声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第17回 ダルゴムィシスキー

2010.12.03更新

Александр Сергеевич Даргомыжский

字面的に「ダンゴムシ」を思い出すこのユニークかつ泥臭い名前の持ち主は、19世紀帝政期の作曲家。
「ムィ」にアクセントがつき、そのあとの「シ」は「sh」の音。
発音のしにくさはかなりのレベルです。

はっきり言ってロシア以外ではほぼ無名の人物ですが、酔狂にも大学で「ロシア文化史」などの授業を受けると、「グリンカなどとともにロシア音楽のさきがけとしてうんぬん」みたいに出てくる方です。

ただ、グリンカの曲は今でもよく演奏されるのに対して、ダルゴムィシスキーの曲はいまやほとんど演奏されず。
教科書には出てくるけど作品は聞いたことがない、という意味では、日本文学で言うところの尾崎紅葉的ポジションと言えるのかもしれません。

そして、ダルゴムィシスキーにとっての『金色夜叉』的ポジションにあるのが、オペラ「石の客」。彼の最後の作品で、実は未完に終わり、友人のリムスキー・コルサコフなどが完成させました。

原作はロシアの文豪プーシキン。タイトルからは想像できませんが、要は「ドンファン」、イタリア語で「ドン・ジョヴァンニ」の話。
つまりあのモーツァルトと同じ題材でオペラをつくったわけです、この人は。

最初はアマチュア音楽家として認められ、その後もわりと穏やかな人生を送った彼にとって、生涯最後のちょっとした冒険だったのかな、という気もしないでもありません。
まぁそれすら、いまではあんまり演奏されないのですが・・・。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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