特集

今、Kポップがおもしろい!(後編)

2010.05.19更新

第14回「今、Kポップがおもしろい!」(後編)

高橋さん

高橋修(たかはし・おさむ)
1964年、群馬県前橋市出身。『ミュージック・マガジン』編集長。2008年秋にワンダーガールズ「Tell Me」「Nobody」を見て以来、Kポップにハマる。お気に入りは、少女時代のテヨン。

みなさん、韓国の音楽、Kポップを耳にしたことがあるでしょうか?
今、韓国では人気も実力も兼ね備えたアイドルが群雄割拠(東方神起だけじゃないんです!)。さながら日本の80年代の歌謡曲全盛期の様相を呈しています。

日本でも「次に来るのはKポップ!」といわんばかりに、テレビや雑誌で特集が組まれたり、大型レコード店でもJポップと並んで大展開していたり、じわりじわりと人気が拡大中。今年、多くのKポップアイドルの日本活動が続々と予定され、みなさんの目に触れる機会も増えることでしょう。

今月の特集では、Kポップ漬けの毎日を送るふたり、『ミュージック・マガジン』の高橋修編集長とミシマガ編集部アダチがその魅力を熱く語ります!(聞き手:足立綾子)


Kポップを認めづらい日本の背景

KポップのCD

KポップのCDは、紙ジャケでCDとブックレットが一体になっているものが多い。輸入版CDの価格は1000〜2000円前後と手に入れやすいのも魅力的。

――少女時代が日本で活動をはじめたら、けっこう人気が出るんじゃないかって思っているんですけど。

高橋でも、少女時代も日本語で歌わされちゃったら、どうかなー。ローリング・ストーンズだって、日本語で歌ったらかっこ悪いですよ(笑)。少女時代は、少女時代のままで成功するのがいいんですよ。

――BoAや東方神起が日本語を習得して、Jポップの歌手としてブレイクしたっていう成功例を、SS501(ダブルエス ゴーマルイチ)、BIGBANGなども今のところ踏襲していますよね。Kポップファンが増えつつあるなか、どうにか誰かが、その成功例をしれーっとスルーしてほしい(笑)。日本語を習得してくれるのは、とても嬉しいですけど、今のファンはJポップ仕様の楽曲を求めているわけではないですから。

高橋そうだよね。でも、CDの売上のことを考えると思いきったことができないのかもね。あと、日本人の韓国観が変わらないと難しいのかもしれない。日本人は、実は韓国にはなにも興味がない。そこが問題なんだよなー、結局。やっぱりKポップにハマる前の自分は、あんまり韓国に興味なかったよなと思うし。

――たしかに私もKポップにハマる前、韓国を意識するのはスポーツの国際大会のときぐらいでしたね。

KポップのCD

ブックレットに収録されている写真のクオリティも高い。SHINeeのミニアルバム「ROMEO」は、アパレルのシーズンカタログのようなデザイン。KポップのCDは、「モノ」感が意識されていて購買欲をそそられる。

高橋ものすごい大雑把な話をすると、幕末に日本がアメリカやイギリスに不平等な条約を結ばされて、そこではじめて日本って世界の中では後進国だったんだって気づいたわけじゃない。その劣等感に耐えきれず、明治時代にアメリカに結ばされたような不平等な条約を韓国と結んだ。それ以来、日本人にとって韓国というのは、日本人が見たくない、日本人が劣等感として抱いている日本観を投影するためだけにあるものなんじゃないかな。だから、韓国に対して、「すぐ人の真似をする独自の文化のない国」とか、「日本にあこがれているくせに、日本に文句を言う」とかって言うんだけど、これ全部、アメリカから日本が言われてきたことだからね。でも韓国人が日本にあこがれているかどうかは、実はわからないじゃないですか。

