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 巫女さんに聞く! 神社のあれこれ(前編)

2009.12.28更新

初詣で多くの方がお参りをする神社。昨今雑誌で「聖地特集」が組まれるなど、神社に行くのがちょっとしたブームです。が、神社のしくみやらお参りの作法やら、神社のあれこれって意外に知らなかったりします。今回、都内神社に奉職中の巫女さんにそのあれこれを伺いました。初詣の前に是非ご一読ください。神社との向き合い方が変わるかもしれません!(聞き手:足立綾子)

3003メートルの山の頂上で巫女さんデビュー

―― まずは、美香さんの巫女歴をお話いただけますか。

雄山神社

雄山神社

富山県の立山の頂上にある雄山神社で、19歳の頃から助勤(アルバイト)ではじめて巫女という仕事に携わることになりました。そこは3003メートルの山の頂上で、シーズン以外は雪で閉ざされていて、夏の3カ月の間しか開いていない神社なんです。それを3年させてもらって、そのあとに自分の地元の神社で一年7カ月働き、今は都内の神社に奉職しています。

―― 最初、巫女さんになろうと思ったきっかけは、なんだったんですか?

もともと祭祀舞をしておりまして、出雲大社、春日大社、伊勢神宮など、神社で舞を奉納する機会があったんです。この年、天津神の伊勢神宮だったら、次の年は国津神の出雲大社というふうに、交互に舞を奉納するんですけど、「天津神と国津神の神社でどうして同じ年に奉納できないんだろう?」って思って。そこで、神話とか神道の土台を学ぶようになったんです。私が習っていた舞は、座学の時間もあったので、舞だけではなく、日本の歴史や古事記に自然に触れていきました。

―― なるほど。

奉納って外から行って、それだけで終わってしまうじゃないですか。それが、自分のなかですごく違和感があったんです。奉納舞で伺った際に、巫女さんや神職さんをみて、なんで私はあっち側じゃないんだろうって、そういった感覚があったんです。あるとき、インターネットで神社を調べていたところ、雄山神社が助勤の巫女を募集しているのを知って、それがきっかけで奉職することになりました。私が最初に奉職した雄山神社って独特で、一年間の四分の一をそこで住み込みで働かせていただくので、まさに生活そのものなんです。

―― 山に登ったら登りっぱなしなんですか?

ほんとうは登り降りしていいんですが、降りるのがいやだったんです(笑)。だって、3000メートルの登山なんて、したことがなかったので。

―― そうか、住み込みするってことは、最初に登山しているんですもんね。

そうなんです。神職さんとか、もう山伏みたいですよ。「逆に降りないおまえは化け物だ!」って言われて、ちょっと歴史に名を残しました(笑)。別に降りたいとも思わなかったんです。非日常的日常といいますか、普段、視界は明らかに地上の人工物のほうが多いわけじゃないですか。でも、頂上にいると視界は天のほうが大きいんですよ。

―― たしかに!

視界は天のほうが大きくなる

視界は天のほうが大きくなる

目線の下まで空があって、雲や雨が自分の目線を流れてゆく。そんな生活をしていると「神道」って名付けただけというか、神道の流れが否が応なしにダイレクトに理解できたんです。天照様は太陽、月読命は月とか、それらをあがめる気持ちはそのままいにしえの人の気持ちと同じというか、「あ! こういう感じなんだ」というのが生活のなかですごく感じたんです。

―― それは、おもしろいですね。そもそも視界が違うんですもんね。

太陽があがって、そして照らして、そして落ちる。シンプルで、でも人間の生活には根源的というか。よく地球に感謝するとか、エコっていいますけど、地球だけの問題じゃないって自然に思えてくるんです。視野が広がるといいますか、感謝する対象って地球だけじゃない。星々があって太陽があって月があるから、こうめぐる。いのちがある、地球があるっていうのが実感できたそこの生活が、自分にはとても大きかったですね。

神社もふつうの会社と一緒です!

―― 巫女さん以外のお仕事をされたことはあるんですか?

カメラマンのアシスタントをしていたこともありました。まったく違うこともやってみたかったんです。神道って、根源的なんですが、扱うものが目に見えてないんですよね。それで、ほんとに目に見える映像とかメカニックなまったく真逆なことをやってみたかったんです。でも、2カ月で(メカニックな世界は)あってないんだって感じて(笑)。それでまた巫女さんのお仕事を探していたら、タイミングよく募集していた地元の神社に奉職することになりました。

―― 地元の神社はいかがでしたか?

神社といえど、人間がやっていることなので、問題になってくるのは人間関係というか、それはふつうの会社と変わらないんだなということを学びました。

―― そうなんですね!

