脳内会議

第5回 会議を壊す人のタイプとは?

2012.10.15更新

「会議を有意義にしたい」「できれば何らかの貢献したい」と思ってその会議に臨んでいる人が多い場合、良い会議になる――はずですが、意外とそうでもないのが現実です。もちろん、まったく会議に価値を見出していない人や、敵意をもって参加する人がいる会議よりは、あきらかに"まし"ですけど。

前回、僕は決議を必要とする会議以外では、ほとんどすべての時間を「前提の確認=各論と総論の際(きわ)の発見」に使っていると述べました。逆を言えば、話の前提が擦り合ってないまま進んでしまう会議は珍しくないということです。経験的には、会議への貢献意欲が高い人たちが多い会議ほど、そうなってしまうケースが散見されます。不思議ですよね。

どうしてそんな不思議なことが起こるのか。おそらくそれは、人は人に認められたいという"承認欲求"をもっているから。特にビジネスの現場で、できるだけ自分を優秀に見せることで相手からの信頼を得たいと行動することは、極めて自然なことですし、仕事に真面目な人ほどそういう意識をもっていること多いでしょう。しかし、この自然な承認欲求が会議の進行を邪魔したり、ときには会議を壊してしまうことがあるから、やっかいです。

承認欲求にはいくつかありますが、会議を壊しやすい事例として、
「信頼されたい(バカにされたくない)」
「話がわかる人間だと思われたい」
「有言実行な人間だと思われたい」
の3つの欲求を取り上げてみたいと思います。

モデルケースとして、次のような会議を想定してみました。
『期の初めなので、今期の戦略を伝えるために部に所属しているメンバーを集めて全体会を行う。その会の中身と役割分担を決める』
あなたは部全体の運営を行う企画チームに所属しています。メンバーは5人であなたはリーダーとして、会議を仕切る役目になっています。この会議に部長は参加しませんが、部長からは何を伝えたいのかを記したメールが、事前に5人へ送られています。会議のゴールは、全体会のプログラム案の合意と、それに基づいた各人の役割の決定。それではシミュレーションスタートです。


リーダー部長からのメールは既に読んでもらっていると思いますが、今回の全体会は、できるだけ部の全員の参加感が醸成できるようにしたい、とのことでした。これについてアイデアがある方はいますか?

Aさん私たちの部は100人いますよね。仮に一人に一分発言してもらうとしても、100分は必要となります。会議は長くても10時30分までに終了してほしい、と他部署からの要望がきています。9時スタートとしても90分。全員から一言もらうのは難しいと思います

Bさん「それなら、一人30秒にすればいいのでは? 50分に短縮されるし、部長の挨拶が30分だとしても十分時間がとれます」

リーダー確かにそうですが、全員が発言することが、本当に部長のおっしゃる参加感の醸成になるのでしょうか

Bさんであれば、記念の品みたいなものを配布するのはどうでしょう? 参加した証拠になりますし

Cさんそもそも参加感の醸成って、どういうことなのでしょう?

Aさん私は参加者全員が発言しないと、参加感の醸成ができないと思います

Bさん私もそう思います

Dさん参加感を一体感、と捉えることもできますよね。部長がおっしゃることが一体感だとすると、部の全員が登場するムービーをつくって、それを放映するってのもあるかもしれません

Bさんあ、私が言いたかったことはそれです。一体感ってやつ

Aさん私は一体感というのもわかるけど、ムービーの作成は時間と予算の問題で現実的には難しい。今から間に合うのは、全員に今期のスローガンを一言発言してもらうので精一杯じゃないかと。。。

Cさんそもそも部長がおっしゃる参加感とか一体感とか、必要な理由がわかりません。部長が伝えたいことを伝えるのが、いつもの全体会じゃないですか。いつも通りの全体会を進行するだけでも、私たちは大変なのに。。。

Dさんいつもの全体会では、事後アンケートの結果、参加者の満足度がそこまで高くないのを部長は心配されているんだと思います。私たちの役目として、単に会を無事運営させるだけでなく、参加者の満足度を高めることまでを、部長は望んでいるのではないでしょうか


相変わらず都合のよいシミュレーションですが、まとまらない会議の典型ってこんな感じじゃないですかね? 僕も週に3度は遭遇している気がします。
さて、このシミュレーションのなかから、先ほどの"会議を壊す3つの承認欲求"
「信頼されたい(バカにされたくない)」
「話がわかる人間だと思われたい」
「有言実行な人間だと思われたい」
に当てはまる人を発見してみましょう。みなさんも、AさんからDさんまでの4人が、どのタイプに近いか考えてみてください。

まずは「信頼されたい(バカにされたくない)」から。

僕の見立てでは、Bさんです。追従型、とも言えますが、他の人の意見に被せて発言をすることで、"自分は多様な意見を持っている"とアピールしています。

Bさんには自分の意見はなく、場の空気を読みながら、その場で最もよさそうな意見に同調していきます。参加者に信頼されたい、バカにされたくない一心での行為とも言えますが、リーダーから見れば意見がコロコロ変わって会議を掻きまわすので困り者と感じるでしょう。でも場の空気で意見を変える程度であれば実害は少ない。リーダーは、うんうんなるほど、とその人の発言に耳を傾ければいいのです。

逆にこのタイプは、場の空気を読むのに長けているので、味方につければ会議の進行を助けてくれる存在になります。しかしBさんが、場の空気ではなく、声の大きい小さい(影響力の大きい小さい)で意見を変えてしまうようになるとやっかいです。会社組織では、仕事の実力とは別に、影響力の大きい人がいます。その人が正しい結論に会議を導いてくれれば鬼に金棒ですが、どちらかと言うとあまり好ましくない意見に固執して、結論を捻じ曲げてしまう場合が多い。そういうときにBさんのようなタイプが同調し始めると、会議が声の大きい人の意見だけに支配され、他の意見を寄せ付けなくなってしまう危険性が出てきます。

