ミシマガ・ミュージック

ミシマガミュージック明和電機さん

時に現代美術作家であり、電子ギークでもあり、"製品"の楽器を手にすればライブをノリノリにこなすミュージシャン。そんな異色の顔を持つアーティストとして知られる明和電機の土佐信道さん。彼のもうひとつの顔は、「オタマトーン」などのオモチャを次々に生み出す発明家だ。

彼が生み出す自称"ナンセンスおもちゃ"たちは、何か笑えてハマる、そしてどこか可愛い、何とも不思議な魅力に満ち、多くの人々を魅了し続けている。この底なしのクリエイティビティーは、いったいどうやって生まれているんだろう?

今回のミシマガ・ミュージックは、彼がそんな"ナンセンスオモチャ"をつくるときにいつも行っている"ナンセンス発想法"を教えていただきました。さらに、その発想法をベースに彼が推進している、オモチャづくりの新たな方法論を提示する「オモケン」の試みをご紹介。人間が本来持つ"自分で遊びをつくる楽しみ"を、その手で、その心で、その脳で! 全生物の進化の系譜すらも持ち出して感じていただきます!
 
(聞き手:森オウジ)

第5回 明和電機的! ナンセンス発想法で、あそびをつくる楽しさを、もう一度 【前編】(明和電機さん編)

2011.04.20更新

面白いということはナンセンスであるということ

第5回ミシマガミュージック明和電機さん

―― 明和電機さんはとても多彩な領域に常に関わっているアーティストだと思います。代表作である「魚器(なき)シリーズ」のような芸術作品はもちろん、「ギターラ」のような楽器、「製品デモストレーション」で盛り上がる音楽、そして「オタマトーン」のようなオモチャ。ひとりの人の発明とは思えないくらい、いろんな形態・発想の作品がありますが、それらを生み出した創造性は、どこから来ているのでしょうか?

土佐それらはすべてひとつの流れのなかにあります。基本的に、一点物のアートや楽器づくりが原点にあって、それを大衆に向けてマス・プロダクト化したものがオモチャやCDということになります。アートというのは実に難解なものでして、一般の人にはなかなか理解してもらえないような発想でつくっています。たとえば「魚器シリーズ」は、「魚を道具にくっつけてみる」という表現で、自己探求をしてみました。

―― たしかにどれもモチーフが魚ですね。なかには「鯉を殺すための機械」といった意味不明なものや(笑)、不気味な形の作品もあります。いったい、なぜ「魚」だったのでしょうか?

土佐なぜかは僕にもわかりません。なぜだかそうだった、ということです。アーティストはみな、たったひとつのオリジナルの世界観にたどり着くことを目指しているものです。僕の場合、のちに「オタクギョタク」として製品化しましたが、1000匹の魚を描くことや、魚の悪夢にうなされながら思索にふけったことで、魚というテーマに出会ったのです。

いわば茶道家が、茶器を使って自己を見つめて掘り下げていくプロセスのように、僕にとっては魚器シリーズを通じて、自分を探求していると言えるでしょうか。アートの世界というのは、わかりにくいんです。

―― アートとオモチャでは、発想するときの方法も違いますか?

土佐難解なアートと、オモチャのような大衆向けのマス・プロダクトは、一見無縁に思えます。ところが、オモチャがオモチャとして成立するのに必要なのは、「遊んで面白い」ということだけなのです。つまり面白ければ何でもオモチャになる。そして僕は人間が面白がる瞬間というのは、常識を大きく覆されるような、「ナンセンス」な瞬間だという結論に至りました。

たとえば頭のなかに布団を思い浮かべてください。それと、実際に目の前に布団があったとして、それが同じもの、つまり「=」の関係にあれば、それはコモンセンス、つまり常識です。ところが目の前にあるものが、「ヘビ柄の布団」だったり、さらに「末端アミノ酸残基を1残基除去するディクソンの方法からの布団!」(笑)などになってくると、頭のなかのオブジェと目の前のものが大きくかけ離れて「面白い」と感じる。これが僕があみだしたナンセンス発想法です。

「ナンセンス発想法」は、目の前のモノに「おかしな」という言葉をつけることで、ナンセンスな発想を体系的に可能にする方法論なのです。
 

ナンセンス発想法を実際にやってみよう

―― 実際にナンセンス発想法とはどうやってやればいいのでしょうか?

