仕掛け屋だより

第9回 季節の自由が丘だより(味よし)

2010.04.13更新

第3回 「味よし」店主 藤田純一さん

第9回仕掛け屋だより味よしさん

自由が丘の素敵なお店をご紹介する「季節の自由が丘」。
今回は40年もの歴史あるお惣菜屋「味よし」さんです。
こちらのお弁当は、とっても美味しいのに500円とお得なお値段。
お話を伺ったこの日も、ミシマ社でおいしくお弁当をいただきました。

こちらの3代目、藤田純一さんにお話を伺ってきました。

「味よし」、名前の由来は

第9回仕掛け屋だより味よしさん

―― いつも美味しいお弁当ありがとうございます。

藤田いえいえ、こちらこそ。

―― 「味よし」さんて、味がいいから「味よし」という名前をつけたんですか?

藤田よく言われるのですが、違うんですよ。創業者である祖父のお母さん、つまりわたしのひいおばあちゃんの名前が「よし」だったんです。祖父のおふくろ(よし)の味、といったところでしょうか。そこから「味よし」になったんです。

―― 由来は、ひいおばあさまのお名前だったとは。「味よし」さんは2009年に内装を全面リニューアルされましたよね。以前は昔ながらのお店、という雰囲気でしたが、今はとてもスタイリッシュ、かつ温かみのある内装ですよね。

藤田実は妻の妹が空間デザイナーなのでお願いしたんです。なかなかいい雰囲気ですよね。お客様の層が広がりました。

―― おじいさまが始められたお店なんですね。

藤田わたしが3代目でしてね。もともとは都立大でお店を持っていたのですが、おしゃれな街、自由が丘にお店を持ちたい、ということで移動してきたみたいです。

―― 創業40年、ということは40年前から自由が丘は「おしゃれな町」だったんですね。

第9回仕掛け屋だより味よしさん

藤田みたいですよ。その頃のひかり街や自由が丘デパートは、遠方からのお客様も多いトレンディスポットだったらしいです。今は、古き良き自由が丘のたたずまいですね。

―― なるほど。藤田さんは、自由が丘の近くにお住まいですか?

藤田えぇ。小学校も中学校も、全部この辺です。店は、小さいころから手伝ってましたよ。包丁の使い方とか、普段の生活の中で、見て覚えましたね。

店を継ぐために選んだ道

―― 小さいころから「店を継ぐんだ」という意識があったのですか?

藤田そうですね。別に親父から頼まれたわけでもなく、自然とそう思っていました。なので大学では経営学を学び、卒論も「米の問題」とか、そういうテーマで書いた気がします。就職は昭和産業株式会社に入りました。

―― 食品関係の会社ですか?

藤田日本で唯一、製粉、油脂、ぶどう糖など様々な食品素材を扱う総合食品メーカーです。「昭和の天ぷら粉」などの家庭用食品で有名ですが、多くは有名食品メーカーに食材を提供しています。

スーパーなどでよく目にする、マヨネーズやマーガリン、パンや麺、ビールや清涼飲料メーカーに卸していて、食材の流れが見えて勉強になりました。卒業してすぐお店を継いでいたら知ることができなかった世界なので、一度会社に勤めたのは本当にいい経験だったと思っています。

第9回仕掛け屋だより味よしさん

―― なるほど、お店を継ぐためにあえてその会社を選んだのですね。

藤田川上から食品の流れを知りたかったので。そこで営業を3年間、一生懸命やって、辞めました。

―― 辞めるきっかけは、何でした?

藤田会社に入ったとき、先輩に聞いたんです。「この仕事は、何年くらいしたらわかるか」と。そしたら先輩は「覚えることがいっぱいだけど、3年したらわかる。その後また大きな変化があるのは課長になったときだ」と言ったんです。その言葉を真に受けまして、3年間はみっちりやろうと。で、3年して確かにわかった気がしたので辞めました。課長になるまでは待てなかったので(笑)。

―― 目標に向かってまっしぐらですね。そしてお店を継がれたんですね。

藤田一部上場の大企業に勤めていたので、知識もたくさんついたぞ、と意気込んでいたのですが、最初から作れるわけないので、お店では当然下っ端から。知らないことがまだたくさんあって、自分は井の中の蛙だったのだと気づく日々でしたね。悲しいな、と思う反面、今に見てろ、とも思ってました。

変わらないことのほうが大変

―― 自分の代になってからも、意識して継いだ先代の考え方や方針などはありました?

藤田基本の味つけは、先代から変えていません。そこは一番守っていきたいと思っています。毎日約40~50種類のおかずを作って、だいたい200~250人くらいのお客さんに来ていただいて、毎日売り切れるんです。同じメニューを、同じ味で、変わらず作り続けること。これが大切だと思いますし、それが、うちに対するお客様のニーズであると感じます。やり続けることで、やっと価値って生まれると思うんです。しょっちゅう変えると、足腰が弱くなる。「変えないまま、いかに強くなるか」というのを考えた結果が、この方向だったんです。

―― 原点回帰ですね。

藤田それと、やっぱり食べ物は素材で勝負したいですよね。よりおいしいトマト、より元気な小松菜を使う、といった素材そのものの味をもっと追求したいです。そして食材にこだわろうと、去年から産直の野菜を使い始めたんです。

直接繋げたい

―― どちらから仕入れるのですか?

