ミシマ社通信オンライン

2010年11月、生まれたばかりの香川県唯一の出版社ROOTS BOOKSに、ミシマ社メンバーがおじゃましました!
東京近郊でしか行ったことのない、ミシマ社が体感できる「寺子屋ミシマ社」を、今回はじめて高松でやらせていただくことになったのです。
果たしてどのような一日になったのか・・・?
ROOTS BOOKS・三村さんのレポートです。

第23回 ミシマ社寺子屋 in 高松レポート

2010.12.20更新

2010年11月20日土曜日、「ROOTS BOOKS presents 本の学校 vol.1 ミシマ社寺子屋」が四国・高松で行われました。ミシマ社さんにとって、東京以外で行う寺子屋ははじめてということ。もともと地方でも寺子屋を開催したかったというミシマ社さん。今年の5月に出版社をたちあげたばかりのROOTS BOOKSの想いがつながり、今回の寺子屋が実現しました。

参加者は定員20名に対して30名近く集まって下さり、会場は熱気でムンムン。香川県内や四国はもちろん、東は横浜、西は福岡からと、3分の1くらいは県外から。編集者や書店さん、出版社の方や絵描きさん、本づくりに興味のある方々・・・とバラエティ豊かな顔ぶれ。なかには『ボクは坊さん。』の著者、白川密成さんもお隣の愛媛県からかけつけてくださいました。

【10:00〜編集の時間(その1)】

高松寺子屋 本の学校レポート

まずは三島さんのお話から寺子屋スタート。

各自が持参した「自分の好きな本」をテーマに、どうしてその本が好きなのか、気にいっているポイントは? など、自己紹介代わりにグループで話し合いました。「好きな本のことなら、いくらでも話せるでしょう」と三島さん。たしかに本の話から、その人のことが少しわかる。自己紹介は苦手でも好きな本のことなら、どんどん話せる!

ウォーミングアップができたところで、三島さんが出版社を立ち上げるまでのお話をしてくださいました。
もともと出版社で働かれていた三島さん。そのなかで疑問に思うことが多々ありました。会社にはいろいろな部署があって、本来なら大勢の人たちの手を通る過程で熱量が増幅していくべきなのに、なぜか今のシステムではそれが難しい。だからこそ、ミシマ社では、本が生まれて読者の元へ届くまで、著者の熱量をいかに減らさずに増幅させられるか、というところに力を入れています。

【ちょっと余談①】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
参加者の声より

『大量生産に違和感があって、出版社も同じように思っている人が、
熱量とか思ってる人がいはるんやなって思った』
『本のしくみだけでなく、今の世の中のもやもやしたことがわかってとてもためになりました』
『三島さんのお話は、今自分が社会に対して思っていることを明確なコトバで聞けたような気がして、何度もうなずきながら聞きました』

三島さんの「熱量を増幅させて伝える」っていうキーワード、きっと出版の世界に限ったことではないんですよね。
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続いて、いよいよ本題。
三島さんは参加者にこう投げかけます。

「出版は全身運動。毎日フルマラソンを走っているようなもの。
 今日は一日で、企画から流通まで、出版社がどんなことをしているのか一緒
 に体験してみましょう。
 さて、みなさんはROOT SBOOKS出版の一員です。
 このメンバーでROOTS BOOKS の第1弾の本をつくることになりました。
 本は売れないと、会社はつぶれてしまいます!」

2〜3名のグループにわかれて、「○○さん(著者)が書く○○の本(タイトル)」という具合に企画案を話し合います。

「短時間で集中して、とにかくたくさん出して!」

高松寺子屋 本の学校レポート

出版は全身運動。
息をつく間はありません。

「あと1分です!!!」

そして発表の時間。会場が瀬戸内ということもあり、四国・香川ならではの本の企画がどんどんあがります。有名な著者の本というよりは、身近にいるたまらなくステキな○○さんを紹介したい! という地域密着型が多いみたい。