いわゆる社長さんは、人じゃないところに社長さんがいらっしゃるので、目線を人においては、これは勤まらないって思ったんです。目線を神様という部分に常におき、心をフラットにして、横の流れに自分の心が乱されないようにしようってやっていると、奉職の間にいろんな変化を実感できました。人ひとりの影響力っていうのが、自分をとおして感じたりして。そういうのを学びあえたのは、ありがたい経験でした。

―― 神社って非現実的なイメージがあるんですけど、ふつうの会社と変わらないんですね。

巫女さんのお仕事って、祓い、清めが重要なので、掃除が基本になるんです。「ただ掃除するだけじゃない。気を込めて」って指導されるんですけど、その気が乱れていたら、悲しいですよね。だから意識を高くもっていないと難しいなあというのがありました。

―― まず最初に、気を込めて掃除をするのを叩き込まれるんですね。

掃除とか気の流れとか一番気をつけています。ちりやほこりが絶対目につかないように、落ち葉もたまらないように、屋根に枝があったらすぐおろすとか、ものすごく厳しかったです。

―― 誰もが好感をもてる神社って絶対きれいですもんね。

そこは宮司さんも一番大切にしていたところで、人が入って「あ、ご神域だ」って感じるのはやっぱり段階があると思うんですが、目に見えるところから整えていって、次は人の心ってあがるんだと思います。

『超訳 古事記』

『超訳 古事記』

―― 今回『超訳 古事記』を読んで、すごくおもしろかったのが、たとえば須佐之男命が乱暴狼藉を働きまくるじゃないですか。それって、すごい自由だなーって思ったんです。そういう部分も日本の神様のよさなのかなと思って。人間よりも人間らしくて、我慢する人がひとりもいないんですよね。だって、気に入らないからって殺すんですよ!

散々ですよねーほんとに(笑)。

―― あのあたりが逆に信頼できるというか。きれいごとじゃないところから出てきているのが日本の神道のいいところだなーと思って。

そうですね。生きていたらそういう要素って世の中に確実にあるじゃないですか。それをわかりやすく語るのが神話だと思います。世の中に流れているものを人物化して立ち上がらせて、物語として送り出したときに、根本にあるものをわかりやすく飲み込めるようにするというのがあるかもしれないですね。

自分のいのちに意識を向ける

―― 神社って身近な存在なんですけど、儀式的なこととか作法とか、そもそもなんでそういうことをするのか意外に知られていないと思うんです。そのあたりについて教えていただきたいんですが。

まず、年末には大祓いという儀式があります。6月末に夏越の大祓い、大晦日に年越しの大祓いと半年に一度、生活のなかで知らず知らずにつけた心の垢や罪穢れをお祓いするんです。大掃除と一緒ですよね。新しい年を迎えるにあたって、身も心もきれいにして迎えましょうということですね。

―― 具体的にはどういった段取りになっているのですか?

人形(ひとがた)

人形(ひとがた)

私が今奉職している神社では、大祓いの申込用のセットをご用意しています。これは、人形(ひとがた)っていいまして、これに名前と年齢を書き、頭や腰など身体の悪い部分をなでるんです。そして、息を3回ふきかけて、神社にもっていき、大晦日にお祓いをするんです。昔は木とか、わら人形だったようです。このセットには、お屠蘇と年越しのお札もついています!

―― お屠蘇って新年に飲むお酒のことかと思ったら、この薬草の入った袋をお酒にひたして、それを飲むと。家族でお屠蘇を飲んで、無病息災を願うんですね。

新年のお願いごとでお参りする前に、まず身を清めて振り返るところからはじめると自分にとっていいと思うんですよね。自分の再確認というか、いのちに意識を向けるって。

―― それはすごい重要ですよね。神社にお参りするときのポイントってありますか?

最初にまず鳥居で一礼し、手水で身を清める。そういったひとつひとつが神様に向かう準備段階だと思うんです。それぞれが気を整えて入るからこそ聖域って守られる場所なので、大切なのはやっぱり神に向かうっていう意識だと思います。「神」って言葉にすると、「神ってなに?」ってなると思うんですけど、神道で神はいのちのはじまり、根源のことなので、自分と向き合うことと一緒だと私は捉えています。

―― なるほど。

鳥居のまえで一礼を

鳥居のまえで一礼を

鳥居で一礼するのは自分のいのちと向き合うことですし、手水で身を清めるのも神様に向かうためだけじゃなくて、自分の身を清める、つまり自分のためになることにつながると思います。手をあわせて、自分と祀られている神様とが対峙するというのは、自分のいのちの根本とそのいのちを司っている神様との交流・交信だと思うんです。

―― 今、神社に行くのがちょっとしたブームですよね。でも、神社を紹介するときにご利益という面でくくられているのが多い気がします。

ご利益もたどっていけば、そのめぐりが通りやすいってことだから、結局は帰ってくるのは自分が生きてくうえでの必要なエネルギーだと思うんですよね。簡単なところでいえば、天照様は光とかいのちを生成するっていうのがご利益で、得意分野っていうのが確かにあります。でも根本を忘れると違ったものになってしまうので、それさえ忘れなければと思います。ご利益主義っていうとマイナスイメージがありますけど、ご本人の気持ち次第だと思うんです。

神社は、人のおうちと一緒

―― ちなみに、美香さんが手をあわせるとき、なになにお願いしますとか、決まったお祈りの仕方ってあるんですか?

