声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第34回 ドミトリー・メドヴェージェフ

2012.05.18更新

Дмитрий Анатольевич Медведев

ある意味「プーチン大統領返り咲き」の立役者になったのが、ゲンナージー・メドヴェージェフ。ロシア第3代大統領です。

それにしても彼、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンと続く「濃い」ロシアの指導者と比べ、どうも影が薄いのは否めません。
それというのも元々、プーチンに後継者として選ばれたとはいえ、そのプーチンが「首相」という地位に留まり、一緒に政治を見る、という立場だったからです。
俗に言う「双頭体制」ですが、結局プーチンの傀儡でしょ、となるのは必定。
まるで平安時代の院政です。お前は後白河法皇か。

そんなメドヴェージェフですが、その大統領最後の年である2011年になってから急に、プーチンとの対立姿勢を取り始めたと話題になりました。
プーチンとあえて反対のことを言ったり、公衆の面前でプーチン批判をしてみたり。そして今回の大統領選挙にも最初は立候補の姿勢を見せていたのですが、その後取りやめてプーチン支持に。
うーん、ここまでくると逆に、なんかプーチン返り咲きを演出するための仕組まれた反逆シナリオだったのかなぁ、とも。

あんまり影が薄いので、ひたすら彼の名前の話だけしようかと思います。
この名前の語源である「メドヴェーチ」とは、「熊」です。
「メド(ミョート)」はハチミツ、「ハチミツを食べるやつ」という意味になります。

日本でも熊は畏怖される存在ですが、森林が多くあちこちを熊が徘徊しているロシアでは、さらに恐るべき存在だったようです。
元々ロシア語には「熊」に当たるオリジナルの語があったのですが、あんまり怖いのでみんな、それを口に出すのをはばかって、
「ほらあの、ハチミツを食ってるやつさ」
みたいに言っていたら、いつのまにか元の言葉が忘れ去られて、「ハチミツを食べるやつ」というのが正式名称になってしまった、とのことです。
なんかその辺の「忌み言葉」の発想とか、日本語と似ているなぁ。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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