新人だった。

第2回 親の目は鬼の目

2013.05.17更新

こんにちは。
風薫る五月となりました。
四月から新しい生活が始まった方々もそろそろ環境に慣れて来たころでしょうか。

新しい環境に身を置くと最初は何もかもが新鮮で、やる気に満ち溢れるもの。
ところが少し経つと、必ずや壁にぶち当たり「ちょっと待てよ。こんなはずじゃ」
なんてことになる。
そんな折に上司や先輩からの厳しいお言葉が飛んで来たり、
自分のミスが重なったりなどしようものなら、気分はあっという間に急降下だ。
ただいま絶賛そんな気分中!という方がもしかしたらいらっしゃるかもしれない。

アナウンサーとして採用されたまでは良かったものの、
本当にゼロのゼロからスタートした12年前の私。
これまでに何度となくそういう壁にぶつかって来た。
一つ一つを挙げればキリが無いが
「もはや頑張るといっても何をどう頑張ればよいのかさえよくわからない」
というのもそのうちの一つだ。
自分ではある程度出来ているつもりでいるのに、他人から見れば「ぷぷぷ」という状態。
・・・ああ、言ってて恥ずかしい。
出来ることならタイムマシンに乗って当時の自分に教えてあげたいな、
努力の仕方を。

この「自分では出来ているつもり」というのはとくに厄介モノで
自分の中では出来上がってしまっているために問題点を見つけるのが難しくなる。
言ってみれば自分のかけている眼鏡が完全にくもってしまって
視界不良になっているわけだ。

そんな時にありがたいのが自分ではない他人の、曇っていない眼鏡だ。
出来れば視力は悪くない人がいい。
もっと言えば細かいキズまでチェックできる視力を持ち、
多少辛辣な評価であろうとも、嫌われることを恐れずきちんと指摘してくれる人。
改めて書き出してみると、この条件がいかに厳しい条件であるかがよくわかる。
ぱっと思い浮かべようにも、こんな人はあまり存在しない。
視力はよくても嫌われたくない心が先に立つのが人間てものだし、
仮に嫌われても構わない心持ちでいてくれたとしても、
眼鏡の精度があまり良くないようではまったく意味が無いからだ。

しかし、幸運にもこの条件に当てはまる人が私にはいた。
しかも限りなく身近に。
・・・母だ。

今でこそ老眼で近くのものがよく見えないとこぼしていることも多いが、
なんといっても娘の観察力にかけては間違いない。
誰よりも近くで長いこと観察しているのだ。
良いところも知っているだろうし、欠点については誰よりも熟知している。
おそらく多くの母親がそうであるように、母は娘に好かれたいとか
嫌われたいとかそういう次元で接してはいない。

母親から繰り出されるパンチはなかなかに強烈だった。
今思い返せば、ジャブ程度だったのかもしれないが、
弱っているところに喰らうパンチは、普通のパンチであったとしてもかなり効いた。
親心から他人であったら気づかないような小さな欠点を注意してくれているのに
つい「わかってるって」なんて可愛くないことを言ってしまう。それも何度も。

ところが社会人10年生にもなると、
それらアドバイスは極めて的確だった上、
小うるさいことを言ってくれる(ごめん)人がどれだけありがたいかよくわかる。

『うちのママ、怒ると鬼みたいに怖いよ』
と小さい頃よく友達に話していたのを覚えているのだが(またまたごめん)
どうやら間違っていた。
鬼のように細かいところまでよく見ている、実に頼れる鬼なのであった。

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倉野麻里(くらの・まり)

上智大学数学科卒。2002年テレビ東京入社。WBS6年、夕方ニュースMC5年担当するなど、入社以来報道畑を歩む。座右の銘は『何かを始めるのに遅すぎるということはない』うどん、鶏肉、奈良漬が好き。趣味は散歩、料理、旅行。

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