脳内会議

第11回 相手の特徴・傾向を活かすには?

2013.03.08更新

どんな人にも本質的な特徴・傾向があり、それがビジネスにおいての得意・不得意に表出されてしまうことある―――「ぶれない価値観を持ち続けたい」「ルールをきちんと守りたい」「面白いことで人を驚かせたい」「人の役に立ちたい」の4つの本質的な傾向・特徴には、それぞれ"活きる時と場合"と"活きない時と場合"がある、と前回書きました。加えて、『自分観察・脳内会議』をすることで自分の特徴・傾向をつかみ、他者との共通点・相違点について考察を深めることをお勧めしました。そうすることで、自分の得意・不得意を知ることができますし、自分とは異なる傾向・特徴の持つ人との対処もしやすくなっていきます。

ビジネスの現場では、チーム単位で仕事をすることが多いと思いますが、みなさんの現在所属しているチームには、どんなタイプの人がいますか? まず、そのチームのリーダーが4つの特徴・傾向のうち、どれを持っていそうかを考えてみてください(自分がリーダーの場合は自分自身の特徴・傾向で結構です)。その次に、他のメンバーを想像してみてください。ちなみにチームの単位は、多くても7人程度にしてください。

比較的似ている人が多いな、と感じた方。
そのチームの傾向は、おそらく「会議ではそんなに揉めない。短期的な課題解決のためのまとまりはあるし、実行に移るのも早い。一方、会議ではそんなに目新しい情報がなく、いつも同じようなことの確認が続く。複雑な課題になるとあまり議論が深まらず、解決への手段やアイデアも似たようなものが出てきてしまう」ような"サークル的同質型チーム"のではないでしょうか。

違う人が多いな、と感じた方。
そのチームの傾向は、2種類あります。ひとつは「会議はつまらないことでよく揉める。チームにまとまりがなく、バラバラな印象でリーダーの求心力も弱い。とはいえ、個人個人がスキルを発揮しやすくはあるので、大きなトラブルがなければ、それなりに成果は出せる」ような、"バラバラ異質型チーム"。もうひとつは「会議では議論はそれなりに長いけれど、議論が出尽くしたときの結論には全員納得感がある。実行に移ったときには、リーダーを中心に指示命令系統がちゃんと整っており、短期的な課題でも複雑な課題でも、成果の出る出ないのブレが少ない」ような"相互補完・異質型チーム"です。

いかがでしょう? チームの傾向を大雑把に3タイプに分類しただけなので、もしかしたらどれにも当てはまらない方もいたかもしれません。ここでお話したかったのは、"個人の特徴・傾向と、チームの特徴・傾向には関連性がある"ということです。チームスポーツに当てはめるとわかりやすいかもしれません。

例えば、サッカーでは"ポジションによる適正"と"チームコンセプト・戦術による適正"のふたつの側面があります。4年連続で世界最優秀選手に選ばれたリオネル・メッシは、FCバルセロナでセンターフォワードとして史上最高選手の評価を欲しいままにしていますが、もし彼が攻撃重視のショートパスサッカーをコンセプトとしたバルセロナから、守備重視のロングボールカウンターをコンセプトとしたチームに移籍したとしたら、同じような活躍ができるのか? メッシは本当に天才なので、守備重視のチームでも活躍してしまいそうですが、そうなった場合でも現在のバルセロナのような、真ん中に位置するセンターフォワードではなく、セカンドトップやサイドアタッカーになるのではないかと想像します。守備重視かつロングカウンターチームでのセンターフォワードの役割は、ディフェンスを背負いながらボールをキープして味方の攻め上がりを待つ時間を確保する技術や、ロングボールをディフェンスと高さで競い合いヘディングでゴールを狙う技術が必要だと、一般的には言われています。

メッシは身長169cmで決して体格に恵まれているわけではありません。彼個人のフォワードとしてのスペックは変わらなくても、チームの特徴・傾向と合わなければ、活躍できるかどうかの保証はないのです。事実、メッシもチームコンセプトが違うアルゼンチン代表ではバルセロナほどの活躍ができず非難された時期もありました。

みなさんの所属しているチームが"相互補完・異質型チーム"であれば、お互いを刺激し高め合うコミュニケーションが当たり前のようにある、すばらしい環境で仕事ができている可能性がありますが、そんなチームに所属している人はとても少ないのが現実です。どちらかといえば、仮にチームに恵まれていなくても、それなりに成果を出していくことがビジネスには求められますし、逆にそういった環境で成果が出せることが示せれば、会社からも評価がされやすいのも事実。そのためにも、自分を活かしてもらうのを待つだけではなく、「相手を活かす技術」を身につけることができると強いです。

ちなみに、僕が個人的に実践している「相手を活かす技術」は、
"お互いを認め合う空気をつくる"
"相手の意見をむやみに否定しない"
のふたつです。わかりにくいかと思うので、僕の過去経験のエピソードを交えてお話したいと思います。