――日本人がそう思っているだけかもしれない。

高橋それは日本人が、アメリカにあこがれているのにアメリカに対して文句を言っている自分達の姿をただ投影しているだけだから。韓国に対して、「おまえらが俺達のことがどんなに好きでも、俺達はおまえらのことを認めないぜ」って日本人は言いたがるけど、韓国人から「べつに日本、まわりにある国のひとつだから」って言われちゃったら、逆に日本人はすごい衝撃をうけると思うんだよね。

――さびしがり屋の男の子みたいな。

高橋ほんとそうだと思う。日本人が「韓国って独自の文化がある国なんだ」と思わないかぎりダメだと思うんだよね。「韓国って全然ダメダメの文化の国なんでしょ」って日本人は言いたいわけだから、そんな韓国から日本より優れたポップスが出てきたなんて素直に認めたくないんじゃないかな。

――でも、認めざるを得ないクオリティだと思うんですよね。楽曲・ダンス・衣装をふくめて、ひとつの世界観をつくりこんでいますし。新曲を出すときは、髪型をガラッと変えてイメチェンするから、次、どんなコンセプトで出て来るんだろうってファンはわくわくしながら待つ。そういうファンの気持ちを盛り上げるのも上手ですよね。CDのパッケージも、規格外でバラバラで、おもしろいですし。

高橋アフタースクールの「BANG !」のCD、サイズでかいよねー。前作とも大きさが全然揃ってないし。

――ブックレットの編集の仕方を見て、うまいなーって思うものもあって、自分の仕事の参考にもなったり(笑)。日本よりもCDが売れなくなった時期が早かったからか、買ってもらうための工夫を凝らしていますよね。

「みんなのうた」がない日本の音楽シーン

KポップのCD

KARA 「SPECIAL PREMIUM BOX FOR JAPAN」
発売済の全CD+特典DVDの7枚組スペシャルボックス。日本語歌唱版「Honey」「Pretty Girl」「Wanna」も収録。今年8月、「ミスター」で日本デビューが決定。テレビの全音楽番組への出演を狙うなど、プロモーションにも力が入る模様。KARAが「お尻ダンス」で日本の夏を熱くする!

――KARAは日本語で歌っているんですか?

高橋日本語歌唱版の曲も収録されたCDとDVDのスペシャルボックスをユニバーサルから出しましたね。できれば、韓国語しか話さない状態で日本に来てほしいんだよな。「アニョハセヨー、KARAイムニダー」って言ってほしかった。日本人にもうちょっと外国音楽を聴く習慣があればなー。韓国はマーケットが小さいからね。

――はじめから輸出する気満々ですよね。

高橋それもあるし、韓国歌謡界って、競争が激しい世界じゃない。その競争を勝ち抜いていく迫力が、Kポップにはある。日本には基本的にないからね。韓国で開催されたある歌謡祭で日本の某アイドルが出演したんだけど、韓国の会場なのに日本のファン向けのパフォーマンスをして、「生ぬるいぞ!」って思いましたね。それに比べるとアジアライブに出たガクト先生はえらかったですよ。MCをすべて韓国語でして、Kポップみたいな曲を選んで歌って。

――ガックン、わかってる! ファンサービスがわかっていますね。

高橋そうそう。ロボットダンスでエレクトロ歌ったりね。国外に向けてやろうと思ったら、その国のファンが何を求めているのかを理解して、それに応える努力をしなきゃね。

――日本のアーティストは、基本的に日本のなかで活動が完結していますよね。国外に目が行かなくても充分だからでしょうか。

高橋そうね、だだっぴろいマーケットが日本にはあるっていう。今、CDが売れないから、もはや半分幻想なんだけど。でもKポップは狭いマーケットで確実に儲けるぞ! みたいなね。そういう迫力の違いが音楽に出てるんじゃないですかね。その迫力ごと日本に来てほしいけど、日本でやる時にはカドをとって丸くして日本語で歌うのはちょっとなー。韓国の東方神起を見た人は、日本の東方神起を見れないってことですよ。

――そうですよね。今となっては、日韓どちらの東方神起も好きですけど、韓国の東方神起は、やっぱり特別ですね。

高橋東方神起の不在は痛いね。ひと目でよさがわかるというのは、なかなかない。韓国って、音楽番組の編成に事務所の影響力が及ぶことはあるけど、音楽シーンに関しては正直なところがあるから。

