ミシマ社通信オンライン

第18回 2010年6月 今月の一冊vol.2(前編)

2010.06.29更新

オオサコ140Bのオオサコでございます。

三島今日は大阪を代表して140Bの大迫力さんに来ていただきました。
「140B×ミシマ社」による今月の一冊です。

オオサコ参議院選挙じゃないんですから。そんな大した者ではありません。僕からですか?

三島いつもジャンケンでやるんですよ。じゃんけんほい。

オオサコあ、負けた順からなんですね。

大きな組織にいたとき読んだらぴんとこなかったかもしれない

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『小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則』(ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤーハンソン著、黒沢健二訳、松永肇一訳、美谷広海訳、祐介ヤング訳、ハヤカワ新書juice)

渡辺はい。今日は、ハヤカワ新書juiceから『小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則』(ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤーハンソン著、黒沢健二訳、松永肇一訳、美谷広海訳、祐介ヤング訳)をご紹介します。洋物ビジネス書でございます。

窪田洋物って(笑)。

渡辺この本は「37シグナルズ」という会社の創業者とカリスマ開発者のふたりが、"ビジネスを立ち上げて、経営して、拡大する(あるいは拡大しない)ことについて、言いたいことがある"ということで綴られた一冊のようでございます。

その会社は、1999年にウェブデザインのコンサル会社として、たった3人だけでスタートしたのですが、2004年に、それまで業界でつかわれていたプロジェクト管理ソフトに不満を感じて、自分たち用に「ベースキャンプ」なるソフトを開発したと。それを周りの人たちに見せたらとても好評だったので、売り始めてみたところ、5年後、ベースキャンプはなんと年間数百万ドルの利益をあげるようになった・・・と。他にもいろいろオンラインツールなどを開発して売っているようなんですけど、2つの大陸にまたがる十数人のメンバーで数百万人のクライアントを抱えているという、なんとも「ウェブ2.0」的な会社です。

窪田なにやら、めっちゃ小商いな会社なようですけど、やってることはデカイですやん。そうか! それでこの書名なんですね・・・って、そのまんまですやん(笑)。

渡辺まあそうなんですけどね。で、ミシマ社も「小さなチームで大きな仕事ができたらいいな」というところでやっているので、手にとってみたのですが・・・、1時間ちょっとで読み終えてしまった。おもしろくて。すごく納得するところが多い。なんといいますか、理論的というよりも実践的なんですね。いろいろなことが網羅されているんですが、非常にシンプルな語り口なのでとても軽く読めます。軽く読めるというのがまたいいんです。

でも、たぶん、僕が前の会社にいたときに読んでもぴんとこなかった気がします。何年間かこういった小さなチームで実際にやってきたから、うなずけることも多かった気がしました。

それと大好きなトム・ピーターズ師匠が帯に「本書の明解さに涙がこぼれそうだ。くそっ、すごいぜ!」というコメントを寄せてまして、そこも惹かれたポイントです。

木村ははは。

三島むりやりな日本語ですね(笑)。

オオサコそんなこと言うてへんのでしょ。ひょっとして(笑)。

三島たぶん「Fu〇king cool !」とかそんな感じだったんじゃないですかね。

創業記みたいな感じなんですかね。

渡辺創業記的な本というよりも、「創業期」に何かを始めるときってワクワクした感情と共にあると思うんですけど、そういったときのことを思い出させてくれる感じの本ですかね。「プロモーション」という章があって、最初のトピックに「無名であることを受け入れる」というのがあるんですね。「今、あなたが誰なのかを知る人はいない。それでいい。無名であるのは、素晴らしいことだ。日陰にいることを幸せに思おう。」と書いてある。これはまた、大きな会社にいるときに無名であると思うことと少し違うと思う。

オオサコそれなら、会社だけじゃなしに、いろんな組織にあてはめられる話ですかね。

渡辺う〜ん。あ〜、でも、やっぱり起業の話なのかもしれないですね。さっきの窪田くんじゃないですけど、「小商い」のススメ、みたいな感じというか。

三島140Bもまさに「小さなチーム」ですもんね。

オオサコ実際小さなチームにも、良い面と悪い面ありますよね。でも、さっきおっしゃった、「大きな会社にいたらぴんとこなかった」っていうところに気づけるのがええのかもしれないですね。

渡辺非常にいいと思います。お薦めです。ということで、では次、星野さんで。

自分が暮らしたいかたちって何かな? と考えました

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『「新しい郊外」の家』(馬場正尊、太田出版)

