声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第30回 カラマーゾフ その2

2012.01.13更新

Братья Карамазовы

「カラマーゾフ」という名前について、前回書ききれなかった話題をひとつ。

暗喩好きのドストエフスキー先生だけに、この名前も意味深です。具体的には「黒く塗る」という意味になります。
まぁ素直に捉えれば、いろいろ問題を引き起こすカラマーゾフ家の暗黒面を意味している、ということなのでしょう。
多くの学者が様々な説を唱えていますので、ここではちょっと違ったお話を。

「カラ(黒)」というのは、明らかに中央アジアから入ってきたと思われる語です。
モンゴル語でもトルコ語でも黒は「カラ」。
モンゴルのカラホト遺跡の中国語名は「黒水城」だし、黒海はトルコ語で「カラ・デニズ」です。

かつて、トルコ語やモンゴル語といったアルタイ諸語と日本語は同じルーツだ、という説がまことしやかにささやかれていた頃、この言葉がよく注目されました。
カラ(kara)とクロ(kuro)って、そっくりじゃないか、と。

今はこの説は否定されている、というか、「検証のしようがない」ということになっています。
でも、ひょっとしたら日本語と「カラマーゾフ」が、こんな感じでつながっているとしたら、ちょっと面白いですよね。

ところで以前、『カラマーゾフの兄弟』の登場人物のスメルジャコフのことを意訳して「臭い子太郎」とした翻訳者がいたということを書きましたが、彼がこのことを知っていたらひょっとして「黒マーゾフ」とかつけていたかもしれません。
『黒マーゾフの兄弟』・・・マフィア小説、って感じです。ちょっと面白そうかも。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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