声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第6回 チェルヌィシェフスキー

2009.12.04更新

Николай Гаврилович Чернышевский

学生時代のこと。大学の同級生が教授に、
「チェルヌィシェフスキーが好きです」
と言ったら、教授は、
「数年に一度、そういう生徒が現れるんです」
と、不思議なものでも見るような目をして言っていました。

逆に言うと、彼の代表作である小説『何をなすべきか』は、そのくらいつまらない作品らしいです。

でも、ニコライ・ガヴリーロヴィチ・チェルヌィシェフスキーは、ロシア思想史に必ず出てくる有名人。
ナロードニキ運動の創始者の一人でもあり、その後の社会主義運動にも大きな影響を与えました。
代表作『何をなすべきか』は、そんな思想の妙味がたくさん詰まった純愛小説、だそうです。

でもねー。
そもそも『何をなすべきか』というタイトルな時点で、どう考えてもつまらんでしょう、これ。
しかも著者名が「チェルヌィシェフスキー」。
おまけに「純愛小説」(笑)。

「スキー」という苗字はロシア人の典型的なものの一つですが、土地を表す語尾「スク」(ハバロフスクとか、ユジノ・サハリンスクとか)の形容詞形が「スキー」です。
確証はないのですが、その土地の領主や地主系の人が付けがちな苗字だったのではないかと。
そのためか、語尾に「スキー」とつく苗字は、比較的高い出自の人が多いような気がする。
そんな気取った感を出しつつ、発音してみてください(ちなみに、「ヌィ」の部分は、第4回でお話した「ウ」と「イ」の中間音)。

ボンボン系(勝手な推測)理想主義者の書いた「とてつもなくつまらない」純愛小説・・・・・・。
年々読みたい気持ちは強まるばかりですが、いまだ果たせず。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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