はじめて行くお宮さんには、人のおうちを訪問するのと同じで、全然知らないおうちに入るわけじゃないですか。まず名乗って、できるかぎり丁寧に「自分はここから参りまして、お参りさせていただいたことを感謝申し上げます」っていうご挨拶からですね。

―― はー、なるほど。それは大切なことですよね。人のおうちに突然行ったら、「こんにちわー! ○○と申します」って名乗るのがふつうですよね。

人のご縁で来させてもらった場合は、こういったご縁でとご挨拶させていただきましたら、「ますますのご活躍とご繁栄をお祈り申し上げます」とお祈りします。「弥栄(いやさか)」というか、人とのおつきあいと一緒ですよね。奉る言葉をお祈りして、どうもお邪魔しましたと(笑)。ほんと人のおうちにお邪魔したみたいに、美しいところですねーって境内を眺めたりとかして。神社って、人のおうちよりももっとかしこまったところじゃないですか。それを思うと丁寧に丁寧にご挨拶をします。

―― 自分でなにか目的があって訪れた神社では、具体的なお願いをされるんですか?

お願いはしないですね。自分がいのちを授かって、このいのちがどうか健やかに全うできるように、というお祈りはしますが、それもひいてはすべてにつながってくると思うので。自分が今もたされているものを、よきにお取り計らいくださいというところですかね。

―― どこの神社に行ってもお祈りの仕方は基本的には変わらないんですね。

そうですね。無心になってお祈りすると、そのときの感覚ってありますし。まったくしーんっていう場合もありますし。ご縁がなかったって(笑)。しーんってときは、ただただ、「ますますのご活躍とお宮さんの神様がもっと栄えていきますように」という思いだけを置いていくようにしています。

―― はー、見習わなければ・・・。

でも頼りにされると人間、うれしいじゃないですか。だから素直な心で「頑張りたいと思うんです!」っていったら、人間と一緒でやっぱり協力してくれると思うんですよ。神様も神様だけで動いているわけじゃないですし、この地球は人間がいて栄えていくので「よし頑張る!」とお風を与えてくれる神様もいらっしゃいますでしょうし、それはもうひとえに心の素直さだと思っています。

―― ほんとそうですよね。

私の場合、家族の信仰深い姿をみて、こういう価値観がはぐくまれたので、すごく恵まれていたと思うんです。守られてきたって最近感じているので、自分がお宮さんに関わってこの先、地域と神社の関係が密接にできたらいいんじゃないかなと思いますね。神社でなにかものじゃない、奥を見る力とか、感じる力とか、感性を育ててゆけるコミュニティの場が神社であれば、日本としてはもっと豊かになるんじゃないかなって思います。

―― ほんとそう思います。もっと日常に溶け込んだかたちになるといいですよね。家庭でもちゃんとお祀りしてね。

そうですね。日常化していき、感謝の心とかを家庭からはぐくんでいけたらすごいいいのにと思いますね。

■ 巫女さんに教わりました!~年末年始にさっそく実践!~

【神社でのお参りのしかた】
・鳥居で一礼、手水で身を清める。
・神前で二礼二拍手一礼。

* 美香さんのお参りのしかた
・「○○と申します。××から参りまして、お参りさせていただいたことを感謝申し上げます」とご挨拶。
・「ますますのご活躍とご繁栄をお祈り申し上げます」とお祈りする。
・具体的なお願いごとがあれば、素直な心でお伝えする。

柳元美香(やなぎもと・みか)

高校卒業後からはじめた祭祀舞に加え、琉球舞踊、舞楽など、芸事に心を寄せる。現在、都内の神社にて奉職中。神前で舞い、祈りを捧げる日々のなかで、「人類に限らず生命は歌い踊る」ということに強く惹かれている。時間があれば世界中の音楽と踊りを鑑賞し、最近はイラクの古典音楽を愛聴している。茂木健一郎さんなど、好きな作家さんの本とともに高速バスの旅をするのも好き。来年の抱負は古神道の造詣を深めることと、より豊かで美しい日本語を身につけること

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