なめらかな会社が好き。

第1回 胡散臭いのが嫌いです。

2013.05.30更新

 こんにちは。近藤と言います。「はてな」というインターネットの会社を経営しています。2001年に会社を作ってから、13年目になりました。思えば随分長い時間になってきました。

 会社を作ったのは25歳のとき。就職活動をちゃんとやらず、進んだ大学院も中退してぶらぶら、いや、悶々と過ごしていたんですが、ふとしたきっかけで会社を作ろうと思い立ち、気付けば13年もやっています。

 よくここまで続いているな、という感覚もありますし、まだこんなところまでしか進んでいないのかよ、という気持ちもあります。まあしかし、それが自分です。それ以上でもそれ以下でもない。たぶんもう一度やってもたいして違いはないでしょう。

 なぜきちんと就職活動しなかったかというと、ひとことで言うと胡散臭かったんですね(笑)。
 だいたい、中学生になったあたりから、僕は世の中とうまく折り合いがつかなくなってきました。だって、なんだか胡散臭くないですか?

 中学校に入ったら詰襟の制服を毎日着なさいと言われる。この詰襟というのが、内側にプラスチック製のカラーというのがついていて、これが何とも気持ちが悪いんです。
 僕は暑がりで汗かきなんですが、このカラーに汗が付くとベタベタしてひじょーに気持ちが悪い。その気持ち悪さに耐えながら授業を受けるもんだから、全然集中できない。せめてもう少し清潔な綿の繊維とかでできた衣類が肌に接触してくれれば、授業にも集中できるのに、ベトベトプラスチックが気になって気持ちが悪くて仕方が無いのです。全く機能的ではないわけです。

 それでどうにもこの制服というものは、若者が学校生活を送る上で機能的な存在では無いという結論に達した僕は、先生になぜ制服を着ないといけないのか、と聞いて回りました。納得したかったんです。
 ところが、いろいろな先生に聞いても聞いても誰も納得できる理由を教えてくれない。別に反抗したいわけでも無いんです。納得したいのに、誰も教えてくれない。

 どこまで制服の話で引っ張るんだ、という感じですが、もう少し行きます(笑)。

 どうもおかしいぞ、これは、と誰でも思いますよね。(え、思わない? いやいやいや、そこは妥協しちゃダメです!)

 どうも先生だって制服が一番良いとは思っていないんじゃないか、と思った僕は、自分の学校から制服をなくしてしまおう、と思い立ちました。そこで、生徒会長に立候補して、校則を変えてしまえ、と考えました。若いですね(笑)。

 二期連続で生徒会長に就任し、いまいち気乗りしない生徒会役員の面々のお尻を叩きながら一年間取り組んだ結果、何を変える事ができたのか!?

 僕が変えることができたのは、クラブの朝練に行くときに制服で登校しなければならなかったのを、学校指定のジャージでも登校できるように変える事ができただけでした。

 ふぅー。

 それまでは、朝練に行く時もまず制服で登校し、学校についてからジャージに着替えなくてはならなかったんです。それがなんと! ジャージでも登校できるようになった! 一年間の必死の活動によってついに僕たちは勝利を勝ち取ったんです!! ...んなわけないですよね。

 さすがに14歳の少年でも分かります。残るのは徒労感と絶望感。先生への不信。学校への不信。社会への不信。ちょっと待て、この世の中、ちょっとおかしいんじゃないのか、という疑問。
 おい、ちゃんと本音で話をしている大人がいないんじゃないのか? 本音っぽいこと話している大人はミュージシャンとスポーツ選手だけかよ! これを受け入れてなんとかやっていかないといけないのか、という将来への不安。

 僕は自分が生まれた社会が好きです。愛しています。学校だって町だって国だって大好き。大好きなものには良くあってほしい。いる人が幸せであってほしい。そんだけです。

 就職活動はなんなんですか、あれは。大の大人が全員同じ格好をして、同じような会社を目指して、同じような面接模範回答的やり取りをする。良いんですか、それで?

 大学時代も一通り過ごせば、22歳の人間にもなれば、自分が好きなこととか、なんとなく自分らしいと思える瞬間とか、こんな人素敵だな、と思う人とか、なんかあるでしょう。そういうことを大事にしないといけないと思うんです。
 話を聞く大人の方も、そんなそれぞれ違う人間に、あなたはどういう人間ですか、君は何をしてみたいですか、を真剣に聞かないといけないと思う。もう一回そこで制服ですか!? まじですか!? いやいやいや、もうこの歳でもう一回そこはなしでしょうよ。さすがに。
 というか、本気ですか、みなさん!

 これが間接的に僕が起業したきっかけです。それが良かったのか、悪かったのか。正直しんどい事もいっぱいありますし、あー、ちょっといきがっちゃったかな、もうちょっと普通にやっとけば良かったかな、と思う瞬間もあるにはありましたが、最近はもう本当に会社を作って良かったな、と思っています。

 そんなこんなで自分の会社をやっているわけですから、せめて良い会社にしたい。胡散臭くない会社にしたいです。

 なめらかな会社というのは、以前に鈴木健さんという変わった人から研究会に誘われて、その時にやった講演のタイトルにした名前です。
 健さんが「なめらかな社会」という概念を提唱されているので、それを引いているわけですね。そちらの話はそれはそれで面白い話で、非常に深い話なんですが、こちらはもう少しやわらかく、まあ、真四角でゴツゴツしていて融通のきかない杓子定規な会社じゃなくて、もう少し人間を中心に置いた、人間の形に合わせたようななめらかな会社が良いですよね、というくらいにとらえていただければと思います。

 せめて自分なりに、まともだな、と感じられるような会社が作れれば、関わった人にも少しは幸せになって頂けるし、外からも一つの例として見て頂けるようなら、自分も頑張った甲斐があるもんだ、と思って経営をやっています。
 そんな日常のお話を、これからここでしばらく続けさせて頂ければと思います。どうぞよろしくお願いします。

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近藤淳也(こんどう・じゅんや)

1975年三重県生まれ。京都大学理学部卒。2000年同大学院中退後、2001年7月に「人力検索はてな」を開始し、有限会社はてなを京都で設立。2003年「はてなダイアリー」サービス開始、2004年2月に株式会社はてなに改組。現在、京都に本社、東京に本店がある。著書に『「へんな会社」のつくり方』(翔泳社)。

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