ミシマ社通信オンライン

第8回 東京仕事百貨×ミシマ社採用プロジェクト

2009.12.21更新

「場をつくる仕事がしたい」。

その想いから東京仕事百貨というプロジェクトをたちあげた中村健太さん。彼は、学生時代の就職活動などである疑問を感じていたそうです。

「条件、資格といった<記号>で会社を選んでいいのか。仕事ってそんなもんじゃないはず。
結婚と同じくらい、人生を左右する大切なもの。そこにいる「人」を知らないで、カタログ販売みたいに、選んだり決めるのはおかしい」
その思いから、自ら取材に出向き、「会社のありのままの姿」を伝えるサイトをつくることを決意。いま、東京仕事百貨を通じて、相思相愛の就職が生まれているといいます。

今回、縁あって、中村さんたちが、ミシマ社の「営業事務募集」を手伝ってくださることになりました。それに際し、ミシマ社メンバーと座談会を行うことになったのですが、ミシマガでは、東京仕事百貨とは別に記事をつくってみました。

同じ時間、同じ空間から生まれた二つの記事。
ぜひ、読み比べてみてくださいね。
もしかすると、おもしろい発見が潜んでいるかもしれません。

全員ライター、全員営業、全員経営です

中村今日は、よろしくお願いします。少し東京仕事百貨について説明させていただきますと、東京仕事百貨は「生き方を探す人の仕事探し」ということをコンセプトにしていて、給与とか勤務地では量れない仕事を集めています。私たちの取材記事を読んでもらい、その場にいるような追体験をしてもらってから仕事を選んでもらおうというものです。

今までに紹介してきた仕事では、「特命係長」を本当に募集したり、「地球を考える(Think the Earth Project)」ことを推進している企業や、「島宿のススメ」といって、7部屋しかない小豆島の旅館の仕事、まち全体を旅館に見立てて「まちぐるみ旅館」というものをやっているプロジェクトの女将さんの募集などがあります。

給与や勤務地などの条件面では埋もれてしまうような仕事を掲載していますが、必ずこのような仕事を探している人はいらっしゃいまして、とにかくいろいろな仕事を紹介したいと思っています。
それで、今回、ちょうど営業事務を募集していらっしゃるということで、おうかがいさせていただきました。よろしくお願いいたします。

大越こちらこそ、よろしくお願いします。

中村サイトもアクセス数が増えて来て、いまは月20万アクセスくらいになりました。

大越それはすごいですね。やっぱりそれだけそういう仕事を探している人が増えているということなんですか?

中村おそらく、出会えてないだけで、基本的には皆さんやりがいのある仕事を探していらっしゃるんだと思います。

大越確かにそうですよね。

中村今回は営業事務の募集ですけれど、これは、プロジェクトと人を結びつけるものですので、今回の採用に限らず、「こういう人が募集できるのではないか」ということもお話しできればと思っています。それと、ミシマ社さんが考える「働くとは」「採用とは」という話も絡めてお話しできたらと思います。

三島簡単にミシマ社の働き方を説明しますと、うちの場合、基本は全員全チームに所属するというスタンスをとっています。いわゆる部署という考え方をとっていないんですね。セクショナリズムというのは、一番無意味だと思っていて、「これは営業の仕事だから、これは編集の仕事だから」とか、自分たちの部署の利害を求めるために内部で対立したりということは、読者にとってまったく意味のないことだと思っています。
出版社は読者にいい本をつくって、その本がいかに届くかというところが重要なわけで、そこにすべて意識を向けていかないといけない。そうすると、内部対立というものは、お客さんにとってはマイナス以外のなにものでもない。

だから、編集の大越も営業とか仕掛け屋チームに所属していますし、営業の渡辺も編集チームに所属しています。メインの仕事をやりつつ、全員の仕事を把握しているというのが基本です。

中村なるほど。

三島それで、今回のことで言いますと、営業事務ということをメインにやってもらう人を募集しています。ただ、ミシマ社の仕事をやっていただくことになるので、そこの意識は一緒で、全チームに所属するという意識でいてもらうことになります。
なので、編集の仕事はまったく関係ないと閉じた感じではなく、開いてる感じの人がいいと思っています。そこはポイントかなと思います。

中村なるほど。みなさんオールラウンドプレーヤーなわけですね。

三島そうですね。そのために、あえて小さな単位をとっています。大きくしていこうとすると、どんどん細分化していきますよね。スケールメリットというのももちろんあるのですが、いまの出版はスケールメリットよりもデメリットのほうが目立ちがちです。
少なくともミシマ社ではしばらくはこの単位くらいでやっていき、この単位内でのメリットを最大化していきたいと思っています。