――そうですね。いい曲が実際に売れていますよね。

高橋韓国人でワンダーガールズの「Nobody」知らないっていうの、ないもんなー。

Super Junior「Sorry, Sorry」動画

――Super Juniorの「Sorry, Sorry」、知らないってこと、ないですもんねー。

高橋そうそう。

――Kポップには、その年を象徴する曲っていうのが何曲かありますが、今、日本にはそれがないですよね。私、学生時代、小室ファミリーのアーティストが全盛期だったんです。音楽の好みに関わらず、耳に入ってきて、自然に覚えちゃっている。学生の頃の友人とカラオケに行くと、安室奈美恵の初期の曲とかTRFの曲とかがいちばん盛り上がるんです。

高橋いいじゃないですかー。

――音楽の好みが一致していない一同が集まったとしても、みんなが知っている曲で歌って盛り上がれる、そういう音楽ってあっていいものだなーと思ったんです。今、日本の音楽シーンでそういう曲がないのが、ただ単純にさみしいですね。

高橋ほんとそうですね。

ファンベースで地道に布教するべし!

――ここでがらっと話題を変えて、高橋さんの音楽遍歴を聞きたいんですが。

高橋もともと映画や映画音楽が好きだったんです。それに並行して、高校ぐらいから邦楽・洋楽いろいろ聴きだして、大学入った頃にアイドルブームがあり、おニャン子とかにハマって。で、大学卒業後、ミュージック・マガジンに入社して、世界にはいろんな音楽があるんだってびっくりしましたね。だいぶ勉強しました。ひととおり聴いて、80年代後半ぐらいからはじまったワールド・ミュージック・ブームのときに、アジアの音楽を聴きだして、ある日、韓国の音楽に目覚めたって感じですかね。

――アジアの音楽を聴きだしたころは、どこの国の音楽を聴いていたのですか?

高橋香港とインドネシアとマレーシアですね。おしゃれなんですよ。

――ほー。フィリピンになるとアメリカンな感じになるんですか?

高橋フィリピンは英語の曲が多くて、ゆるいアメリカン・ポップスみたいな感じに聞こえたのと、その頃の韓国はゆるいJポップみたいに聞こえたのかな。

――なるほど。

高橋それにくらべると、香港・インドネシア・マレーシアの音楽は80年代後半、楽曲の質が高くて、何を聴いてもおしゃれでかっこよかったんです。でも、突然だめになって。たぶん、香港は返還のせいだと思うんですけど、フェイ・ウォンとかが出てきた頃から質が変わってきましたね。

――フェイ・ウォンみたいなアイコンが出てきて、アイドルっぽくなったんですか?

高橋ううん。音楽的な話ですね。歌謡曲っぽくなったのかな。マレーシアは逆にアメリカン・ポップスみたいになっちゃった。インドネシアは質は維持していたんですけど、好きな歌手がCD出さなくなっちゃったんですよね。変な音楽が聴きたいなと思って聴いていたのではなく、アジアのポップスに比べたら、Jポップ、全然ダサいじゃんって思ったんです。だから、今とあまり変わらないですね。

――仕事を離れて、個人的に聴くのは日本の音楽というよりは、アジアの音楽なんですね。

高橋そうね。日本のものだと・・・Perfumeの前は、aikoとBENNIE Kをよく聴いていたかな。

――Perfume以降で、高橋さんの琴線に触れたのって何かありましたか?