星野私は『「新しい郊外」の家』(馬場正尊、太田出版)という東京R不動産の馬場さんが書かれた本です。いま私は実家暮らしなんですけど、そろそろ家を出なくてはなぁ、と思っているんですね。すぐに家を建てられるわけじゃないんですけど、「どこに住もうかな」と思ったとき、どこに住むかってすごく大きなことだなと思って、かなり決めるのが難しい。というか、結局どこに住むかによって自分が何を求めているのかが出てくるのかな、ということを感じています。

馬場さんは、学生結婚されて子どもが生まれ、20代の後半に大きめのワンルームに引っ越したそうなんですね。そしたらプライベートな場所がなくなってしまい、うまくいかなくなって離婚されてしまったと。でもおもしろいことに、また同じ奥さんとの間にお子さんができて再婚されました。で、今度はその失敗を繰り返さないようにと、千葉の房総に広い土地を買って、家を建てられるんです。家全体の壁面の80パーセントはガラス窓で、逆に馬場さんの部屋は天窓以外に窓がない、というような不思議な一軒家なのですが、家族の形から家の形を考えた、というところが面白いなと思いました。

それと、東京と房総の二重生活を前提にして房総に住み始めた方たちとの交流や新しい働き方の話を読んで行くと「ああ、そういう暮らしもあるんだな」と思いました。馬場さんが設計された自宅やオフィスの図面やカラー写真も載っていておもしろかったです。

三島いいですねぇ。

星野自分はそれこそ「離島に住みたい」とか思ったりもするんですけど「自分が暮らしたいかたちって何なのかな?」ということを考えるきっかけになって、おもしろいなと思った一冊でした。

オオサコ『東京R不動産』という本は全国にありますよね。住むつもりじゃなく読んでも楽しいですよね。「こういうところでも住めんねや」っていうところが見えるだけでも開放的になりますし。細かいことに文句を言わないというか、ほんまに寝転んだらギリギリの家とか載ってるじゃないですか。でも「これでええやん」みたいなね。それが良いですね。なかなか渋いところ持ってますしね。

窪田確かに。

オオサコ東京R不動産が扱ってるような、古いけれども好きな人にとっては味のある物件ってオーナーさんのほうがもう価値がないと思って情報誌やネットに出さない場合が多いんですって。だから市場に出回らないものがあるみたいですね。

三島それを発掘していったのがえらいですよね。最初、自分たちで歩いて見つけたって言ってましたからね。価値がないと思っていたものを価値のあるものに変えていくというのはいいですね。

オオサコ貸す側にも借りる側も「ええな」と思える文化をつくる。そこからの作業が必要だっていうことでしょうね。

星野はい。
では、次は木村さんで。

伝説の本屋さん

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『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』(ジェレミー・マーサー著、市川恵理訳、河出書房新書)

木村私は河出書房新書の『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』(ジェレミー・マーサー著、市川恵理訳)という本です。

これは本屋さんで、タイトルと表紙と帯の感じですぐ買いました。
どういう本かというと、あの有名なジェームス・ジョイスの『ユリシーズ』という本、実は当時、内容がスキャンダラスだということで次々と出版社から出版を拒否されていたようです。そのなか、このシェイクスピア&カンパニー書店のオーナー、ビーチさんが「ぼくがお金を出すよ」といって『ユリシーズ』が生まれたというエピソードがあった。そこはいろいろな作家さんが集まる本屋だったそうです。

「『当時パリの街には才能ある人がひしめいていたが、そのほとんどが私の店に集まってくるような気がした』とビーチは後に書いている」と書いてあるんですけど、この元祖シェイクスピア&カンパニー書店は、ナチスによる占領の際に一度店を閉じてるんですね。でも、この店にすごく憧れていたアメリカ人のかわったおじさん、ジョージ・ホイットマンという人が同じような本屋さん「シェイクスピア&カンパニー書店」の名をうたい、パリのセーヌ川の左岸につくりました。

この書店には今も、放浪の物書きたちが集まっては書店を手伝いながら泊まったり生活をできるようになっているそうで、著者のジェイミー・マーサーという人も一時期そこに泊っていたそうです。彼は、カナダの新聞記者だったんですけど、ある気まずい事件を起こしてしまって、勤めていた新聞記者を追われて逃げるようにして出てきたんですけど、ふらっと立寄ったところがこの本屋だった。