中村確かに、うちの仕事もそうですね。全員ライター、全員営業、全員経営です。まだふたりしかいませんが(笑)。
大きな組織というのは、いままではそれでよかったかもしれないけれど、それが形骸化してしまっているところはありますよね。維持することが目的になっている。

大越そうですね。

中村そもそも、少数精鋭の方が、やりたいことはやりやすいですよね。

三島少ない方が、体温のこもったものになりますね。
根幹として、「原点回帰の出版社」という言葉に込めた思いというのは、一冊の本に思いを込めてつくって、それを最後まで熱量を失わないで届けるということなんですね。書店さんまでその体温を一緒につなげていきたい。そのために、直販というやり方をとっています。
やっぱり、本も単純な大量生産の工業製品とは違うと思うので、その体温が読者まで伝わるようにしたいと思っています。それをやっていくためにも、営業事務というのは今後ポイントなんですね。

中村著者の熱い想いをできるだけそのまま読者に伝えたい。

三島そうですね。

「人が商品」という人材サービス会社には違和感を感じます

中村東京仕事百貨も、応募者には、ニートから東大卒、元ヤンキー、それに主婦など、本当にいろいろな人が来られるんですね。そこで、採用した方に、少し時間をおいてインタビューさせていただいています。そうすると、けっこう評判がいいんですね。「ぶれないし、非常に世界が広がってよかった」とおっしゃってくれます。すごく意識の高い人たちが来てくれていると。
そういう話をうかがうと、僕らも発見じゃないですけど、非常に嬉しくなりますね。実はそういうことが起こっているんだと。人材サービスとは違った、一人一人と繋がっている感覚は人を元気にさせるなと。

三島いいですね。人材サービスの会社って、人が商品になってしまっていますもんね。

中村確かに。自分は人材サービス会社に関して、何か違和感を感じるんですね。「なんなんだろうこれは?」と。

三島はい。

中村その違和感って何なのかな? と突き詰めていくと、まず会社の人事部からの一方的な情報であるということ。それと、お金をかけた会社ほど露出が増える。そのお金をかける会社が自分の欲している会社とは限らない。ということです。

大越なるほど。

中村そうであったとしても、結果としていい情報なら別に問題はないんですが、その人事部の人が嘘をついているかもしれない。もしくは、お金をかけている会社ほどブラックな企業かもしれない。という不信感が生まれ得る構造になっている。たとえ、情報の質に問題なかったとしても、必ずその不信が前提になってしまう構造になってると思うんですよ。
なので、やっぱり就職活動になったときの暗い感じには、違和感をもってしまうんですね。「登録してみたけど、いっぱいメールがくる。これは何だ?」みたいな。

三島「これを信じていいのか?」と思いながらやるって不健全ですよね。

中村いわゆるダブルバインドというか、その就職情報が発している情報と、裏で考えていることが一致してないんじゃないかと思ってしまうと全然うまくいかないと思うんですね。

大越そうなんですよね。しかも、情報の深読みができる人ほどそういう齟齬に気づくと思うんですよ。むしろそういうことをあまり気にせずに「給料いいから」という感じの人ほど、就職活動では成功しがちであるところがありますよね。

中村そうなんですよ。とある大学の教授が「最近、優秀な卒業生ほど急に辞める」とおっしゃってたんですね。で、その先生は毎回、そういった生徒には「社会はそんなに甘くない」と説教しようと思うそうなんですが、話を聞いていくにつれて「それは辞めるよな」と納得してしまうんですって。

三島企業の側も、実体を最初にちゃんと出す方がいいですよね。就職用のパンフレットと実体がえらく解離してるからそういうことが起こるんだと思います。

大越 そうですよね。先日、そういった問題を考えている方に話を伺ったのですが、ブラック企業の見分け方ってあるんですね。「社員の目が死んでいる」とか、「説明会のときにスピリチュアル系の音楽を流しているところは危険」とか(笑)。

三島なるほど。洗脳するところなのか。マインドコントロールするんだ。

中村それ興味深いですね。そもそも本音というか、会社や仕事をそのまま伝えて募集すればいいんですよね。
それは東京仕事百貨のコンセプトでもあって、大変なことも同時に伝えるようにしています。ミシマ社さんの仕事にも大変なところってあると思うんですけど、それってけっこうやりがいと紙一重ですよね。

三島確かにそうですね。

毎日がエマージェンシーでいたい

中村例えば、この仕事はここが大変だなぁというところはありますか? 

