ミシマ社通信オンライン

第29回ミシマ社通信オンライン

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読書の秋・・・10月22日、23日に宮城県 塩竈で「塩竈ブックエイド」が開かれました。

一箱古本市、古本バザー、映画上映、ライブペインティング、カフェなど、本好きの仲間が集まって一緒に楽しむ2日間。

ミシマガジンでは、6月の「Book! Book! Sendai」にもお邪魔し、とっても素敵な方々と出会うことができました。そのつながりを頼りに、本好きにはたまらないこのイベントへ、ミシマ社デッチふたりが行ってきました。

今回は、21日のプレイベントと22日の一箱古本市の模様をお届けします!

(文・小田垣絵美、富田茜)

第29回 塩竈ブックエイドに行ってきました。  

2011.11.21更新

はじまりは本の杜、仙台から

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「塩竈ブックエイド」に先がけ、21日の夜せんだいメディアテークで行われたトークセッション。3・11 を体験した漫画家のいがらしみきおさんと、映像作家で詩人でもあるクマガイコウキさんが「表現すること、考えること、生きること」の意味をユーモアを交えながら語ってくれました。

司会はライターで、【一箱本送り隊】呼びかけ人の南陀楼綾繁さん。いがらしさんの、「このたびの震災では、現実につかまれてほとんど身動きが取れないほどの衝撃があったけれど、自分と現実とのあいだに"あそび"が出てきたときに、だんだんと表現が回復するのだと思います」という一言が印象的でした。

塩竈ブックエイドの主催である【一箱本送り隊】。ホームページにはこんなふうに活動について書かれています。

「【一箱本送り隊】は、 自宅が、図書館が、書店が地震や津波で失われた被災地で、 本を読めない生活を強いられているたくさんの人たち、 子どもたちのために本を届けるためのプロジェクトです。

3月11日の東日本大震災により、 東北地方をはじめ広範な地区で想像を絶する災害が発生しました。 地震と津波、また福島原発の事故による避難生活を強いられた方々が 数多くいらっしゃいます。命の確保、生活の確保が優先されるのは当然ですが、 私たちはパンのみにて生きるものではありません。心にも栄養が必要です。

私たち【一箱本送り隊】は、 「不忍ブックストリートの一箱古本市」からはじまった 全国のブックイベントの参加者たちをネットワークした有志団体です。 「本好き」だからこそ、「本を読みたい」人の気持ちになって被災地に本を送ります。」


せんだいメディアテークでのトークの後、ミシマ社林が6月に仙台を訪れた際もたいへんお世話になった、ジュンク堂書店仙台ロフト店の佐藤純子さんから、こんなものをいただきました。

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ジュンコさん「明日の一箱古本市でこれを『つれづれ団』の店主に見せてください。わたしは一緒に行けないのですが、きっともてなしてくれますよ」 なんとほっこりした通行手形。なごみますね~。

意外と知られていないかもしれませんが、会場となった塩竈は仙台駅から東北本線で一本の行きやすい場所。仙台には、古書店やブックカフェがたくさんありとても本が似合う街。そんな仙台でのプレイベントを通して、ブックエイドへお客さんをたくさん呼び込みたいという主催メンバーの思いがありました。さて、当日の入りはいかに?

いざ、盛りだくさんの塩竈ブックエイドへ!

仙台駅から電車にゆられること約15分。お天気はあいにくの雨でしたが、1日目はふれあいエスプ塩竈の3階室内で一箱古本市と古本バザーがスタートです!

