声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第24回 ストラヴィンスキー

2011.07.08更新

И́горь Фёдорович Страви́нский

前回、「バレエ・リュス」を紹介したことで思いました。
以前、「かっこいい名前といったらソルジェニーツィン」と書きましたが、ひとり、肝心なロシア人を忘れていたことを・・・・・・。

イーゴリ・ストラヴィンスキー。

疾走感があって素晴らしい名前です。
「春の祭典」「ペトルーシュカ」などのバレエ音楽で、20世紀音楽の幕を開いた人物として有名な作曲家です。

NHKスペシャルに「映像の世紀」という名作番組があり、しょっちゅう再放送されて知っている人も多いかと思うのですが、このオープニングでは、加古隆の渋い音楽にあわせて20世紀の重大事件や人名が現われては消える、というものになっています。

ここで、「ヒトラー」とか「冷戦」とかの合間に、画面を横切るように馬鹿でかく「ス・ト・ラ・ビ・ン・ス・キ・ー」という文字が現れるのですが、これは笑えます。
一見の価値あり。
完全にネタ扱いです、彼の名前。

「バレエ・リュス」において、彼の「春の祭典」が初演されたとき、あまりの斬新さに演奏中にもかかわらず観客同士が怒鳴りあいのケンカを始めたほどだといいます。
それをもって成功というか失敗というかはよくわかりませんが、彼の名声を高めたことは確かでしょう。

ストラヴィンスキーは長生きしました。亡くなったのは1971年。
ですが、1910年代初頭に相次いで発表された俗に言う3大バレエ(「春の祭典」「火の鳥」「ペトルーシュカ」)以外は、今ではあまり演奏されることもなくなってしまっています。
他の作曲家が徐々に円熟の境地に達し、傑作を生み出していくのとは対照的。

まぁそんなところも、ストラヴィンスキーというスピード感ある名前に似合ってていいのかな、とか思わなくもないです。
こんなに長いのに3音節(「stra」「vin」「skii」)です。
つまり、「ヤマダ」「タワシ」とかと音節数は一緒なわけです。
そのくらいの勢いで、一気に発音してみてください。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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