脳内会議

第6回 会議を壊す人の対処法

2012.11.06更新

「信頼されたい(バカにされたくない)」
「話がわかる人間だと思われたい」
「有言実行な人間だと思われたい」
の3つの他者への承認欲求が"会議を壊す"原因になる場合がある―――会議への貢献意欲の高さとは別に、この3つの承認欲求のせいで結果的に会議を壊す側(=非生産的にしてしまう側)になる可能性が、誰にでもあることを前回指摘しました。自分が壊す側にならないためには、できるだけ会議を俯瞰して見る訓練が必要ですが、逆にそういった"壊れそうな会議"を仕切る立場になってしまった場合どうすればよいのか、という方が結構切実だったりしますよね。今回はその対処法について書いてみたいと思います。

まずは、前回のシミュレーションをおさらいです。

『期のはじめなので、今期の戦略を伝えるために部に所属しているメンバーを集めて全体会を行う。その会の中身と役割分担を決める』
あなたは部全体の運営を行う企画チームに所属しています。メンバーは5人であなたはリーダーとして、会議を仕切る役目になっています。この会議に部長は参加しませんが、部長からは何を伝えたいのかを記したメールが、事前に5人へ送られています。会議のゴールは、全体会のプログラム案の合意と、それに基づいた各人の役割の決定です。

リーダー部長からのメールは既に読んでもらっていると思いますが、今回の全体会は、できるだけ部の全員の参加感が醸成できるようにしたい、とのことでした。これについてアイデアがある方はいますか?

Aさん私たちの部は100人いますよね。仮に一人に一分発言してもらうとしても、100分は必要となります。会議は長くても10時30分までに終了してほしい、と他部署からの要望がきています。9時スタートとしても90分。全員から一言もらうのは難しいと思います。

Bさんそれなら、一人30秒にすればいいのでは? 50分に短縮されるし、部長の挨拶が30分だとしても十分時間がとれます。

リーダー確かにそうですが、全員が発言することが、本当に部長のおっしゃる参加感の醸成になるのでしょうか。

Bさんであれば、記念の品みたいなものを配布するのはどうでしょう? 参加した証拠になりますし。

Cさんそもそも参加感の醸成って、どういうことなのでしょう?

Aさん私は参加者全員が発言しないと、参加感の醸成ができないと思います。

Bさん私もそう思います。

Dさん参加感を一体感、と捉えることもできますよね。部長がおっしゃることが一体感だとすると、部の全員が登場するムービーをつくって、それを放映するってのもあるかもしれません。

Bさんあ、私が言いたかったことはそれです。一体感ってやつ。

Aさん私は一体感というのもわかるけど、ムービーの作成は時間と予算の問題で現実的には難しい。今から間に合うのは、全員に今期のスローガンを一言発言してもらうので精一杯じゃないかと。。。

Cさんそもそも部長がおっしゃる参加感とか一体感とか、必要な理由がわかりません。部長が伝えたいことを伝えるのが、いつもの全体会じゃないですか。いつも通りの全体会を進行するだけでも、私たちは大変なのに。。。

Dさんいつもの全体会では、事後アンケートの結果、参加者の満足度がそこまで高くないのを部長は心配されているんだと思います。私たちの役目として、単に会を無事運営させるだけでなく、参加者の満足度を高めることまでを、部長は望んでいるのではないでしょうか。

3つのタイプに分けると、
「信頼されたい(バカにされたくない)」→Bさん
「話がわかる人間だと思われたい」→Dさん
「有言実行な人間だと思われたい」→Aさん、Cさん
というように、前回は説明いたしました。

さて、みなさんなら、この会議をどう仕切っていきますか?

仕切り方にも当然いろんな方法がありますが、いきなり打ち手から考えることは得策ではありません。まずは"会議のボトルネックを探る"脳内会議からスタートです。

ボトルネックとは「瓶の首」の意ですが、ボトル瓶の一番狭い部分は液体の流れが最も悪くなるため、流れが詰まってしまい全体の効率を悪化させてしまいます。同じように、物事がなかなか進まないときは、その流れを詰まらせる原因があり、それがどこにあるのかを見つけなければ、解決の糸口を見つけることができません。

「課題解決よりも、課題設定の方が難しくて価値が高い」なんて言われることもあるくらい、ボトルネックを見つけるのは、意外と難しいんです。

では、今回のシミュレーションにおいて、ボトルネックはどこにありそうでしょうか? ちょっと考えてみてください。ちなみにボトルネックはひとつではありませんが、その時点で最も効率を悪化させているボトルネックを発見できれば、解決までのスピードは速くなりますので、できるだけ根本的なボトルネックを探索することをおすすめします。

僕が注目するポイントは、Cさんの次の発言です。
「そもそも部長がおっしゃる参加感とか一体感とか、必要な理由がわかりません。部長が伝えたいことを伝えるのが、いつもの全体会じゃないですか。いつも通りの全体会を進行するだけでも、私たちは大変なのに。。。」

そもそも発注者である部長の要望「参加感の醸成」に対して、納得していません。他の参加者が、基本的に発注者からの要望に応えようとして、あれこれ考えているのに、Cさんだけはここの前提が揃っていない。発注者の要望に疑いを持つな、というわけではないのですが、この場合他の会議参加者と前提が揃っていないことが問題です。加えてCさんはタイプとして、有言実行タイプでかつ"いつものやり方"に固執し変化を嫌う傾向があります。Cさんにとっては、ミスを犯さないことが第一優先であり、具体的なイメージが湧かないかぎり、自発的には動いてくれそうもありません。