僕は31歳のときに、『R25』というフリーマガジンを創刊しました。コンセプトは"25歳から34歳までの男性ビジネスマンが、帰りの電車の30分で、日経新聞を知ったかぶりできる無料の週刊誌"です。電車のなかで読みやすいように、1コラムが800文字(1駅通過の2分程度で1コラムが読めるように設計)で、25個のコラムを用意しました。この25個のコラムは政治経済からスポーツ芸能ネタまで、若手ビジネスマンが必要とされる情報を網羅するよう心がけていたのですが、まさにそのコラムを選ぶためのR25式編集会議が「相手を活かす技術」の集大成だったように思います。

『R25』は創刊する前に、テスト号4冊発行したのですが、その当時の社内編集者は僕とアシスタントが1名。他は外部の編集者やライターさんの力を借りながら運営していました。外部の編集者やライターさんは、みなさん当時20代後半から30代ながらも非常に優秀な方が多くて、僕が一人ひとり『R25』のコンセプトを説明しつつ、彼らの賛同を得たことで参加してもらっていました。みなさん優秀でしたが、優秀がゆえ癖やアクも強く、そのうえ会社に属さずフリーランスで生活されている人ばかりだったので、そもそも編集会議をやること自体、あまり好きではない、もしくは向いていない集団でした。自分自身の専門分野に対してのプライドも高く、悪い時には相手を非難することも辞さない。自分の企画やネタには自信があるので、自分が信頼できない相手に適当な評価をされたくない。そんな人たちです。

また、編集者やライターさんは基本的に「面白いことで人を驚かせたい」タイプが多く、僕自身もそうなので、会議自体が同質化してしまう懸念もありました。つまり、似た者同士が面白がるようなマニアックな企画の方が、ネタとして採用されやすくなるのです。『R25』は普段活字を読まない人をターゲットにしていたので、いかに"フツーの若者"の感覚を持って企画やネタをチョイスするかが重要でした。

それを踏まえて考えたのが、以下の編集会議運営方針です。

<R25式編集会議のやり方>
①前日の夜までにネタを担当者にメールで送る
②担当者は誰のネタかわからないよう無記名にし、同一フォーマットでネタ帳を作成する
③会議開始から30分、ネタ帳を全員で熟読
④面白いと思ったネタを、自薦他薦問わず出していく
⑤ネタの内容が変わってもいいので、ネタを膨らましていく
⑥参加者の3分の2が面白がったネタを採用

司会者(僕)のルール
・知ったかぶりをしない
・話を途中でさえぎらない
・否定をしない(意見を否定したくなったら話題を変える)

ちなみに、通常の編集会議は、担当者が自分のネタの企画書を持ち込み、自分でどこが面白いのかを編集長にプレゼンする、というのが一般的です。この方法だと、会議参加者同士は"ネタを採用されるか否かを競うライバル"になってしまいます(それだからこそ、磨かれたネタが出来上がるのだ、という考え方もありますが)。

『R25』では、編集者が会議の場でライバルにならないよう、無記名にすることで「誰のネタか」ではなく「どんなネタか」に議論が集中するようにしました。そうすることで、僕も意外だったのですが、参加者は"自薦"よりも"他薦"することが圧倒的に多くなり、回を重ねるごとに「自分は書けないけど、知りたいネタ」が出てくるようになりました。つまり、会議の目的である「フツーの若者」が知りたいネタをチョイスするために、みんながそれぞれの専門分野を超えてワイワイガヤガヤしゃべりあう場になり、恐れていた編集者同士のプライドのぶつかり合いがほとんどなくなったのです。まさに「お互いを認め合う空気」が生まれたのです。

また、会議の司会者であり、かつ決裁者でもあった僕自身にも「相手の意見をみやみに否定しない」ルールを課すことで、言いたいことが言いやすい会議の雰囲気をつくっていくことができました。

編集会議というちょっと特殊な事例ではありましたが、他の会議にも応用できる要素はあると思います。あくまで、"ネタを無記名にした"ことは「お互いを認め合う空気」をつくるための手段であり、ネタを無記名にしなくても認め合う空気はつくれます。例えば、「会議の最初にアイスブレークとして、昨日あったちょっといい話をひとり30秒ずつ言い、言い終わったら必ず全員で拍手をする」とか「できるだけ結論はリーダーではなく現場の担当メンバーに言ってもらうようにする」とか。もちろん相手の意見をむやみに否定しないルールは当然継続してもらうことが前提ですが。


次回は「脳内会議をより豊かにするために」について書いてみたいと思います。

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

藤井大輔(ふじい・だいすけ)

1973年 富山県生まれ。1995年 株式会社リクルート入社。以来、編集・メディア設計職に従事し、主に『ゼクシィ』『ABROAD』『ダ・ヴィンチ』『住宅情報』『都心に住む』等に携わる。

2003年9月『R25』を立ち上げ、編集コンセプト・ネーミング・コンテンツラインナップを立案する。

2005年4月『R25』編集長に就任。2012年3月まで『R25』フリーマガジン・デジタルメディア戦略担当。

現在はシニア向け温泉予約サービス『ゆこゆこ』の経営企画室長。著書に『R25のつくりかた』(日本経済新聞出版社)。

バックナンバー