声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第42回 スターリン

2013.01.18更新

Иосиф Виссарионович Сталин

以前、ロシア人の教師が授業で、
「とりあえず、ロシア人の名前を何でもいいから挙げてみて」
と言ったのに対し、空気を読まないことで名高かった同級生T君が真っ先に、
「スターリン!」
といったときの、先生の苦虫を噛み潰したような顔が忘れられません。
自重しろT君。

まぁ、ことほど左様にヨシフ・スターリンという名前は、ロシア人に複雑な思いを抱かせるようです。

あと、T君はもうひとつ間違いを犯していました。
それは、「スターリンはロシア人ではない」こと。
本名はジュガシヴィリといって、コーカサス地方にあるグルジア出身のバリバリのグルジア人。
そうしてみれば、確かにロシア人とは違う顔立ちでもあります。

実はスターリンというのはペンネームというか、「革命ネーム」なのです。
ちなみにレーニンもトロツキーも革命ネーム。
ちょっとした集団中二病だったんでしょう。

レーニン亡き後のソ連で恐怖政治を敷き、大粛清を行い、第2次大戦で多大な犠牲を出しながらもなんとかドイツに勝ち、死後、批判にさらされることになるスターリンの人生を振り返る紙幅(ネット幅?)はありません。
ということで、あくまで名前だけですが、語源の「スターラ」は「鉄」。
つまり、鉄の人だからスターリン。
まさにその言葉がふさわしい、強固なまでに冷徹な人物でした。

ただ、私は以前、スターリンが若い頃に奥さんを亡くしたときに撮られた、憔悴しきったような写真のことが忘れられません(『スターリン秘録』などに載ってます)。
実際、その頃からスターリンは冷徹になった、という説もあるようです。
独裁者は別に、最初から独裁者であったわけでもないのでしょう。

ともあれ、「声に出して読みづらいロシア人」というこの連載ですが、発音というのとは別の意味で、「読みづらい」人もいるわけです。
あまりロシア人の前で口にしないほうがいいです。多分、今でも。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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