仕掛け屋だより

第12回 季節の自由が丘だより(ポパイカメラ)

2010.07.13更新

第4回 ポパイカメラ専務 石川芳伸さん

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自由が丘の素敵なお店をご紹介する「季節の自由が丘」。
今回は自由が丘正面口から徒歩2分、いつも女子でにぎわっていて、雑貨も売っているカメラ屋さん「ポパイカメラ」の専務、石川芳伸さんです。
営業の行き帰りについ寄りたくなる可愛らしいこちらのお店は、どのようにしてできたのでしょう。
仕掛け屋林が伺ってまいりました!(文章・写真 林萌)

「写真撮ってくれよ」って言われるのが嫌でした

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―― 社で使うマスキングテープを、いつも購入させていただいております。

石川ありがとうございます。

―― 可愛いケーキカップなど、写真だけにとどまらないさまざまな雑貨を置いてらっしゃって、うっかり長居してしまいがちなんです。店頭でお父さまらしき方をよくお見かけするのですが、お店を始めたのはお父さまですか?

石川おじいちゃんからですね。戦前からやってたみたいで、昔は壁全体がショーウィンドウでカメラが並んでいる、普通の写真屋さんでした。

―― 小さいころから写真が好きだったのですか?

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石川いやー。小さい頃は、写真屋の息子だからって「写真撮ってくれよ」と言われるのが嫌だったんですけど、大人になってからですかね。高校を卒業して、カメラの専門学校に行って、プロカメラマン用の写真屋に勤めてからここを継ぎました。

写真が好きで好きで、というより、写真が好きな人に触れるうちに、自然と自分も写真好きになった、という感じですかね。「写真屋」という立場が好きなんです。最初はお店継ごうなんて全然思っていませんでしたね。僕は3人兄弟の末っ子で、兄と姉がいるんです。小さい頃から結構自由に過ごしてました。

―― 当時はどんなお店でした?

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石川よくある街の写真屋さんですよ。カメラとフジのアルバムが売っていて、フィルムを受付して2時間後くらいに写真が仕上がる様な、家族経営の街のアットホームな写真屋さんです。

―― 今のような、雑貨の並ぶ可愛らしい内装に変わったきっかけは、何ですか?

石川4年くらい前にデジカメプリントの依頼が全体の7割になって、フィルムは3割になっちゃったんですよ。昔、いいときは1日に50~100本は注文があったんですけど、そのころはもう10本以下になってしまって。

現像機って1日10本以上は現像しないと、いい状態が保てないんですよ。常に動いていないと色が出なくなるので。それで、現像をやめようか、みたいな雰囲気になってしまって。

―― そんなことがあったんですね。

石川ええ。それで親と、つまり社長と話し合いました。「デジカメプリントのお店にしなきゃいけないのかな」って。デジタルプリントだったらパソコンで選んでプリントするので「パソコンを増やす?」「でもそうしたら、お店の中が自動販売機みたいになっちゃうよね」とか。「それならお店やめちゃう?」って言ったこともありました。

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―― 今と真逆の方向ですね。

石川そんな紆余曲折を経て、何年間かはフィルムの専門店としてやろう、という方向にしたんです。それまでの写真の業界って、プリントは作業でしかなくて、いかに効率よく安くできるか、本数をさばけるかどうか、に重きを置いていたんです。「はい、光沢でLサイズですねー」とか言って接客も30秒くらい。

だけどフィルムのプリントって、本当はフィルムの種類がたくさんあったり、明るさも変えられたり、工夫できるところがたくさんあるんです。そこを今まではお客さんに聞いてこなかったんですけど、プリントするときにいろいろできる幅が、やっぱりデジカメより広いので、その良さを伝えていきたいなと思ったんです。

―― 体温が違いますよね。

石川そうなんです。そこをやってこなかった。だからそこをやれば、写真の好きな人が来てくれるんじゃないかと思いました。だけど、最初は売り上げが落ちてしょうがないと覚悟をしました。

半分くらいまで減るかな、と思ってたんですけど、ちょうど当時トイカメラが流行り出したことが追い風になったのか、カメラ好きの人が集まってきてくれて。ほかのお店ではめんどくさくて受けてくれない微妙な色や風合いを、うちでならプリントできるので、写真好きの方たちに口コミで一気に広がったようなんです。

