声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第7回 スタニスラフスキー

2010.01.08更新

Константин Сергеевич Станиславский

先日読んだあるマンガで、「ドフトエフスキー」という誤植を見つけてしまいました。
本を扱ったマンガで、しかもその話のタイトルだったので、余計目立ってました。
(二文字目です、念のため。ドストエフスキーです)

まぁ、編集者としてはよくわかります。
カタカナって同じような文字が多いのですよ。
特にこの「フ」系とでも言いますか、「フ」「ス」「ヌ」「ラ」などは、要注意だったりします。

さて、そんなムダな予備知識を仕入れた上で、改めて、
「スタニスラフスキー」
という文字列を眺めると、この名前の凶悪さがわかるかと思います。

コンスタンチン・セルゲーヴィチ・スタニスラフスキーは、主に帝政時代に活躍したロシアの俳優であり、演出家。
演劇界ではかなりの有名人、だそうです(私、その世界の住人じゃないもので)。

チェーホフ劇で知られるモスクワ芸術座の創設者の一人。
また、俳優の教育システムを確立させたことでも有名。
その名前のインパクトもあり、何のことかは知らなくても、スタニスラスフキー・システム(メソッド)という言葉を聞いたことのある人も多いでしょう。

もっとも、日本人が思っているほどには、ロシア人にとってこの名前は複雑ではありません。
「スタニスラフ」というのは伝統的なロシア人の名前(苗字ではなく)の一つで、それに接尾辞の「スキー」がついただけという、意外と単純な作りなのです。
もっとも、スタニスラフスキー自身は、あまり単純ではない、気難しい感じの人だったとか。
それまでは、わりと好き勝手に演じていたという俳優たちを「演出」し、教育システムまで作ってしまうような人だから、当然といえば当然かもしれません。

ちなみにこの文章のある一箇所、わざと「フ」と「ス」を入れ替えてます。気づきました?

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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