声に出して読みづらいロシア人

主旨

「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。

最終回 ドストエフスキー

2013.03.25更新

Фёдор Михайлович Достоевский

最近なんだか、ドストエフスキーがやけに身近になっている気がします。
亀山郁夫氏による新訳、村上春樹氏のドストエフスキー評、東大教授が学生に読ませたい本第一位・・・挙句、『カラマーゾフの兄弟』が設定を日本に変えてドラマ化される始末です(ちなみに、あのドラマの暴走っぷりは一見の価値があります)。

学生時代、ドストエフスキーの小説はその重々しい名前と、なんの飾り気もない『罪と罰』などというタイトルで、なかなか手出しできない孤高の存在でした。
それがずいぶんと親しみやすくなったのは嬉しいこと、なのですが・・・。

先日、本のことを扱ったあるマンガで、ドストエフスキーの小説を取り上げた話が出てきました。
おお、ここにもドストエフスキーが、と感心して読もうとしたら、トビラページのタイトルに思い切り「ドフトエフスキー」という誤植が(2文字目です、念のため)。
おいおい、と思いつつ、そこでふと思ったわけです。
むしろこれこそ、ロシア人の名前のあるべき扱われ方ではないか、と。

読みにくさ、書きにくさこそ、ロシア人の名前のあるべき姿ではないかと。
言い間違えられてこそ、書き間違えられてこそ、ロシア人の名前ではないかと。

異文化への興味は、「なんでこんなに違うんだ!」というところから始まるのかもしれません。
そう考えれば、名前や地名だけで「なんだこりゃ」と思わせることのできるロシアは、なかなか魅力的な国だと言えるのではないでしょうか。
ま、ロシア人は別に「なんだこりゃ」とも思ってないわけですが。

ぜひ、その長ったらしく読みにくい名前に戸惑ったり、苦笑したりしながら、ロシアの小説や歴史書などを読んでみてください。
人名だけでなく、「スコトプリゴーニエフスク」(『カラマーゾフの兄弟』の舞台)なんていうステキな地名も満載です。
ちなみにこれはさすがにロシア人的にも長すぎるらしく、ドストエフスキー自身が「冗談みたいな町の名前」みたいに言ってますが・・・。

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松 樟太郎(まつ・くすたろう)

「四面楚歌」をモットーとする編集者。
1975年、ザ・ピーナッツ解散と同じ年に生まれる。某大学ロシア語科を出るも、その後は特にロシアとは縁のない仕事と日常を送る。そのためロシアに関する知識が間違ってたらすいません。そろばん3級。
KYOTO的では、「マックスコーヒー1人旅Y」を連載。全国のファンに惜しまれつつ最終号を迎えた。

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