土佐まず、このようなシートを用意します。そして今から説明する手順どおりに、言葉を書きこんでいきます。


ステップ1:まず今日の朝に目が覚めて、はじめて触った物を書いてください。

 例:ふとん

ステップ2:それに「おかしな」という言葉をつけてください。

 例:おかしな+ふとん

ステップ3:それからぱっと頭に浮かんだ言葉をふたつ書いてください。

 例:空飛ぶ+ふとん とろける+ふとん
 
ステップ4:ステップ3で思いついた言葉から連想するものを書いてください。

 例:とろける飛行機




どうでしょうか。ステップ1からずいぶんとぶっ飛んだものになりました。人間の脳というのは「おかしな」という言葉をつけると、その言葉ともっとも「=」ではないものを検索しようとするのです。そうすることで、結果的に常識的ではなく「ナンセンス」なものを創造することができ、面白さに繋がってゆくのです。


 ★僕もやってみました。
 
 ステップ1:くつした
 ステップ2:おかしな+くつした
 ステップ3:皮膚と同じ素材の+くつした どこまでも伸びる+くつした
 ステップ4:地球の裏側まで届くやたら色っぽくてリアルなマジックハンド




―― なるほど! たしかにそうですね(笑)なぜこんなものを考えついたのか、自分でも説明がつかないです。
 
土佐人間は、おかしなものを考えようとするとき、自然と他人とコミュニケーションするときのことも考えていると思うのです。「ウケたい!」と本能的に望みながら発想するからです。よって、これをシートにもあるように数ユニット書いてゆくと、ステップ3を縦で見たとき、その人の内側の世界にある「フィーリング(世界の感じ方)」の特徴が見えてきます。

たとえば粘着質な人とかはそこがすべてベトベトした感じになる。僕の魚器(なき)シリーズではこのフィーリングが「魚」だったのです。それと外の世界に実際にある「コンセント」(上の例ではふとんに相当)をかけあわせて「魚(な)コード」が生まれたのです。

この発想法は僕が苦心して見つけた「魚」のようなフィーリングを、機械的に、単純に発見できるメソッドなのです。

ミシマガミュージック明和電気さん

日本の置物から着想を得た、世界最多骨の延長コード、その名も「魚(な)コード」。

―― これは日本語だけでできるものなのでしょうか?

土佐いえ、海外のワークショップでも試したところ好評でした。言語を使って思考するかぎり、普遍的に使えるメソッドです。

―― この発想法はいろんなもの、様々なシーンに応用できそうですね!

土佐発想ができる人というのは、自分自身に制約をつけない人です。たとえば釣りに行く時に、「釣れない釣れない」と思っていると、当然どこに行っても釣れません。ものをつくるときも、人は「つくれ!」と言われると、「難しい・つくれない」と思い、制約を自分に課してしまう。それをやめようという発想法なのです。とりあえず書いてみましょう、と。

発想ができる人というのはそういう脳の使い方を自然にしています。「発想ができない」と決めつけることがいちばんの脳のトラブルになると知っている人なんですね。


次週、後編に続きます!

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ミシマガミュージック第5回明和電機さん

NUT(ナット)デビューCD「おめでトーン♡ありがトーン」
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カップリング曲は明和電機の名曲「エーデルワイス」を収録。

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明和電機(めいわでんき)

土佐信道さんプロデュースによるアートユニット。ユニット名は父親が過去に経営していた会社からとったもの。青い作業服を見にまとい、作品を「製品」、ライブを「製品デモストレーション」と呼ぶなど、日本の高度経済成長を支えた中小企業のスタイルで活動。土佐信道さんは、3代目代表取締役社長である。

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