お金も少なく雨も降って参っているところへ、かわいいおねえさんに「お茶していかない? みんな上でお茶してるわよ」と言われて、そこから住みはじめることになります。これは彼が住んでいる間に起こった出来事や物語や事件を綴った本なんです。

窪田すごいな。

木村入れ替わり立ち替わり何千人もの人がこの本屋さんに住んで、そのなかにはアレン・ギンズバーグだったりウィリアム・バローズだったりビート系の作家もいれば、ヘンリー・ミラー、アナイス・ニンだったり、ただのならず者という人もいた。

窪田ほぉ〜。

木村また、書店内には素敵な張り紙があって「見知らぬ人に冷たくするな。変装した天使かもしれないから」とかっていうことが書いてあったりするんですね。

オオサコへー。

木村集まる人たちはみんな、他人に話せないような過去を抱えている。そういった人たちの心のよりどころになるところなんですけど、「もうそろそろ出ていく頃じゃない。出ないと働けなくなっちゃうよ」という雰囲気もちゃんとある。でも、ひとりだけすごく長い間住んでしまっているおじいちゃんがいるんですけど彼はその後・・・ここでは語りません。感動的なドラマが待ち受けていますので、どうぞお楽しみに! 装幀もとても綺麗で、カバーをむいてもかなりかわいらしい。

三島分厚いのに軽い!

木村そうなんですよ。重いと思いきや。実際に今も続く現実の中のドラマであり物語なのですけれど、久しぶりに現実逃避するくらい没頭した一冊でした。
じゃぁ、次は大越さん。

「『夢を紙に書けば全部叶う』というのはお前本当なのか?」

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『ビジネス書大バカ事典』(勢古浩爾、三五館)

大越はい。私は『ビジネス書大バカ事典』(勢古浩爾、三五館)です。名前を出すといろいろ差しさわりがあるのでイニシャルにしますが(笑)、T先生、K先生、I先生、HK先生といったビジネス書界の大御所の方々の本を徹底的に読み込んで、「もどき作家」と断定し、めちゃくちゃにぶった切るという、大変痛快な本です。私もビジネス書の編集をやっておりますが、全文うなずきながら読みました。

へー。

大越勢古先生は、松下幸之助とかヤマト運輸をつくった小倉昌男さんのように、ちゃんと実業を育て上げた経営者の一代記のような本は読むところがすごくあるし、教えられることも多いとちゃんと書いています。

しかしその一方で、実業ではたいしたことをぜんぜんやってない「自称コンサル」とか「自称マーケター」みたいな人が、「こうすれば成功するよ、金持ちになれるよ」的なことをいい加減に書き散らしてるのが、我慢ならないんですね。「わたしはビジネス書「もどき」の鍵概念である「成功」というフレーム(枠)自体をまったく認めていない」といった痺れるフレーズが満載で、その通りです勢古先生! と喝采を叫びたくなる。

ビジネス書バブルのようなものが崩壊したのはいいことですよね。しばらく前にアメリカで、『金持ち父さん、貧乏父さん』の著者の経歴が検証されて、実際にはぜんぜん投資で稼いだことなんてない、ただ本とボードゲームを売って儲けただけの人であることが明らかになりましたが、日本のビジネス書業界もトンデモ本を沢山売ってきましたからね。『働かないで年収5160万円稼ぐ』とか、そんな方法が本当にあったら誰も出版なんてやらないって(笑)。また、瀬古先生の語り口が小気味よくていいんですね。

オオサコ「文学賞メッタ斬り!」のビジネス書版みたいな感じですか。

大越そうそう。「『夢を紙に書けば全部叶う』というのはお前本当なのか?」とかね、すごく怒ってるんですよね。これ本当に笑えます。お薦めです。

渡辺「新書3冊分」っていう帯もいいですね(笑)

窪田ははは。この書き方がね(笑)

大越というわけで、では、次、窪田先生。

もう話し出したらキリがないですね。これは絶対読んでほしいです

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『三沢光晴外伝 完結編』(長谷川博一、主婦の友社)

窪田はい。今日はみんなに絶対に読んでほしいと思っている一冊、『三沢光晴外伝 完結編』(長谷川博一、主婦の友社)です。先日、有隣堂 横浜駅西口店さんで『ドンマイ ドンマイッ!』のパネル展をやっていただいたんですけど、その時に一緒に並べてありました。帯にある、「倒れたまま動かないでいる社長の姿は変だった。そして、三沢光晴の最後の声が発せられた。『止めろ・・・』これが最後の三沢の肉声だった」というコピーを読んで、これは読まないかんやろ! と思って即買いしました。めちゃめちゃ面白かったです。