一箱古本市は、2005年に東京の谷中・根津・千駄木ではじまった一般参加の古本イベント。仙台をはじめ、全国各地で開催されています。段ボール一箱に自分だけの本棚をつくって、「一日本屋さん」になり、それぞれの店主さんが屋号をつけてこの日のために用意したラインナップで出迎えます!
お話しさせていただいた店主のみなさん、センスがキラリと光ってました。

● 家族本舗ひいらぎ

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多賀城に住むお母さん、息子2人、おじさんの4人組。家族みんなが本好きのひいらぎ一家です。

元気いっぱいのひいらぎ店長!『てれびくん』を一冊破格の90円(定価およそ600円)で販売、三冊買うとDVDがついてきます。ディスプレイされたポップは「吾輩は超リアル」、「ハリーポッターとそのへんの石」、「銀河鉄道の昼」、などなど遊び心満点。

● 脳天松屋 

不忍ブックストリート・一箱古本市の常連店主さん。「塩竈に来てくれる人はいつものマニアックなお客さんと違って子どもも多く、純粋にイベントを楽しんでいて新鮮な印象」と話してくれました。

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今回の一箱は、ひとつのテーマにしぼって普通のお客さんも見て楽しめるようチョイス。

堀井和子や阿部なを、平松洋子など食に関するエッセイが多数。おすすめは江上トミの『サンデー・きっちん』。

ひと昔前の人が食に対してどんなふうに心遣いをしていたかがわかる一冊です。

●つれづれ団

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盛岡と仙台の社会人や学生が中心となり、東北の日常生活を「遊び」でおもしろくするために活動している集団です。ジュンク堂書店仙台ロフト店の書店員・佐藤純子さんも団員のひとりで、通行手形を見せたところ、「いらっしゃいました」と書いていただきました!

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おまけのかわいい動物シール&しおりはこんな感じです

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テーマは「つれづれ動物園」。

一箱を動物園に見立て、そのなかにはタイトルに動物の名前の入った本や動物にまつわる本がたくさん。

団員の方も園長、うさぎ、飼育員に扮してお出迎えしてくれました。

「好きなことを好きなだけやる」つれづれ団ならではの、お客さんも自分たちも楽しめるような工夫が見えてわくわくしました。

●ねこ屋敷

こちらの店主さんは塩竈市民の方。個人的に震災後、物資を集めて送るボランティアをしているそうです。今回出した本はすべて横浜、秋田、岩手など、各地から物資として送られて来たもの。はじめは本を送らずにいたのですが、折角送ってもらったものを無駄にしたくないという気持ちから参加したとのこと。

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本の他には飼い猫の写真や、手作りの猫スタンプの押されたしおりを配布していてかわいらしい雰囲気でした!


●古本T

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谷中一箱古本市の常連店主さん。

一箱送り隊のメンバーとして初期から参加しており、助っ人の仕事もしながらの出店。一箱送り隊のバスツアーで来たとのこと。10月8日の谷中一箱古本市にも出店されたそうで、前回と同じく「土地」に関する本を揃えての参加です。渋くて良い雰囲気の一箱になっていました。

● ドンベーブックス

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「東京から塩竈までの一箱本送り隊によるバスツアーがあったから、ぜひ行きたいと思って」。

ドンベーブックスのお二人は東京の町田から、不忍をはじめ、秋田、仙台、会津、栃木、小布施、犬山、広島の一箱古本市など日本各地の本のイベントに参加しているそう。一箱のジャンルは幅広く、気になる本がたくさん。

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参考書は、千葉県柏市 麗澤中学校・高等学校の提供です

他にも、全国から集められた古本バザーや、中学校・高校の参考書を無料で配布するコーナーなどもりだくさん。



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【一箱本送り隊】呼びかけ人の南陀楼綾繁さんに古本バザーの本の集め方についてお聞きしました。

「古本バザーの本は、不忍ブックストリートなど谷根千の地域の人々、いつも出店している一箱古本市の店主さん、そして告知を見て集まってくれた本好きの人たちの集まりに協力してもらいました。

先日の不忍ブックストリートの一箱古本市のときも、店主さん達に呼びかけ、寄贈していただいたんですよ。集めた本は谷中にあるお寺の一角をお借りして、仕分ける作業を行いました」