もうだめになってもいいと思ってやっていました

―― 結果的に自然に集まってきたんですね、全国の写真好きの方が。

石川ちょうどブログとかが流行り出したころというのもあったと思います。今では、フィルムしか扱っていなかった昔より、フィルムのプリントが逆に増えました。

―― フィルムで撮るときの、シャッターを切る瞬間の緊張感とか真剣さって、デジカメにはないですよね。あとで直せないし、一発勝負。以前フィルムで撮り続けているカメラマンの方とお会いしたとき、デジタルで撮っている人との、なんというか、精神の置き方の違いに驚いた記憶があります。

石川そうなんですよ。

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―― そういった方向に変えると決断されたことは、とても勇気がいることだったと思うのですが。

石川いりましたね。だから、もうだめになってもいいと思ってやっていました。最悪社長と2人で、自分たちが食える分だけで続けられれば、と。もしそれでもだめだったら、場所柄ほかの商売もできるだろうとは思っていて。ただ、そのままお店の中が自動販売機みたいになるのは嫌でしたね。

―― 当時、今の参考になるような写真屋さんがあったのですか?

石川いや、ありませんでした。なのですごい試行錯誤でした。6、7年前ですかね。ありがたいことに、自由が丘には可愛い雑貨屋さんがたくさんありますよね。うちのお客さんでも何人か雑貨屋さんがいたので、しょっちゅう行っては物の見せ方を勉強しました。

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―― なるほど。ポパイカメラさんの原点は、雑貨屋さんなんですね。

石川ええ。雑貨屋さんに、ポラロイドで撮った写真が可愛く飾ってあったりするのが参考になりました。でも当時は写真屋さんに雑貨を置く、という感覚が一般的になくて、大抵の雑貨メーカーや問屋からは取引を断られました。その中で2つ3つ、小さいメーカーが「いいですよ」って置かせてくださって。

それから雑貨業界でも「写真屋でも雑貨が売れる」って思ってくれたようで、段々と商品が増やせるようになったんです。自分のライフスタイルを撮るお客さんが多かったので、それに合った写真まわりの雑貨も置いてある、ウィンドーショッピングのときに立ち寄れるようなお店を目指しました。写真も、自分の生活の中に自然に在るようなイメージですね。

―― 今でもよく行く雑貨屋さんはどちらですか?

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石川私の部屋」と、その隣の「キャトルセゾン」ですね。お客さんにカメラ好きの人も多いみたいで、フレームが可愛く展示してあって、こんな風にしたいなと思いました。

これを見たら写真を普段撮らない人もやりたくなるに違いない、なんで写真屋でやらないんだろう、と思って真似しました。展示の方法とか、そのへんの感覚はわからなかったので、見よう見まねです。もう、毎日のように見に行きました。雑誌を見て研究したりもしましたね。

―― 今でこそ馴染んでいますが、当時の写真屋さんとしては新しくて画期的でしたでしょうね。

石川そうみたいで、8年前から写真屋さん向けに講演会を頼まれたりしましたよ。まだ若造のくせに(笑)。25歳くらいのときかな。

―― すごいですね。最近、みなとみらいにもお店を出されたとか。

石川そうなんです。今年の4月1日にオープンしたんです。去年、駒沢公園や横浜みなとみらいの洋館で撮影会をやったんですけど、そのときに、横浜の方はいいなと思って。みんなで撮ってその場でプリントして、軽く食事してできた写真を見せ合う、というのがしたかったので、ここならできると思いました。

そこへちょうど出店依頼があったんです。自由が丘店の倍くらい広いので、お店の中で教室ができるんですよ。毎週土日はカメラ教室や小さいお子さん用にアルバムを作る教室などもやっていますね。無料体験もやってますよ。この前そのイベントにお客さんが2日で300組くらい来てくれました。

すべてはカメラに親しんでもらうために

―― 300組! ポパイカメラさんができたことで、カメラ人口が確実に増えているのを感じます。ここにある「レンタルカメラ」も、素敵なアイデアですね。

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石川それについてはカメラ担当の高橋からお話しますね。

高橋最近はじめた「レンタルカメラ」は、初心者というよりカメラ上級者を対象に、結構本格的に撮れるカメラをお貸ししています。少々お値段も高めですが、ふつうのカメラとどんな風に写り方が違うか、実際使ってみないとわからないですよね。この「ナチュラ」というカメラはオススメです。暗いところでも明るく撮れるんです。