次に「理解力の高い(話のわかる)人間だと思われたい」。

これは、Dさんです。シミュレーションでは、一番まともな意見を述べているように思えますが、実行性が低かったり、抽象度が高かったりする発言になりがちで、意外と周りからは疎まれてしまうケースがあります。

今回の会議には出席していませんが、Dさんが気にしているのは、部長の存在。全体会の"発注者"である部長の要望をできるだけ満たすため、部長の指示の背景まで踏まえて発言しているのはよいのですが、現実との折り合いをつけない限り実行には結びつかないのでリーダーが妥協策を探っているときに、Dさんが「でも部長は、部長は」と言いだすと、かなり扱いに困ってしまうでしょう。(ちなみに「部長は、部長は」を「クライアントは」とか「顧客は」とか「取引先は」に変えてみると、より実感値が高まるかもしれませんのでお試しを)。

ビジネスの現場では、他者からの要望がきっかけで仕事が発生することが多い(≒受動型)ので、「話のわかる人間だと思われたい」タイプは、要望にできるだけ忠実でありたい、という信念を持った人であるともいえます。うまくはまればDさんは、これまでの常識ではできなかったイノベーションを実現するかもしれません。しかし現実には、理想が高すぎて議論を拡散させてしまったまま、収束させずに終わってしまうことが多い。リーダーとしては「正しい意見の持ち主」だけに仕切るのがやっかいなタイプです。

最後に「有言実行な人間だと思われたい」です。

これは、AさんとCさん。同じタイプながら、少し系統が違っていて、Aさんは「ネガティブ思考系」で、Cさんは「変化を望まない系」です。ふたりとも超現実的で、頼まれたことはしっかりやりきるが、やりきる自信がないことは引き受けない。リーダーとしては、どちらも実行力はあるので味方につけたいタイプなのですが、思考が凝り固まっていることが多いので、考え方をほぐすには結構な技術が必要になります。

「ネガティブ思考系」のAさんの特徴は、とにかく発言が否定で終わる。「こうしたらいいんじゃない?」というアイデアがでると、重箱の隅をつつくかのように「いや、それは予算が」「時間が」「人員が」とか言い始めます。Aさんは実行のために、よかれと思って言っていて悪気はないのですが、会議のアイデア発散のときに否定的発言を繰り返されると、場の空気は澱んでしまいます。アイデアブレストのときは、Aさんに「あくまでアイデアベースだから、実行できるできないは、後ほど考えましょう」と釘をさす必要があります。

「変化を望まない系」のCさんは、未来よりも過去、新規よりも既存に固執しがちです。Cさんの場合はアイデアが出ると「これまではそうしてなかった」「一度試したがダメだった」「新しいことに取り組む意味がわからない」といった発言で、アイデアを殺し始めます。

Cさんの場合も、失敗するリスクを軽減させるための発言で悪気はない、ともとれます。しかしCさんの思考が、これまでの踏襲をする=考えることが面倒くさい、となっているとリーダーとしてはやっかいです。ビジネスの現場では、ルーティーンワークという名の、単純作業中心の仕事が存在しており、その仕事の最も大きなゴールは"ミスをしない"こと。ミスをしないためには、日々の地道な改善が必要なのですが、人によっては「言われたことだけをただこなす」という選択をするケースがあります。

「ミスの責任は自分ではない。指示した人が悪い」とすることで、自らの思考を停止してしまうのです。今回のシミュレーションは、会議の貢献意欲が高い人が前提ですが、Cさんが悪化すると会議ではまったく発言をせず、アイデアが決まった後に「リーダーが決めたことだから私はしらない」「私は納得してない」などと言いふらしかねません。さらに"ミスが起こっても、責任は私にはない"ことの証明だけが重要事項になってしまったCさんが、声の大きいタイプだったら―――場の空気がCさんの引力に吸い込まれ、まったく創造性のない会議になってしまう危険性が高くなるでしょう。

ここまで3つの承認欲求タイプ別に、AさんからDさんまで事例をあげてみましたが、実は自分はこのタイプに当てはまる、と思ったりしませんでしたか? しかも、会議の議題や参加メンバーによっては、自分がAさんにも、Bさんにも、Cさんにも、Dさんにもなり得るかもしれない、と感じませんでしたか? 書いている僕自身だってそうです。

つまり誰もが会議を壊す人になる可能性をもっている、ということなのです。よかれと思っていることが、最終的に組織全体の不利益になってしまう――そういう結果を防ぐためにも、総論〜各論の仮説をもった事前脳内会議を実践されることをおすすめします。そうすれば、議論を俯瞰した状態で会議に向かえるので、3つの承認欲求をある程度コントロールすることができるからです。何事も成果をあげるためには事前の準備が肝心、というわけです。

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藤井大輔(ふじい・だいすけ)

1973年 富山県生まれ。1995年 株式会社リクルート入社。以来、編集・メディア設計職に従事し、主に『ゼクシィ』『ABROAD』『ダ・ヴィンチ』『住宅情報』『都心に住む』等に携わる。

2003年9月『R25』を立ち上げ、編集コンセプト・ネーミング・コンテンツラインナップを立案する。

2005年4月『R25』編集長に就任。2012年3月まで『R25』フリーマガジン・デジタルメディア戦略担当。

現在はシニア向け温泉予約サービス『ゆこゆこ』の経営企画室長。著書に『R25のつくりかた』(日本経済新聞出版社)。

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