藤田旬の野菜は加藤農園という、等々力にある農園から届けてもらっています。朝8時に泥つきの大根や水菜、小松菜が届いて、それを調理します。やっぱり全然違いますよね。手にしたとき、生命力がみなぎる思いがします。

―― そんなに新鮮なお野菜を使ったおかずだったんですね。なんて贅沢なお弁当をいただいていたのでしょう・・・。

藤田・・・実はその農園を経営しているのが、ぼくに「ここの仕事は3年でわかる」と言った元上司なんです。

―― えっ?! そうなんですか? すごい繋がりですね。

藤田その方は実家が農家だったんです。2年前に会社を辞めて実家の農業継いだ、というハガキが届きましてね。それで去年20年ぶりくらいに再会して、一緒にやろう、と。ちょうど彼の家も等々力の近くにあって、ここから近いんです。

第9回仕掛け屋だより味よしさん

―― 偶然ですね。

藤田信頼できる人が作る野菜なので、安心して食べられますよね。信用できる農家って、そんなすぐ見つけられるものではないので。この前彼と飲んだ日の夜、雪が降ったときがあったんです。そのとき彼は、せっかく作った野菜がダメになっちゃわないようにと、夜中2時まで一人で除雪作業をしていたようなんです。

―― 命と向き合っている仕事は、24時間気が抜けないですよね。

藤田そんな愛情いっぱいで育った食材を、丁寧に料理してお客様に届けたいですね。ほんとうにおいしい野菜なんです。小松菜なんか、甘くて柔らかいし。普通のスーパーにも1年中あるんですけど「この時期の小松菜」という旬のものを、ぜひ食べてほしいです。

どこの誰が作ったかわからない野菜を、誰かが作って、食べる。といった「ブツブツ切れた作業」としてではなくて、生産者と料理人と消費者の距離を縮め、お客様に安心して召し上がっていただきたいと思います。今から夏に向けて、茄子やきゅうりやトマトも入れてもらう予定なのですが、もう、今から楽しみなんです。加藤さんの野菜を仕入れられているのは、幸せだなぁと思いますね。

―― 旬の野菜って、とてもおいしそうですね。

藤田旬の食材を旬の時期に食べると、食物の栄養を最大限に摂取することができるし、なによりおいしい。野菜に限らず、なるべく美味しいものをと、米はおいしい新潟のコシヒカリを使ってますし、魚や貝、肉も厳選したものを使っています。揚げ物は昼の時間に合せて、なるべく揚げたてのものをお届けできるように心がけています。

―― 加藤さんと、これからもいろんなことができそうですね。

藤田そう、例えば体験農園とかね。お客さんに植えてもらって、それをお客さんに採ってもらって料理するとか。

―― ミシマガと組みますか。

藤田おもしろいかもね。そういったことができたら、食べ物が身近になると思うんです。食育にもなりますね。もっと、直接繋げてみたいです。だって、そのほうがわかりやすいじゃないですか。

―― そういえば、お店にいらっしゃるのはみなさんご家族の方ですか?

第9回仕掛け屋だより味よしさん

藤田いや、母以外はパートで来てもらってます。もっと人数が増えると助かるのですが・・・。朝10:00~19:00までで時給900円。・・・ここで募集していいですか?

―― 集まりますかね(笑)。・・・・お休み、取れてますか?

藤田ないですね。子どもが3人いるのですが、一緒にいられる時間がもっとほしいですね。

―― ゆくゆくはお子さんにお店を継いでほしい、といった思いはありますか?

藤田まったくないです。ぼくも親父から一回も「やれ」なんて言われたことないですし。本人がやる気にならないとね。まだ小さいし、これからだと思います。

―― 最後に、味よしさんのオススメメニューを教えていただいて良いですか?

第9回仕掛け屋だより味よしさん

藤田じゃが芋のそぼろ煮、ザーサイ炒め、チャーシュー、カボチャ煮、などですね。うちは煮物が得意なので、年末のお節料理は、お客様にたくさん注文いただくので忙しいですね。お祭りのときも人が増えて、すごい売れますよ。

―― ちなみに自由が丘でよく行かれるお店はありますか?

藤田ありますよ。「深海の夢」という和食創作料理のお店があるのですが、ここも加藤さんの野菜を仕入れていて新鮮でおいしいですよ。あと、料理する者として勉強になるんです。根菜の根っこや、ネギの端とか、ふつう切り落としてしまう部分を捨てずに利用し、最後までぜんぶ美味しく食べさせてくれるんです。野菜への愛情をもっている方が作っているので、加藤さんも大喜びしてました。玄人好みの、いいお店です。ラーメンなどもおいしいですよ。ぜひ一度、行ってみてください。

―― 行ってみます! 今日はお忙しい中、お話お聞かせくださりありがとうございました。


※お得情報※
このミシマガを見てくださった方だけに、朗報です!
なんと、4月13日(火)~27日(火)の2週間、味よしさんにてお弁当を買う際に
「ミシマガを見ました」とお伝えいただくとご飯の大盛り(通常100円)が無料になります!
ぜひこの機会に味よしさんの美味しいお弁当を食べてみてくださいね◎

<プロフィール>
藤田純一(ふじた・じゅんいち)
1967年生まれ。1982年より、店舗に立つ。2005年、「味よし」3代目に。

<お店情報>
自由が丘 味よし
住所 目黒区自由が丘1-27-2 ひかり街
電話 03-3718-9777
営業 9:30~19:30 (水曜定休)

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

ミシマ社仕掛け屋チーム

手書きのフリーペーパー「ミシマ社通信」をつくったり、書店店頭に飾られるPOPやパネルを制作する世界でたった一つしかない(?)チーム。
ブログ「春夏秋冬」もご覧くださいませ。

春夏秋冬

バックナンバー