私は一年前にミシマ社に入ったんですけど、はじめは、全員全チーム所属のもと、編集も経理も営業も全部やってみたいと思ってたんですね。でも、そうしたら、今度は自分がやりたいという気持ちが焦り過ぎて、全部中途半端になってしまっている・・・。なので、気持ちばかりが急いていて、実際にひとつひとつ着実にこなすというすごく基本的なことを、いま大切にしているところですかね・・・。

中村なるほど。

大越会社ってやっぱり、歴史のある会社とか、老舗の会社とかはものすごく仕組みができてるんですよね。でも、我々は設立3年なので、そういうバックボーンがまだない。なので、仕組みをゼロからつくっていかなければならない、というところが全員に共通する大変さかなと思います。

三島本当にそうですね。そこに尽きるかなと思っています。

中村僕も自分で会社をやっているので、わかります(笑)。全部やるのは大変ですよね。けど、楽しいですよね。そう。だから、やりがいと紙一重なんですよね。実体としては、帰れないとか原稿書けない、とか日々大変なんですけど。

渡辺あと、毎日、エマージェンシーな感じですかね。

中村なるほどね(笑)

三島大越が言ったように、仕組みを日々つくっている最中なので、飛行機で言うとテイクオフして昇っている最中で、シートベルト解除のサインがまだ出てない状態ですかね。なので、安定飛行の段階にはいった会社で優秀な仕事をすることと、安定区域に行くまでのいい仕事は、やっぱりまた別な側面がありますね。

中村はい。

三島フライトアテンドさんも、安定飛行のときにジュースを配るのは簡単だけど、上昇している最中に赤ちゃんが泣きはじめたり、緊急事態に陥ったときに求められる動きって、違いますからね。そして、うちはずっとこの角度(エマージェンシー角度)でいる、という状態にしたい。

渡辺でも、最終的には全員チームということで相談し合うので、エマージェンシーと全員チームは、何かすごく互換関係があるような気がします。ひとりでエマージェンシーはきついですからね。間違いなく飲みにいっちゃいますから(笑)。

中村そうですよね(笑)。

大越ただ、頼りあうというよりは、かけ算になる関係がいいですよね。

中村そうですね。東京仕事百貨もある意味、予想以上の人がくることがけっこうあるんですね。例えば、今まで中古マンションのリノベーションしかやってない会社に、仕事百貨で人が入ることで、新築の話から海外のリゾートの話までくることもある。その人がくることによって、業務が拡大していくといいますか。そんなときは、かけ算が起きてるのかなと思いますね。

大越おもしろいですね。

中村でも、いまの人材サービスは、キャリアアップとかスキルみたいな、記号化した情報のやり取りで本質がすごく失われているような気がしますね。

大越キャリアアップって、転職することを前提にしてますからね。最初から辞めることを前提に次の会社にはいっている。

中村確かにそうですね。真剣勝負をやっていくぐらいのことじゃないと、やっぱりおもしろくないと思うんですけどね。

三島そうですよね。まずはひとつに真剣勝負するからこそ、見えてくることがありますし、おもしろくなっていくものでもありますもんね。

中村だから、東京仕事百貨は新卒向けではないかもしれません。新卒の人っていうのは、やっぱりあこがれベースの仕事選びしかできないですからね。一回仕事をやってみて、どんな仕事にも共通の大変さがある、それでもやりたいものがある、というフェーズにいる人にとって東京仕事百貨は面白いものかもしれません。

営業事務は「超攻撃的な仕事」です

中村次に採用になった方は、渡辺さんの下につくかたちになるんですか。

渡辺そこはフラットですね。営業と営業事務に上下関係はありません。ただ、その方にやっていただく仕事というのは、いままでは自分ともう一人窪田というものがやっていたことなので、このふたりと基本的に一緒につくって行くようになると思います。
ただ、「この仕事は事務だからあなたがやってね」ということではなくて、その方にしかできないことをやっていただいて、われわれ渡辺と窪田でないとできないことをやって、お互いが全力をつくしていくという感じで考えています。

中村なるほど。

三島むしろ、その人の裁量次第ですが、中にいてどんどん外に行く営業のふたりを動かして行けるような仕事もできると思います。内部的な仕事をしながら見えてきたことで、「こうやったらいいんじゃないか」とかね。

渡辺「この店いったら注文とれるんじゃないですか?」くらいなところを言ってくれたらすごくいいですね。

三島事務業務のなかで見えてきたことで、「多分ここ売上げ落ちてきてるので、つながりが弱くなってるんじゃないですか?」という提案をしたりとか、その人の気持ち、スタンス、向きあい方次第で、事務職であっても「超攻撃的な仕事」にもなりうる。そういう可能性を秘めた人が一番ありがたいなと思います。というか、そういう方とやりたいなと思います。

中村なるほど。

三島そこがかけ算ですよね。単純に任された仕事を事務的にこなすところから、そこからさらにどうしたら営業チームも盛り上がるんだろうという視点まで自分の業務の中でつくり出せる人がすごくいいですね。

中村ふんふんふん。そうですよね。なるほど。わかりました。今日は長い時間ありがとうございました。

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