声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第31回 セルゲイ・ラフマニノフ

2012.02.17更新

Сергей Васильевич Рахманинов

ロシアの作曲家・ピアニストであるラフマニノフの曲が、なんか意外と若い女性なんかに人気らしいです。
特にピアノ協奏曲2番、3番あたりは、聞いたら「ああ、あれか」というほど、しばしば耳にしているはずです。

このラフマニノフさん、19世紀末の帝政時代に生まれ、作曲家として活動を開始するも、なんかいろんな人に曲を批判されて自信喪失に陥り、精神科医の助けを借りてなんとか自信を取り戻したという繊細な方です。
まぁ、晩年のトルストイにも批判とかされたというから、無理もないかもしれません。
今で言えば石原慎太郎に批判されるようなもの。あれ、じゃあ大したことないか?

革命後亡命し、一オクターブ半まで広がるというばかでかい手を駆使してピアニストとして活躍するも、作曲家としてはやっぱり評価されず、「過剰に装飾的」みたいに言われたりしたそうです。
生前の彼はあくまで、亡命先のアメリカではピアニストでした。

もっともその過剰なまでの装飾というか、ロマンチシズムみたいなものが、ある意味今風なのかもしれません。
そんなあたりがナウでヤングなモダンガールたちの心をつかんだりしてるんでしょう、多分。

それはともかく、この連載の趣旨である「言いにくさ」の点から見たとき、特筆すべきはやはり、この字面の読みづらさでしょう。
発音もさることながら、同じようなカタカナが続くことが問題でしょう。どれもこれも「フ」っぽいのですよ、見た目が。
ラフニマノフ
ラフマノニフ
なんて書いてあっても、すぐには間違いに気づかないでしょう。
ラフフノフフ
とかあっても、疲れていたら普通にスルーしてしまいそうです。

ちなみにラフマーニーとは「陽気な」という意味とともに「不器用な」という意味もあるようです。
あまり陽気でもなかったし、ピアニスト的にはむしろ器用な人でしたが、生き方はわりと不器用な人だったようです。

1943年、亡命先のアメリカで死去。ロシアに埋葬してほしいと言っていたそうですが、かないませんでした。
ちなみに私は彼のピアノ協奏曲を聞くと、ロシアの森を思い出します。
ロシア好きが聞くと、やっぱりあれは紛れもなく、ロシアっぽい曲です。
帰りたかったんだろうなぁ。

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

KYOTO的
マックスコーヒー

バックナンバー