声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第9回 ツィオルコフスキー

2010.03.05更新

Константин Эдуардович Циолковский

ソ連時代というのはある意味面白い時代で、共産圏でしか通用しない「世界初」が、いろいろあったそうです。
飛行機を世界で最初に発明したのはライト兄弟ではなくロシア人の誰それ、電話やレコードを発明したのもロシア人の誰それ、といったことが大真面目に教えられていたとか。
ソ連で学生時代をすごした私の大学の恩師は、初めて日本に来たとき、「ライト兄弟って誰? エジソンって誰?」って感じだったそうです。

ソ連崩壊とともに、そんな「ソ連的には世界初!」な人々の権威もガラガラと崩壊してしまったのですが、もちろん、本当に世界初の人は残ります。
そんな一人が、「ロケットの父」「宇宙旅行の父」などと呼ばれるコンスタンチン・エドゥアルドヴィチ・ツィオルコフスキーです。

彼自身は帝政時代の人なので、正確には「宇宙ロケットの理論を作った人」という位置づけです。
我々がよく見る、何機ものエンジンが同時にボワーっとなり、途中でパッと切り離されて先っぽだけが飛んでいく、というあの「いかにもなロケット」の理論を作ったのが、彼なわけです。
(文系人間が書いている手前、非科学的な言葉が多用されていることをお詫びします)

もっとも当時は、それほど注目されることのない地味な一研究者でした。
それがロシア革命が起き、ソ連が誕生すると一転、評価が高まる。
ロケット技術は軍事転用が容易にできる、という背景も、もちろんあったでしょう。

実際に宇宙ロケットを完成させたのは、ロシアではコロリョフ、アメリカではブラウン(ドイツ人)という人物。本当の意味では、彼らこそ「ロケットの父」と言うべきなのかもしれません。
ですが、「ツィオルコフスキー」という複雑な名前と、コロリョフ、ブラウンとでは、明らかに名前負けでしょう。

どっちが勝ってどっちが負けているのかは、よくわかりませんが。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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