―― これは撮ってみたくなりますね。

高橋この「ナチュラ」と「クラッセ」という商品は、今人気で空きがないんですよ。カメラをやってる方にはとくに人気の機種なのと、最長3週間レンタルできるので、結構先まで埋まってしまっていますね。レンタルするだけじゃなくて、カメラに合ったフィルムをお付けして、そのプリント代もレンタル代に含まれています。

普通、現像代だけで結構かかるので、フィルムもついてカメラも試せるのは、かなりおトクですよ。当店のオリジナルアルバムもついてますし。

―― ほんとうだ、かなりおトクですね。

高橋すべてはお客さんにカメラに親しんでいただければ、との思いでやらせていただいています。

石川レンタルカメラは、すごい反響がありました。今デジカメで撮っても、そのままで現像しないですよね。お子さんのアルバムを作ってないとか、せっかく旅行に行って写真撮ったのに、ずっとパソコンに入れっぱなしという人が多かったので、今までデジカメしか撮ったことがない人にも、フィルムで撮る面白さを知ってもらえたらと思ってはじめました。

僕はデジカメも両方使いますが・・・見比べるとやっぱりフィルムで撮るほうがいいんですよね。不思議なんですけどね。なんか、いい写真に見えなくなっちゃうんですよね。

―― ちなみに初心者にオススメのカメラはありますか?

高橋そうですね、当店オリジナルの「ポパカメ」です。もともとメーカーにあるカメラなんですけど、ミントシアン色のオリジナルカラーにし、缶の中にカメラとフィルム2本と、フィルムを入れる缶もついています。

フィルムは冨士の海外版フィルムで、現像すると色が青っぽくて可愛い感じに仕上がるんですよ。あと、結構ワイドに広く撮れるんです。缶は、大正10年に創業した静岡の老舗お茶缶メーカーさんに製造を依頼して作っていただいたものです。

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撮影:高橋さん

―― 小さいのに本格的ですね。しかも缶も長く使えそう。

高橋そうですね。プレゼント用や、カメラ初心者の方にオススメです。カメラをご購入いただいたら、フィルム選びのご相談もしていただきたいですね。たとえば「やわらかい感じで撮りたい」という方にはそういったフィルムを案内しますし、撮り終わったらプリントの方法も色味を出したり青っぽくしたり、いろいろニュアンスを変えられるので、そこも伺いたいです。

プリントしたあとも、マスキングテープを貼ったりスクラップブックにしたりして可愛く飾れますし、そこまでお手伝いしたいですね。そこまで一貫してご相談いただけるお店づくりを心がけています。

―― カメラのことに関しては、ポパイカメラさんに相談すれば間違いないですね。

高橋ありがとうございます。そうですね、よくカメラ屋さんと思われないでいらしたお客さんから「このカメラ撮れますか? どうやって撮るんですか?」といったご質問を受けるので、「こうやると可愛く撮れますよ」とお話しますね。

石川休日には結構遠くからもいらしていただいています。地方の小さな写真屋さんが少なくなっているからですかね。今ポパイカメラで働いている者も、もともと地方に住んでいてポパイカメラによく来ていたのが縁で、という人も多いんです。

地方からのプリント依頼もよくきますよ。日本全国から、日に何本も。それも、当店だったら細かなニュアンスに応えられるからではないかと思います。

―― すごいですね。全国からですか。

石川撮影会を北海道から九州まで主要都市でやったから、というのもあると思うんですけどね。3、4年前から「フィルムの良さをひろめよう!」という思いで始めたんですけど、当時はうち以外、そういうことをしているお店がなかったと思います。最近では同じ方向のお店も増えてきましたけどね。2年前くらいは、ほんとうちしかなくて。

―― ポパイカメラさんて、とてもアットホームですね。

高橋昔からあるお店なので、若い方だけではなくて、昔ながらのご近所さんも「社長いる?」ってふらっと立ち寄られるので、アットホームですよ。

―― だれでもほっとするお店の秘密が、少しわかった気がしました。本日はお忙しい中お話くださり、ありがとうございました!

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左から、店長カクザキさん、石川さん、高橋さん

<プロフィール>
石川芳伸(いしかわ・よしのぶ)
1977年生まれ。2000年より、店舗に立つ。2010年、ポパイカメラ専務に。

<お店情報>
ポパイカメラ
自由が丘本店
住所 目黒区自由が丘2-10-2
電話 03-3718-3431
営業時間 11:00~20:15
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