表紙を開くと、三沢さんの言葉が書かれています。日テレでノアの放送が終了して、付き人の鼓太郎に「うちの会社大丈夫ですか?」って聞かれたときに言った言葉です。
「大丈夫だよ。今まで俺がそう言って大丈夫じゃなかったことがあるか? プロレスはもう一度ゴールデンタイムで放送される時代が来る。俺が保証するよ」。いや~、もう本当に格好いい!

ちなみにどんな本かと言いますと、1999年、三沢さんがまだ全日本プロレスにいたころに出版された『チャンピオン 三沢光晴外伝』という本の文庫版です。文庫化にあたって、亡くなってからの話と亡くなったときの話を最後の章としてつけ加えてあるんです。この最後の章を読めただけでも750円の価値はあるなと思いました。

三島これすごいおもしろいし感動するよね。小橋選手がバーニングハンマーをいかにして開発したかという話があるんですね。

窪田そうそう。そこそこ!

三島この技は、三沢さんをいかにすればマットに沈められるかということで生み出された技なんですね。どういう技かというと、相手の背中を自分の首にのせてぐーっと折り曲げる。カナディアンバックブリーカーっていう技があるんですが、その状態から真下に頭から落とす。ここで三沢さんはこんなふうに回想しています。「まさか落としはしないだろうと思ったけど、やっぱり落としにきたね」って(笑)。

大越ははは。

三島でも、そのときに三沢さんはどうしたかというと、脳天から落ちるから、マットに落ちる直前まで目をあけていて、打つ瞬間に首を横に曲げて受け身をとってるんですよ。写真も残ってます。あれができるヘビー級レスラーは世界中さがしても三沢さんしかいないそうです。

こないだ小橋さんに会ったんですけど、控え室で話したとき小橋さんは「三沢さんは絶対に起き上がってきたんですよ。バーニングハンマーでも立ち上がったんですよ」って語ってくれて、その意味というのは、これを読んで本当によくわかりました。絶対に起きあがれないはずの技を一瞬微妙に首をずらして受け身をとっていたというね。

窪田すごいですよね。試合の後、大相撲関係の整骨医が来て、急きょ首のけん引をやったそうなんですけど。「肩に食い込んだ首はささいなことではひっぱれず、いつも力士の世話をしている人の腕力がないとけん引のしようがなかった」って、どんな状態なんだ!? って感じですよね。

オオサコこわ。

三島これは本当に熱いです。97、98年の年間最高試合というのは記者で投票されるんですけど、2年連続、小橋vs三沢なんですよ。2年連続選ばれたのはもう後にも先にもこのふたりだけだし、97年の投票のときに「もうこれ以上高い内容を望むのは不可能」という評価だったのに、98年に「さらにその上をいく、予測不可能のすさまじい試合」ということでふたりがとるんです。

大越へー。

三島試合後、小橋さんが負けて三沢さんの控え室に挨拶に行って話したことが「オレたちこのままやってたら絶対死ぬよな」ってお互いに語っていたそうです。

窪田そんなことを、ノアを立ち上げる前にやっていて、すでに身体はボロボロだったっていうのがすごいですよね。とっくにレットゾーンは越えていて、その後もずっとそれをやり続けるっていうのが。

オオサコだんだん生半可な気持ちで読んだらあかんなっていう気持ちになってきましたね。

三島ぼくが一番ぐっと来たのは、プロレスが世間でからかいの対象になったとき三沢さんがいつも言っていたのは、「一度、ウチの試合を見にきてください」って。それが言えるって本当に格好いいなと思います。

窪田練習量も半端じゃない。夜、練習が終わって一回家に帰ったのに、体がおちつかないからまた着替えて出ていっちゃう。奥さんは「また走るの?」って。

いや~、話し出したらキリがないですね。これは絶対読んでほしいです。三沢さんの一番弟子とも言われている丸藤さんと二番弟子の鼓太郎さんに聞いた話も入っています。このふたりが素晴らしいレスラーなんですよ。怪我をしないで、長く続けてほしいなと思います。
じゃあ、次は林さんで。


明日、「2010年6月 今月の一冊vol.2(後編)」をお届けします。

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