声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第33回 ウラジーミル・プーチン

2012.04.13更新

Владимир Владимирович Путин

2008年、法律で定められた最長任期である8年を終え、プーチンがロシア大統領の座を後任のメドヴェージェフに譲った際、こんなジョークが流行ったそうです。
「あれだけ権力のあるプーチンなんだから、法律を改正してあと4年くらい任期を延ばすこともできたはず。なぜそうしなかったのか」
「いったん引っ込んでまた出れば、もう8年大統領ができるから」

でまぁ、「んなアホな」「はっはっは」となるわけですが、この2012年3月、再び大統領選を勝ち抜き、そのまさかをやってのけた漢(おとこ)・プーチン。
なんかもう、どこまでネタで、どこまで本気なんだかわかりません。
プーチンも、ロシアという国も。

2000年の大統領就任時、プーチンはそれまでほとんど知られておらず、さらにKGB(ソ連時代の諜報機関)出身だということもあり、その「怪しさ」が強調されました。
その最たるものが、帝政末期に暗躍した「怪僧ラスプーチン」の子孫というもの。
確かに名前は似ているし、プーチンの出身地が、帝政ロシアの首都サンクトペテルブルグということもあり、変な信憑性がありました。
「子孫は名前を変え、密かに生き延びていたのだ」
というような話なのですが、
「だったら『ラス』を取るだけじゃなく、もっと根本的に変えろよ」
と突っ込みたくもなります。

ラスプーチンという名前は、ロシア語のラスプターチ、「ほどける」「解き放つ」という語を元にしており、転じて「放蕩者」という意味にもなるようです。ロシアではわりと、一般的な名前。
一方、プーチンの由来は「プーチ」(道)という話もありますが、私はどこかで「プータ」なる鳥に由来していると聞いたことがあります。怪僧ラスプーチンの子孫かはともかく、本当に「ラス」を取って「プーチン」としたのだ、という説もあります。
まぁ、そんなところも彼のミステリアス度を高めている、ということで。

ともあれ、柔道をこよなく愛する親日家でありながら、冗談みたいなやり方で大統領に返り咲いてしまう。そんなよくわからない大統領を持つのが、わが隣国ロシアなわけです。
「ロシアは頭ではわからない」(ロシアの詩人・チュッチェフの言葉)

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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