・珈琲屋の嫁が書く『珈琲屋のマスターの物語』
・小豆島の佃煮屋のおじさんの写真本
・転勤族がすすめる香川のおすすめ
・高松の美容師の男性が書く『ジャキジャキさん』
・豊島でレモンをつくる人『レモン通信』
・石井光太『日本沈没外人』 などなど

発表が終わると、全員で多数決をして出版する本を決定しました。
選ばれたのはジャ〜ン! 『年収100万円で暮らす瀬戸内』。

【12:00〜 お昼休憩】

高松寺子屋 本の学校レポート

そろそろ息も切れてきたころ? いや、まだまだ大丈夫(笑)。

でもこの辺でランチ休憩をはさみます。

ROOTS BOOKSでケータリングを頼んだ人、ランチマップを片手にまちなかをうろうろした人。昼休みは、はじめて出会ったメンバー同士、話に花が咲きました。

【13:00〜 編集の時間(その2)】

お腹もいっぱいになったところで、チームを変更。先ほどの『年収100万円で暮らす瀬戸内』という企画案に対して、どんな内容にするか、具体的に話し合います。
まず本の形状は?
①写真を多く使った大きめのサイズ、ページ数は少なめ。
②写真とテキストをほどよく使った単行本より一回り大きなサイズ。
③ページ数は多いが、カラー写真はあまり使えない単行本サイズ。
内容と照らし合わせながら、今回は「単行本サイズ」をセレクト。

続いて、目次案。
「瀬戸内で年収100万円暮らしをしている人」の
・ お仕事
・ 間取り
・ 一日2739円の実態(食費は畑、山、物物交換など)
・ きっかけ(原因)
・ ポリシー
・ 幸せと思うことって?
・ 写真ギャラリー
・ お金のかからない遊び方、学び方
・ 弟子入りレポート12カ月
などなど。
本の全体像が見えてきたところで、次は営業の時間です。

【14:30〜営業の時間】

高松寺子屋 本の学校レポート

ミシマ社の営業・窪田さん登場。

「営業マンって、一日電車に揺られて、降りて、また乗って・・・、一日中移動しっぱなしのときもあるし、自分は何してるんだろう? と思ったこともありました。そもそも就職活動で、『私、営業やりたいんです!』という人はなかなかいませんよね」。
フムフム。たしかに、営業って大変そう・・・。
「営業って、パスタ屋さんでいうと、ウエイターなんですよ」

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何の話かと思いきや、窪田さんはバイト時代のパスタ屋さんの話を始めました。
「ウェイターは、アツアツのパスタをお客さまに届ける仕事です。モタモタしていたらパスタは冷めてしまう。それにテーブルに運ぶだけじゃなくて、『旬のお野菜を使った今しか食べられないパスタです』と一言添えれば、同じパスタもよりおいしくする届けることができます。」

なるほど、なるほど。

「制作チームが熱く本をつくっているのを横目で見ながら、それを書店さんに届ける。その間に熱を冷ましてはいけない。冷ますどころか、よりおいしくお客さまの元へ届けること。それこそが「営業」の仕事なんです」

さらにこんな話も。
「お客様に届けるだけじゃなくて、じつはお客さまの声を厨房(編集チーム)に届けることも大切なんです。例えば『今日のお客様、結婚記念日だったそうです。○○をとても喜んでくださっていました!』って。厨房とお客様の間をつないで、熱量を増幅させ、編集チームのモチベーションを上げることも営業の役割です」

横で聞いていた三島さんも、「クボタ君、お前エエこと言うなあ」と感心のご様子でした(笑)。

【ちょっと余談②】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
じつはわたくし、本の学校の2日前、窪田さんに弟子入りして高松での営業にちょっぴり同行させていただきました。窪田さんの営業バッグから出てくる営業グッズの数々・・・。作家さんのプロフィールや、それ以前の作品の紹介など、きれいにまとめられたファイルを見ながら、窪田さんが説明を始めると、書店員さんの表情がどんどんイキイキと変わっていくんです。伝えるためには何を見せればいいのか。本の内容を知らない人に興味を持っていただくためには? 窪田さんは、いつもこういうことを考えて書店さん回りをしているのだと思いました。
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寺子屋高崎 本の学校レポート

