声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

第43回 トゥハチェフスキー

2013.02.15更新

Михаил Николаевич Тухачевский

前回取り上げたスターリンの粛清を象徴する人物がいます。
ミハイル・トゥハチェフスキー元帥。
「トゥハ」という音並びの発音のしにくさがロシア人っぽくて、お気に入りの名前のひとつです。

日本ではあまり知られていませんが、すごい偉い人で、すごいかっこいい人です。
革命後の内戦で大活躍し、ソ連邦の最初の五人の元帥のひとりに選ばれ、なかでも最高の英雄とされていた人です。
以前紹介した馬フェチのブジョンヌィ元帥と違い、近代戦に強く、特にソ連軍の空挺部隊の基礎を作り上げるなど多大な貢献がありました。
そのあだ名は「赤いナポレオン」。
そういえば、なんとなく顔がナポレオンに似ています。ぜひググッてみてください。

ただまぁ、時代が悪いと言うか、そんな人をスターリンが野放しにするわけがありません。
ヴォルガ地方の辺鄙な連隊に飛ばされます。

それに目をつけたのがドイツ。
あのやっかいなトゥハチェフスキーを排除してやれと、わざと「トゥハチェフスキーはスパイだ」みたいな文書を流します。
そしてそれを口実に、というか、元々粛清する気満々だったスターリンは、彼を秘密裁判にかけ、無実の罪で処刑するのです。
ちなみに秘密裁判でスターリンの前に立たされたトゥハチェフスキーは、臆することなくスターリンを批判したそうです。

そして、ついに独ソ戦が始まりますが、トゥハチェフスキーをはじめとした優秀な将官を軒並み粛清していたスターリンのソ連はいきなり大ピンチに。
内陸部であるヴォルガ地方まで一気に侵攻されます。

そんなとき大いに活躍したのが、実はトゥハチェフスキーがヴォルガにいた頃に鍛え上げた連隊だったそうです。
まさに、「死せる孔明、生ける仲達を走らす」を地でいったわけですね。

そんなところも含め、非常にかっこいいのですが、トゥハチェフスキーの「トゥハ」が、ため息のように感じられるような人生でもありました。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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