声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第36回 リムスキー=コルサコフ

2012.07.20更新

Николай Андреевич Римский-Корсаков

帝政時代のロシアの作曲家、リムスキー=コルサコフ。
クラシック初心者に受けがいい「シェヘラザード」などの曲で有名なので、わりと名前を知っている人は多いはずです。

でも、多くの人が間違っているのが、「リムスキー」も「コルサコフ」も苗字だということ。
コルサコフ家のリムスキーさんじゃありません。
フルネームはニコライ・アンドレーヴィチ・リムスキー=コルサコフ。
クラシックの初心者受けが悪いであろう、長ったらしい名前です。

1844年にサンクトペテルブルクの近くのチフヴィンというところで生まれ、軍人であった父親の影響で一度は海軍に入るも、好きだった音楽が忘れられず、海軍を辞めて音楽の道に。
作曲家としても活躍したのですが、どちらかというと私には「ペテルブルグ音楽院の教授」という印象が強いです。

ペテルブルグ音楽院はロシア最高峰の名門音楽学校。ストラヴィンスキーやらスクリャービンやら、結構有名な作曲家の伝記に、先生としてしばしば名前が出てくるのですよ。
また、友人であり、早世したムソルグスキーの未完の作品を完成させたりしたことでも有名。名脇役、といった風情の人物で、ロシアの地井武男と呼ばれているそうです。

私もこの人に教わったことがあります。「ロシア語の厳しさ」です。
ロシア語は語尾変化で「○○の」という所有を表すことができ、通常は「a」を語尾につけるのですが、こうしたダブルネームの人にはいちいち両方につけます。

つまり、「リムスキー=コルサコヴァ」ではなく、「リムスカヴァ=コルサコヴァ」になるということ(ちょっと不規則変化が入ります)。
これがロシア語初級の教科書にいきなり出てきて、「ああ、こんなややこしい言葉覚えるのやだなぁ」と思ったものでした。
もっとも、いまだに続けているのは、最初に厳しくしてくれたおかげかも。
ありがとう先生。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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