お話に続いて、書店さんに本を紹介する企画書づくりに挑戦です。「出版社によって、ぜんぜん違うんですよ。どれがいいか、というのはなくて、この本を伝えるためにいい方法をみなさんで考えてください」と窪田さん。

チームごとにA4の紙が配られ、絵を描くチームもあれば、瀬戸内の美しい風景の写真を使い、「この生活100万円?! しかも年収?」とキャッチコピーをつけてみたり。「お金がない。そうだ! 瀬戸内で暮らそう!!」なんてのもあります。

企画書が出てきたところで、窪田さん(営業)と密成さん(書店員)の書店営業コント(?!)が始まりました。もともと書店員をされていた密成さんのリアルな演技と元芸人志望という窪田さんの絶妙な掛け合いに、寺子屋は一気に笑いの渦・・・(笑)。

【15:00〜仕掛け屋の時間】

高松寺子屋 本の学校レポート

林さんのお話。

窪田さんに代わって、今度は仕掛け屋の林さんの登場です。
そもそも「仕掛け屋」って部署がある会社、他にあるのかしら??? もしやミシマ社が世界初? 

「仕掛け屋」とは、ポップづくりや読者カードなど本を読者に届けるまでの仕掛けを考えるところ。編集チームで生まれた本を営業チームが書店さんに届け、書店さんから読者の手に渡り、読者カードが出版社に戻ってくる。この一連の流れをつなげていくのが「仕掛け屋」チーム。ポップによって書店と読者を結び、読者カードによって読者と出版社をつなげます。特にポップづくりは、手書きで一冊につき700個つくることもあるそう。しかも一冊の本に対しても何パターンもポップを制作します。

「『年収100万で暮らす瀬戸内』の本がいよいよ発行され、書店に並んでいく瞬間です。お客さまと本をつなげるポップづくり。どんな材料を使ってもいいので、チームにわかれてつくってみて下さい。」

林さんから投げかけられると、みんな夢中になって、ポップづくり。

高松寺子屋 本の学校レポート

瀬戸内らしい色遣いがきれいなもの、シンプルな言葉で表現しているもの、立体ポップなど様々な形のポップが出てくる、出てくる・・・。

高松寺子屋 本の学校レポート
 
どんな工夫をしたのか、どういうことを伝えたかったのか。全体で発表しあって、仕掛け屋の時間は終わりました。

【ちょっと余談③】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここでひとつご報告。
アンケートに「林さんのようなお仕事をしたいです!」という大学生からの声がありました。将来のことをいろいろ考えているときの運命的な出会いだったようです。
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寺子屋高崎 本の学校レポート

最後に三島さんのまとめのお話。

ROOTS BOOKSの小西さんも出てきて、最後は参加者のみなさんの声を共有することができました。みなさんの一言一言が熱く、心に残る時間になりました。出版は全身運動。

寺子屋ミシマ社が終わってからもお礼や感想を書いたメールをいただいたり、実際に企画が進んでいたり、たった一日だけ時間を共有しただけなのに仲間になれたり。三島さんの熱さの伝染力を感じる日々です。

一冊の本が持つ力。その熱量は、小さいようで、大きいかもしれない。

でもきちんと熱を込めてつくったものは、距離を超え、時間を超え、届くもの。頭だけじゃなくて、手足だけじゃなくて、体まるごと使って出版のこと、本のこと、考え続けたいと思いました。

参加してくださったみなさま、ミシマ社のみなさま、時間を共有できたこと、心より嬉しく思っています。どうもありがとうございました。

(ROOTS BOOKS/三村)

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