そんなCさんに対して、リーダーが言ってはいけない禁句のひとつとして、「それは部長が言ってることなのでしょうがない」というのがあります。発注者の意見は絶対なので従うのが当たり前―――そう考えるのは必ずしも間違いではありませんが、同じように考えない人も組織のなかにはいます。Cさんにすれば「具体的にどうすればよいかの指示が部長からないのであれば、それはリーダーがやるべきでしょう」と矛先がリーダーに変わるだけで、なんの根本解決にもなっていません。

リーダーが直接説得するのが難しいようであれば、他の人にお願いするのもひとつの手です。今回の参加者のなかにCさんの態度を軟化してくれそうなタイプはいるでしょうか?

リーダーの意向と近そうなのは"話のわかる人と思われたい"Dさんなのですが、僕の経験的にはDさんタイプとCさんタイプは、水と油の関係になりがちです。Dさんは理想を求めるタイプゆえ実行性に乏しいプランが多く、Cさんから見れば、結局最終的に実行段階になれば自分が尻拭いをしなければならない、と思っているので、Dさんの意見にはほとんど賛同してくれないでしょう。

リーダーが味方につけるとよいのは、この場合Aさんです。AさんもDさんも有言実行タイプで近いというのもありますし、Aさんは少なくとも部長の要望には疑問を持っていません。とはいえAさんも、今回の要望に対する具体的な実行プランを思いついていないので、ネガティブな発言が多い状態です。そんなAさんに、どのように声をかけるべきか。僕は、2つのアプローチを考えてみました。

(その1)
リーダー「みなさん、積極的な発言、ありがとうございます。ちょっとここで整理したいのですが、Aさんは、これまでの全体会で"参加感"を感じたことはありますか? ぶっちゃけて言えば、私はそこまで感じてないんですが」

(その2)
リーダー「みなさん、積極的な発言、ありがとうございます。さきほどDさんから参加感の醸成のために、まずは満足度を高める施策を考えるべきでは、というご意見いただきましたが、Aさんならどんなアイデアがありますか?」

(その1)は、Aさんはバランス的に一般の社員と近い感性の持ち主である、と設定し、そのAさんが参加感を感じるかどうかを、今回の課題解決のリトマス試験紙のようにして会議を進めていく手法です。

Aさんはそもそもネガティブな視点で見るタイプでしょうから、全体会の評価についても辛口なはずです。「そんなAさんでも参加感を感じてもらえる状態ってどんなものなの?」というのが、今回の会議における問題解決の共通項にしてしまうことで、全員の前提を揃えにいくのです。

一般的に人は仮想の状態で考えるよりも、目の前にいる人にフォーカスをあてて考えた方がアイデアが出やすいですし、少なくともCさんとDさんの前提がバラバラな議論になることは防げるはずです。注意点があるとすれば、Aさんが自分の意見をぶっちゃけていうのが苦手なタイプの場合。Aさんがリアクションしてくれなければ、議論がそこで止まってしまいますので、どれだけリーダーが"ぶっちゃけトーク"をしやすい雰囲気にできるか、がポイントになります。

(その2)は、Aさんにちょっと負荷がかかりますが、DさんとCさんの距離を縮めてもらう役割をしてもらう手法です。Aさんは、Cさんと同じで現実的思考を持っていますが、Dさんの意見を真っ向から否定することはないと思われます。おそらく意見を求められれば、Dさんの理想論をベースに、何かしらか各論で実現するための解決策を提示しようとするはずです。Aさんのアイデアに対しては、同じ思考のCさんは好意を持って聞いてくれるので、Cさんもそこまで態度を頑なにはしないでしょう。

Dさんも自分の意見そのものを否定されているわけではありませんから、Aさんの意見についてポジティブに耳を傾けるはず。リーダーは、Aさんの負担を理解しつつ、どんなにささいなアイデアでもAさんが出してくれた意見について、大きな同意と感謝を示しながら場の空気をつくる必要があります。「それは面白いですねー」「なるほど、それは気がつかなかった」「確かに、そのアイデア、ありですね!」など、うまく相槌を打ってポジティブな雰囲気をつくることができれば、おそらく乗り切れるでしょう。

(その3)(その4)のアプローチも、当然存在するので、みなさんも今回の会議の解決方法について、ぜひ"脳内会議"、実践してみてください。


脳内会議 第6回

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藤井大輔(ふじい・だいすけ)

1973年 富山県生まれ。1995年 株式会社リクルート入社。以来、編集・メディア設計職に従事し、主に『ゼクシィ』『ABROAD』『ダ・ヴィンチ』『住宅情報』『都心に住む』等に携わる。

2003年9月『R25』を立ち上げ、編集コンセプト・ネーミング・コンテンツラインナップを立案する。

2005年4月『R25』編集長に就任。2012年3月まで『R25』フリーマガジン・デジタルメディア戦略担当。

現在はシニア向け温泉予約サービス『ゆこゆこ』の経営企画室長。著書に『R25のつくりかた』(日本経済新聞出版社)。

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