仕掛け屋だより

第5回 三つの約束

2009.11.17更新

もう雪のニュースが舞い込む季節です。しかし考えてみれば、いままでが暖かすぎで、気がつけば11月なのですね。寒い毎日、みなまさいかがおすごしですか?

仕掛け屋だより

読者の方に会いに行く企画、このたびのお客様は、千葉県にお住まいのKさん、30代男性です。
Kさんは『謎の会社、世界を変える。~エニグモの挑戦』の読者さま。
まいど待ち合わせは、お互い姿かたちを知らないでお会いするので、なかなかドキドキします。
Kさんの目印はグレーの帽子。
わたしはオレンジのマフラーでした。
待ち合わせ場所はKさん指定の千葉にある小さな喫茶店。
入り口で扉がカランコロンと鳴ったりする、むかし懐かしい雰囲気のお店です。

店内に入ると、グレーの帽子をかぶった男性が奥の席の窓側に座っておられます。
「こんにちは、Kさんですか」
「・・・・・・違います」
え?
うそーん。
くうっ! 人違い!! 顔面蒼白でお詫びしていると、後ろから
「木村さんですか? ぼくは、こっちです(笑)」
いきなり恥ずかしい思いをして、ふらふらになりながら後ろを振り向くと、背の高い男性が、笑いを噛みころして立っておられます。
「いや、少し遅れて入ったら、オレンジのマフラーの人がぼくでない方に話かけていたので(笑)」
「は、はは。いやはや、これはこれはお恥ずかしいところを。はは」(→立ち直れていない)

こんなふうに、いきなり心かき乱されて始まったKさんとのお話でしたが、この後は心あたたまる静かなお話です。

Kさんは山形県のご出身で、大学生のときに上京。
今は千葉に、奥さまと息子さんとお住まいで、お仕事は「ごくごく普通のサラリーマンです」とのこと。
ある時、本屋でなんとなく手にとったのが、『謎の会社、世界を変える。~エニグモの挑戦』だったそうです。

「本は好きで通勤時間も長いので、二日で一冊くらいは読みます。買うのはほとんど文庫本です。図書館も時々。でも図書館は休みの日に子どもと行くことが多く、自分の読みたい本を選ぶのは、仕事の合間に行く本屋なんかがいちばんいいんですよ。エニグモの本は、会社近くにある本屋で、ビジネス関係の本が並んでいるところに置いてあって、この本が周りの本の様子と、あきらかに違ったので目にとまりました」

基本的に文庫本を買うというKさんですが、この本は最初の1ページ目から「期待させられた」のでそのままレジへ。

「これは本当にいい本ですよね。ぼくはいいときに、いいとしか言えないところがあるんですが、とにかくいい本だと思ったので、線を引いて何度か読みましたし、職場の人や、取引先の人にもお薦めしました」

本を読んで、後ろ盾などなく、裸の心で頑張る人の大切さというのをひしひしと感じられたのだとか。
そしてKさんは、覚えているけれど振り返ってこなかった、昔お父様と交わした約束と、真剣に向き合ったそうです。

Kさんはこどものころ、ご家族とよくハイキングへ行かれたそうです。
お忙しかったお父様は、ゆっくり話せるそういった機会の度に、三つの約束を繰り返し一人っ子のKさんに言い聞かせたといいます。
「素直でいること」
「謙虚でいること」
そして、
「挑戦し続けること」

「素直と謙虚は、どちらかというと身に沁みやすい性格だったのですが、どうもぼくは挑戦が苦手で。争いごとが嫌いで、挑戦=他人との競争というふうに捉えがちだったんです」

おとなになるにつれて、挑戦とは自分との対話だと感じるようにはなったそうですが、どうも日々の生活に流されがち。

「いつのまにか、家族と共に力をあわせて生きるぼく、という何となく頑張っている状態に満足していくようになっていました。それが嬉しいと思うことでしたし。でも、ぼく自身の仕事へのモチベーションや、生きていく上での男の熱さみたいなものが、この本を読んで湧き出てきたんです」

男の熱さとは? と聞いたわたしに、Kさんは迷わずにこうお答えになりました。

「守るものがあるからこそ、前に進む力、変わっていく力、といったところでしょうか」

「あれ・・・・・・かっこよすぎました?(笑)。男はこういうことを、ときどき真剣に考えるときというのが訪れるんだとでも思っていただければ」

守るものがあるからこそ前へ。
本の中のエニグモという会社の方々も、まさにそうして、恐れず前へ、という心を持った熱い方々。
強くならなければ湧いてこない熱い気持ち。
Kさんは、激しいものではないけれど、自分と対話し、挑戦していく心を静かに言葉にしておられて、こちらの気持ちも晴れ渡っていくようでした。

仕掛け屋だより

喫茶店で、コーヒー三杯とスイートポテト一つぶんお話させていただいたのですが、この後は息子さんと遊びに公園へ行く約束だそうで、きっとお父様からの三つの約束は、息子さんにも継がれていくのだろうなと思いました。
続いていく約束の片隅に、本の存在があるのは、とても嬉しいと思いながらKさんとお別れしました。

読者葉書が届いてそのお客様にお会いしに行くと、さまざまな人生と出逢うことができ、毎回力をいただきます。
Kさん、ありがとうございました!

ちなみに・・・・・・Kさんに、装丁も印象的と言っていただいたこの本、『謎の会社、世界を変える。~エニグモの挑戦』ですが、スープデザインの尾原さんという方がデザインしてくださいました。
メインタイトルの字体が手書き風なこと、本体にも内容とリンクしたデザインがほどこされており、読者葉書の中でも装丁もお褒めいただくことが多く、嬉しいかぎりです。

ガッカリ通信
喫茶店で、まちがえて声をかけてしまった方、ほんとうに申し訳ありませんでした!


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