ミシマ社通信オンライン

いよいよ明後日6/9(木)、『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』(米倉誠一郎著)が全国で発売となります。ミシマ社刊としては震災後第一弾となるこの書籍、おそらく世界ではじめて「ジャスミン革命」を概念づけ、日本の未来の姿を写し取る、ずっしり充実の一冊となりました。

内容については発売されてからじっくりお読みいただくこととして、今回は、今年から編集・制作業務に足を踏み入れ、いまだ"明日の自分が何をしているかわからない状態"で三島の編集アシスタントを務めた星野が、こぼれ話をレポートします。

第25回 『創発的破壊』編集こぼれ話。

2011.06.07更新

「Title Comes Last」

実はこの書籍、企画段階から含めるとタイトルが2転、3転、・・・5転くらいしています。
その変遷の一部をご紹介いたしますと、

『新しい資本主義』
    ↓
『日本のパラダイム・チェンジ』
    ↓
『ジャパン・ウェイ』
    ↓
『ジャパン・モデル~日本が世界をリードする』
    ↓
『未来を創る!イノベーションJ』

などなど。こうやって見返すと、最終決定したものと、全然違いますね。
様々な段階で新刊ご案内のFAXを送っていたため、書店様によっては同じ書籍とは認識されず複数回ご返信をいただいてしまいました。混乱を生じさせてしまい申し訳ございません。

ミシマ社では必ずタイトル会議をするのですが、今回はこれ! というものがなかなか出ず、最後の方の"イノベーションJ"が出てくる頃には、メンバーのテンションもおかしくなっていました。
それでも著者の米倉先生は慌てず騒がず、「三島君、Title Comes Lastだよ」という名言の通り、いよいよ大詰めになった段階で、最終的な『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』にぴたりとおさまったのでした。

ちなみにこの「創発的破壊」という言葉は、シュムペーターの「創造的破壊」という言葉を文字って新しくつくられた概念なのですが、タイトルも決まって発刊に向けて動き出したある日のこと。

林:「あの、私が知らないだけかもしれないんですけど、"さんぺいた"って有名ですか?」
星野・渡辺:「??」
林:「なんか、落語家みたいな名前だなと思ってたんですけど」
星野・渡辺:「??」
林:「あれ? 『創造的破壊』を言っていた人って・・・」
星野・渡辺:「!!!」
「もしかして、、、シュムペーター??」
林:「えー!! 日本の方じゃないんですか! びっくり!」

こちらの方がびっくりです。さすがミシマ社一の創発的破壊娘の林さん。思い浮かんでいた漢字は"三瓶太"でしょうか・・・。

本づくりのパラダイム・チェンジ

この本のキーワードのひとつに、「パラダイム・チェンジ:ものの考え方や概念枠組みのあり方を大きく変えること」があります。
今回の装丁は、ミシマ社の本を多く手がけていただいている寄藤文平さんにお願いをしたのですが、原稿を持ってご相談にうかがったところ、「本づくりも、パラダイム・チェンジしたいですよね」というご提案がありました。

今回の震災では、製紙工場や印刷所、紙の倉庫でも被害に遭われたところは多く、普通には使えなくなってしまった紙が大量に出ているはず。色々なところから、そういった廃棄されてしまいそうな紙を集めて、本をつくることができないだろうか。しかもそのことにお金をかけ過ぎて結果的に赤字になるのではなく、きちんとビジネスとして成立させることも大切にする。

その場合、すべての本は同じ紙質、同じ色味にはなりません。今までの本づくりでは、いかに均質なものを大量に低コストでつくるか、ということが前提となってきました。本づくりに限らず、大量生産を前提とするものづくりでは基本的に同じ考え方だと思います。

けれども、これからの時代に作り手にとって大切なのは、あるものをできるかぎり無駄なく使い、必要な分だけをつくること。そして受け手に必要なのは、必ずしも均質でない商品にクレームをつけるのではなく、むしろ書店の店頭で、自分はこっちの表紙の色がいい、などと違いを楽しめることではないだろうか?

本の内容を形にしたようなこのアイデアを、三島も私も、ぜひ実現させたいと考え、米倉先生も喜んでくださいました。印刷所・紙業者の方々にご協力いただき、傷んでしまった紙の余りを探したのですが、おそらく3月末の時点ですでに多くは処分されてしまっていたようで、探し始めたのが4月になってからだったこともあり、適当な紙が見つからず、結局実現には至りませんでした。
ただ、考え方として、本づくりのモデルとして、ミシマ社が目指す「小商いの身軽な出版社」にぴったりのこのアイデアを、いつか何かの形で、実現させたいと思います。

『創発的破壊』編集こぼれ話

『創発的破壊 未来をつくるイノベーション』(米倉誠一郎)

そんな経緯がありつつ、最終的に出来上がったカバーがこちらです!

たとえば「破壊」という部分を赤くしたりしてしまうと、そもそも強い印象をもつその部分だけが強調されてしまうので、「創発的破壊」という新しい概念の出現が「事件だ!」という雰囲気を、新聞記事のようなデザインで表現して下さいました。

今回は、いつもはつけている帯もなし。シンプルで力強いこの装丁、店頭でもしっかり主張してくれそうです。

編集マラソン完走を目指して

個人的な話で恐縮ですが、冒頭にも触れたとおり、私は今年に入ってから編集・制作の仕事をさせていただくようになったため、本書制作中も自分が今走っているのが何キロ地点なのかまったくわからぬまま、怒涛の日々を過ごすこととなりました。

そもそも雲行きが怪しいと感じたのは4月の半ば頃。他出版社の編集者の方が、「今日、5月刊の本の責了(もう印刷に入れる状態の原稿を入稿すること)をしてきた」と仰っているのをきいたときでした。

「え~っ! 同じ5月刊予定なのに、まだ初校も組まれていないし、タイトルも決まっていないけど、大丈夫なんだろうか?」と心のなかで思いつつ三島の様子をうかがうと余裕の表情。「おお、まだ大丈夫なのか」と納得したのですが、5月に入って、やはり大丈夫ではないことが判明。

目まぐるしく入る修正、机の上に積みあがる原稿の山、普段使わない脳の部分を使って毎日原稿と向き合っていたある日の午後、まったく文字が頭に入らなくなり、隣の席にいた営業渡辺に、「あまりにも脳が不調なのでコーヒーを買いに行ってきます」と宣言をし、「星野さん壊れてるね」と言われるに至りました。

世の中には、年間30冊をつくる編集者もいらっしゃるそうです。何がどうなるとそんなことが可能となるのでしょうか。まずは壊れずにフルマラソンを走り切れるようになることを目標に、修行の日々は続きそうです。

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

ミシマ社仕掛け屋チーム

バックナンバー