確かに古本バザーをのぞいてみると、「本のチョイスがいいな」と思うものばかり。スペースごとに均一価格で分けられ、しかもお手頃な値段です。

「本を選ぶ基準は『お客さんが手に取って読みやすいもの』。本好きの方ならではの審美眼で、しっかりと見極めたものばかりです。今日のイベントは、塩竈フォトフェスティバルと会場が同じということもあり、塩竈に住んでいる方が多く来ている印象があります。あいにくの雨で屋内での開催ですが、お客さんも楽しんでいる様子なのでこちらも嬉しいですね」

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本が隣にあるということ

お客さんの入りは、午前中から予想を上回る大盛況! お昼前には廊下を歩くのが少し難しいほど混み合ってきました。
通りがかった、【一箱本送り隊】隊長の編集者・丹治史彦さんにお話を伺いました。

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「ふるさとが塩竈ということもあって、震災のあとで何ができるだろうと考えました。

自分が役に立てることは、やっぱり今まで個人的にも仕事でもずっと好きで接してきた本に関わること。地元の不忍からはじまって日本全国50カ所以上で開催されている古本市のネットワークがあるから、横のつながりで多くの仲間に呼びかけることができると思いました」

10月に塩竈で本のイベントを開催できたのは、少しずつ被災地の人たちや街の様子が変わってきたことがきっかけだそう。

「本は、生活物資のように緊急を要するものではないかもしれない。でも、本があるだけで心が休まることってありますよね。津波で家や学校、図書館が流されたために、身近に一冊も読むものがない状況がいたるところでありました。そういう環境にいる本を必要としている人たちに本を届けたい。それも読みたいと思ってもらえる本を送るために、【一箱本送り隊】を結成したんです。

被災地の協力者を頼り、日用品の配布会で本も一緒に配っていたら、6月ごろから具体的なリクエストが届くようになった。
意外だったのはお料理の本や野菜作りの本など実用書のオファーが多かったこと。これはだんだんと人びとの心にゆとりが出てきたしるしだろうと思いました。

また、「死と向かい合う」ようなテーマや、911、阪神大震災で親しい人の死に直面した方がどう生き抜いていったのか、というノンフィクションなどのリクエストもありました。『本が好き』という以上に、心の栄養のために本が求められていることを実感して、『塩竈ブックエイド』を開催することになったんですよ」

一冊一冊の本の力が感じられるようなイベントにするために、【一箱本送り隊】の強いこだわりがありました。

「とにかく古本バザーで徹底したかったのは、欲しいと思ってもらえる本を手に取りやすい値段で販売すること。

いかにも家で持てあましたような、いらないものが置いてあったら残念な気持ちになりますよね。全国から本を集めるとき、『自分が読みたい本、読んでもらいたい本を送ってください』と重ねてお願いしてきました。

その後も集まった本をもう一度東京で選びなおし、汚れている本はきれいに掃除したりもしています。そんなふうに、関わった人たちみんなの思いがつまった本が並んでいます」

会場を見渡すと、じっくりと本を眺めている人や店主さんと話し込む人、製本のワークショップに参加する人など楽しみ方は人それぞれ。性別も年代も関係なく、和気あいあいとした一体感がありました。

「人と人が集まって、気軽に話せるコミュニケーションの場になっていることがうれしいです。本を買うことももちろんだけど、店主さんや他のお客さんとおしゃべりして、にっこりと笑顔になって帰ってくれるといいですね。

一箱古本市に初めて参加する店主さんも、自分が好きな本をおすすめできることのおもしろさを感じているんじゃないかな。用意した一箱が他の人のアンテナにひっかかるか不安な一方で、お客さんが手に取ってくれた一冊がきっかけになってすごく盛り上がることもある。

塩竈で本好きが純粋に楽しめるイベントが開けてよかったと思います」


2日目には、会場を塩竈市公民館本町分室にうつし、古本バザーはもちろん、ライブペインティングやサイレント映画・小津安二郎監督作『生まれてはみたけれど』の上映会が行われたそう。プレイベントから通して3日間、本に触れて、わくわく、うっとりするイベントでした。

本は読むためだけのものではなく、人と人をつなぐもの。そんな本の魅力を塩竈の地で再発見できました。塩竈ブックエイドでお世話になったみなさま、本当にありがとうございました!

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