PHPスペシャル×みんなのミシマガジン

 先月の7月10日、この「みんなのミシマガジン」と『PHPスペシャル』が協同編集をした『PHPスペシャル』8月号が発刊になったことは、もうみなさまご存知でしょうか?

 このコーナー「PHPスペシャル×みんなのミシマガジン」では、どうして協同編集をすることになったのか、企画会議の様子やお披露目会のレポートまで、ふんだんにお伝えしてまいりました。

 今回は、発刊直前に京都の恵文社一乗寺店でおこなわれた、発刊記念鼎談イベントの様子をお届けします。「みんなのミシマガジン」編集長の三島、そして『PHPスペシャル』編集長の丹所千佳さん、「偶然の装丁家」こと矢萩多聞さんが「いま関西で出版をやること」について語り合いました。
 後半の今日は、スペシャルゲスト・夏葉社の島田潤一郎さんを交えてのお話です。

(構成:新谷友里、写真:新居未希)

いま、関西で出版をやるということ 三島邦弘×矢萩多聞×丹所千佳 後編

2014.08.06更新

*前半はこちら


夏葉社の島田さんを交えて編集のおはなし

三島さて、今回はスペシャルゲストがいらっしゃっています。先日発売されました『あしたから出版社』(晶文社)をお書きになられた、夏葉社の島田潤一郎さんです。

島田東京で出版社を一人でやっています、島田潤一郎です。僕は今まで編集もまったくやったことがなくって、しかももともと転職ができなくて仕事がなくて・・・ということから、この夏葉社をスタートさせました。そしてもうすぐ5年になります。

三島編集をまったくやったことのなかった島田さんが、なぜ編集者になって出版社を5年も続けておられるのかというところに、僕は色んな学びがありましたね。これぞ編集だな、こうありたいなと思いました。

島田ほんとですか! 編集をやる前は、僕は編集の仕事は技術職みたいなものなのかなと思ってたんです。でも実際に僕がやっているのは、著者さんとメールしたり、twitterリツイートしたりということで。

多聞いや、それだけではないでしょう!(笑)

島田でも、本作りの技術的な面ではほとんど、多聞さんように技術のある人がやってくれます。僕は色んな人と楽しくつき合って、いいものを書いてくださるようにする、というのが仕事なんです。だから編集の仕事をいまだにどう努力してどのようにしたらいいのかって、わからない。

三島僕の編集のスタイルは、わりと島田さんが理想に近いんです。

丹所それは三島さんがよくおっしゃる、「なにもしないことが最大の仕事」ということなのでしょうか。

三島そう。僕はこの本を読んで、50社落ちて仕事がなかった島田さんが、編集経験なしで出版社を作られたっていう転換は、自意識を手放されたことかなって勝手に思ったんです。もともと大学時代は小説家志望でおられて、大学のキャンパスのベンチでタバコを吸い、コーヒーを飲む・・・ということをされているような方だったわけですよね。

島田そう、吸ったこともなく、飲んだこともないものを(笑)。

三島もう自意識の塊じゃないですか。それをぱっと手放されて、自分のために生きるところから社会のために生きるということに切り替わられた瞬間と、出版社をつくって編集者になられた瞬間というのがリンクしているのではないかと思いました。

島田・・・その通りな気がしてきました。

三島編集というのは、「自分」が出るのはよくないなと感じているんです。編集は表現とは違うので。僕も自分の本を河出書房新社から出していますが、これ、なんでミシマ社から出さないのって言われるんですよ。

島田それは絶対無理ですよね!

三島無理です、無理です。

島田それはすごく本質的なところだと思います。自分が編集をやりたいと思った瞬間に、自分がどっち側に立つのかということですから。そこがごちゃごちゃなると誰のためのものでもないものが生まれることになりますから。


湯気が出る、生き物みたいな本

丹所逆に、ちょっと話が違うかもしれないのですが、いま思い出したことがあって。音楽評論家の吉田秀和さんが生前、新聞連載の担当者が、「読者に好評です」「読者からはこういう感想がありました」とは言っても、「自分がどう思うか」というのをなかなか聞かせてくれない、という話をされていたんです。それは私にとっては目からウロコで、たしかに編集者というのは裏方ですが、一番目の読者でもあるので、「私はこう読みました」という意見や感想をお伝えするということも抜かしてはいけないなと。

島田中川季枝子さんも、おなじことを言っておられました。本は編集者次第だと。ああそうかと思いました。でも、それがなんなのかというのがまだ僕は言語化できないんですけど。

三島僕は、生き物になるかどうかかなと思っています。形上の本というのはわりと簡単にできるんですが、それが生命力を持ったものなのかどうか。僕はそういうものを作っていきたいな、と。

多聞できたときに湯気の出ている本ってありますよね。それって、はっきり分かれてるんですよ。そしてそれは、自分ががんばっているかどうかではなく、その本に関わっている人がどれだけそれに引き込まれて作っているかじゃないかな、と思います。島田さんと三島さんの共通点は、人を好きにさせるところ。『あしたから出版社』を読んで、島田さんのこと好きになる人日本中にいるな、って思いましたよ。

三島島田さん、やったじゃないですか!

島田うん、嬉しいですけど、これは恋愛ではないですね。いや、ほんとに。

一同(笑)

多聞この本は、島田さんのことを好きな人が読んで面白いし、そうでもない人もこの本を読むと島田さんのことが好きになります。

島田そういえばこの間、すごいことがあったんですよ。3日前くらいに、事務所の1階のインターホンが鳴って、女子大生が「サインもらいにきたんです」って言うんですね。で、ものすごく忙しかったし、下心はまったくないですけど、まあ女子大生だから「どうぞ」って、ドアを開けたんです。

多聞女子大生だから!(笑)

島田そしたら50歳くらいのおじさんで!

三島えええ!?

島田「いやあ、島田さん、女子大生って言ったら開けてくれるかと思って」って言われて・・・。

多聞よく本を読み込まれて、島田さんを見抜かれている(笑)。

丹所その女子大生はオトリだったってことですか?

島田そう。言わされてたんです(笑)。

多聞いやあ、それいい話ですよ。そこまでして会いたかったわけですからね。


改めて、これから関西でやっていくということ

三島僕たちは、関西で面白いことがたくさん起こっていったらいいなと思っています。今回は出版社の垣根を超えて2社がコラボレーションをするという画期的なことが行われたわけですが、今後も関西でしかできないものをやっていきたいな、と。

多聞僕は、横浜から京都に越してきてはじめのうちは、「京都に来たら出版社に営業に回ろう!」と思っていたんです。でも、結局この2年半僕は営業を一度もしていないんですね。たまたまミシマ社や、今回はPHPの仕事をすることになって・・・というふうに広がっていきました。焦らずに目の前に差し出されたもので湯気のあがったものを作っていくしかないな、と。それを見た人が面白いことやっているなと思っていただけて、そういうのが広がっていけばいいなと思っています。

丹所京都って、人のつながりやおもしろい偶然が自然と生まれる、ちょうどいい狭さなのかもしれないですね。私は、『PHPスペシャル』という月刊誌の編集を5年ほどやってきて、そして今度から編集長になるので、自分で決めていかなくちゃならないこともどんどん増えてくる。雑誌の編集は好きだし楽しいんですけど、難しいことも多くて。ほんとに、探りながらやっていくしかないかなと思っています。そういう状況の中、京都という街は、生まれ育ったということもあるんですが、とても好きな場所ですし、心強さを感じています。

多聞これ、またPHPとミシマ社がなにかをやるということはあるんですか?

三島それはわかりませんね。どうなるんでしょうか!(笑)

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