひとりで来てる人の多くも意外に関係者だったりするのかもしれない。がんばろう」と思いつつも、できるだけ壁際に行って座る(実際には、ツテもなく、ひとりでふらっと来てみた人も多かったことがのちに判明した)。」

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まだ隣の人と話もせず、到着が遅れる人を待つ参加者の方たち......。
15分過ぎにメンバーが揃い、いよいよ会の始まりです!

2.三島は言う。「出版は全身運動です」と。

見るからに面白そうな人たちの集まりに、俄然盛り上がるミシマ社メンバー7名。

そこで開口一番三島が口にしたのは
「出版は全身運動です」
ということ。
「みなさん、今日は5時間もの間、頭をフル回転でワークショップに参加していただきます。
短時間で集中し、本気で考えると全身運動と同じくらい疲れます。
また、会社を体に例えると、編集や営業といった手足の部分がバラバラでは上手く出版社はまわりません。
一部分を鍛えるのではなく全体を見て、全身運動として鍛えないと意味がありません。
両者が協力できてこそ、読者に良い本が届けられるのです。
長い時間ですがどうか、これを良い機会に一緒に楽しく出版社を体験していただけたらと思います。」

第1回寺子屋ミシマ社(前編) 画像 250ピクセル

そんな挨拶で始まった編集の時間。
その様子は、引き続きMさんのレポートからどうぞ。

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プログラムがはじまると、三島氏はいきなり
「じゃあ、3分あげますので、思いつく企画と著者をどんどん紙に書いていってください」
と言った。ええー、仕事でもできないのに......といきなり追いつめられる。
まわりの人を見ると、結構さっさか書いていたりする。

第1回寺子屋ミシマ社(前編) 画像 250ピクセル

すると今度は、「まわりの人4人くらいと組んで、皆さんの企画を見せ合い、3つベストの企画を決めてください」との指示。
「やりましょうかね」という感じになったメンツは、20代っぽい女の子1名と20代っぽい男2名。
年齢的に自分が何となく仕切ったほうがいいのかな......という気持ちになって、気負ってそれぞれ3つ程度書いてある皆さんの企画を見せてもらいながら、訳知り顔で「なるほどねえ」みたいなことを言う。

さらに三島氏は、「5分くらいで3つ。話し合ってブラッシュアップしてください」と言ってきた。
しかし、メンバーの人に「これはどういう企画?」なんて聞いていくうちに時間がどんどん過ぎていき、
なんとかまとめなくては......とまたしても追いつめられた気持ちになり、自分以外の3人の案のベストを1つずつ採用。
結局、自分が書いた企画については一言も説明せず。

第1回寺子屋ミシマ社(前編) 画像 250ピクセル

その後、それぞれのチームの案を皆さんが発表。
全部で30案くらいの企画がホワイトボードに書きだされ、そこから多数決で、ベスト2が選ばれた。
自チームの企画にもちょこちょこ票が入ったりして、何かうれしかった

それにしても、ふだん仕事でもなかなか企画が出てこないのに、運営しだいでこんなにいろいろ結構ちゃんとしたアイデアが出てきたぞ、こういうのを問題解決とかマネージメントというのかな? と思う。

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こうして、開始早々参加者が「あ、こういう会なんだ?」という、とまどいの表情を見せながらもプログラムはずんずん進みました。
そうして今回のメンバーで企画として決まったのが以下2点。
『アカルイリカツ』(「明るい離婚活動)を指す)
企画意図
→婚活ブームはもう古い! 時代は今、前向きな明るい気持ちで行う離婚活動(略してリカツ)
を必要としているはず。
著者
→数々の夫婦を離婚させてきたという離婚のプロの方。

『生き残らないための哲学』
企画意図
→勝とうとするのは時代遅れ。 むしろ滅びの美学を究めようじゃないか。という視点から。
著者
→消えた芸人さんたち。

やたら現実的で実現可能な企画決定に、ミシマ社サイドも驚きました。
そして休憩を挟み、次は営業の時間へと進みます。

3.「直接繋がる」ということ

さて、次は営業の時間。
あえて編集の大越がミシマ社の営業として大切なことを話します。

「ミシマ社の営業で他社と大きく違うのは『書店と直接繋がっている』ということです。
ミシマ社の流通形態は直販という取次を通さない特殊なシステム。
書店員さんと顔と顔で繋がることが、読者に本を届ける機会を増やすことに繋がっているのです。」

では、書店員さんにどんな風にこの本の良さを届けたら良いのか。
引き続きMさんのレポートから営業時間の様子をお届けします。

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この次は、さっきのような小さなチームをまた別の人と組み直して、「ある本を売ると決まったとき、どういう仕掛け(イベントとか)をするか」を発表するということになった。

これは4人チームになったのだが、ぽんぽん意見が飛び交う中、私は「それはいいね」「ちょっとこう変えてみればいいんじゃない?」みたいな「おまえは評論家か」的な態度でしのぐ。

その次のプログラムは「書店さんに営業するとき、具体的にどんなトークを展開するか」をシミュレーションするというものだったが、これまた(自分が)ひどかった。
2人で組んで、営業と書店さんの役を交替でやるのだが、書店さんは忙しいので簡潔に説明しなくてはならないということで、制限時間は30秒。

どういうわけか私は、これはできそうだなと思い、「じゃあ、私がさきに営業の役をやりますよ」と、
見本をお見せしようといわんばかりの生意気な態度を取ったあげく、例によって「あのですね、えーと、あのですね、えーと、ふがふが」みたいな感じで、しかも制限時間が短いということで、それをすごく早口でやっているというわけのわからない感じになってしまった。

しかしまだ、さらに、もっときついプログラムが待っていた。
みんなで決めた2冊の本の「書店様向けの注文書(ビラ)をつくる」という作業だ。
ともかく短い時間で形にしなくてはいけない。具体的に手を動かしていかないといけない。
しかし自分が触ると明らかに変になるし、手を動かさないのであれば、せめてキャッチコピーなどのアイデアを出さなくてはいけない。

第1回寺子屋ミシマ社(前編) 画像 250ピクセル

制限時間内で焦っていることもあり、とくにアイデアも浮かばない。
するとどうなるかというと、チームは3人くらいしかいないにもかかわらず、そのうち1人(私)が、黙ってぼーっとしているという状態になる!

かつて私は大学を卒業して就職活動をしていたとき、とある企業の1次試験で「10人でディスカッションせよ」というものを経験したことがあるのだが、結局、1度も発言せずに落ちた──そのときの心情をぼんやりと思い出した

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第1回寺子屋ミシマ社(前編) 画像 250ピクセル

何度も語られているように、ワークショップでは、すべてがものすごいスピードで進んでゆく。
日々ひとつひとつの作業に2時間以上かけていることもたった3分で考え
30秒にまとめてもらう、という作業は参加者にかなりの集中力を要求していたはずです。
ですがみなさん、素晴らしいチームワークで秀逸なコピーの注文書を作成してくれました。!

その後、参加者の学生さんによる素晴らしい営業シュミレーションの後、ミシマ社営業チーム渡辺と窪田による書店営業シュミレーションが行われ、

「これでいいんだ?」

第1回寺子屋ミシマ社(前編) 画像 250ピクセル

という参加者の戸惑いの空気を感じつつ、
次週、寺子屋レポートはいよいよ「仕掛け屋」の時間。
お楽しみに!

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