高橋・・・いや、全然。

――むしろアフタースクール(笑)。

高橋そう、全然アフタースクール!(笑)。最近のJポップは、ちょっと前のJポップを聴いて育った人たちがつくっている、そういうつまらなさはありますよね。「韓国の音楽はパクリばっかりだ!」とかいう人いるけど、外国音楽のパクリすらないJポップより、ある意味どん欲ですよ。80年代以前の日本の歌謡曲のおもしろい曲はパクリばっかりだし。

――カバー曲も多いですよね。

高橋そう。だから、日本だって偉ぶってる暇ないんだから、Kポップのアイドルのように、もっと死に物狂いで頑張れってことですよ。僕が言いたいのは、Kポップを聴いたら、Jポップの物足りなさに気づいて、もうちょっと日本の音楽シーンがおもしろくならないかなーってことですね。

――日本の音楽シーンのなかで、Kポップが潮流を起こせるといいですよね。Kポップ特集の反響は、いかがでしたか?

高橋おかげさまで、日本のレコード会社が、「次はKポップだ!」って言って具体的に動き出してきた。「ぜひ、盛り上げてください」って言われたり。

――これ出たときに、「Kポップ、音楽的にイケてるんだってお墨付きをもらえた! ありがとう!」って思って、嬉しかったですよー。音楽雑誌でKポップを特集したのって『ミュージック・マガジン』がはじめてなんじゃないですか?

ミュージック・マガジン 2010年3月号

『ミュージック・マガジン 2010年3月号』
特集:燃え広がるKポップ!

高橋はじめてですね。特に実績のない女性グループを前面に出すのってアホのすることですよね(笑)。

――いやいや(笑)。少女時代、KARAと女性グループの三強をなすT-ara(ティアラ)も超新星とのコラボで日本活動をはじめましたね。でも去年のヒット曲「Bo peep Bo peep(通称:ポピポピ)」を引っさげての活動ならわかるんですけど、「ポピポピ、まさかの温存ですか!?」って思いましたよ。

高橋レコード会社の人たちもまだKポップの勢いをわかってないんですよね。だから、もうファンベースでKポップの布教をするしかないですよ。タイやベトナムのファンと共闘してね(笑)。

――お互い地道な布教活動を続けましょう! 今後、『ミュージック・マガジン』でKポップの特集をしますか?

高橋ネタがたまれば、是非やりたいですね。

――期待しています! 今日はどうもありがとうございました!!


高橋編集長のKポップ布教 厳選3曲(男子向け編)

少女時代「願いを言ってみて(Genie)」(2009年)ミリタリールックで一糸乱れぬ美脚ダンスに思わずため息。「MBCショー!音楽中心」(2009年7月4日放映)がベストパフォーマンス。ユリの華麗なる足技を見よ!(ちなみに、正面下からばっちり撮っているのは、この回だけ)

Brown Eyed Girls「アブラカダブラ」(2009年)パフォーマンスの見所は骨盤ダンス! 2PMと2AMのメンバーが「Dirty Eyed Boys」と称して、ちょっと悪ノリ気味にカバーしている。キム・ヨナが韓国でのアイスショーでこの曲に合わせて演技を披露したことでも話題に。

KARA「Pretty Girl」(2008年)この曲からKARAの快進撃がはじまった。「Pretty Girl」以降、「Honey」「Wanna」「ミスター」と立て続けにヒットを飛ばし、トップアイドルの仲間入りを果たした。キュートな魅力満載のMVを見て、劇団ひとりはKARAにハマったらしい。

少女時代「願いを言ってみて(Genie)」動画

高橋編集長のKポップ布教 厳選4曲(女子向け編)

東方神起「Wrong number」+「呪文-Mirotic」(2008年)「2008年SBS歌謡大戦」(2008年12月29日放映)は、ファンの間でも2008年のベストパフォーマンスとの呼び声が高い。秀逸なのは、鮮やかに決まった最後のキメポーズ。この演出を考えた人、最高です。

Super Junior「Don't Don」(2007年)「KBSミュージックバンク」(2007年10月5日放映)が、生歌でいちばんよい。13人組のグループなのに、なぜか途中から14人目が登場してバイオリンを演奏。もうなんだか意味不明で、ツッコミどころがあるのもKポップの醍醐味。

SHINee「ジュリエット」(2009年)アメリカの俳優兼シンガーのコービン・ブルーの楽曲「Deal with It」のカバーで、韓国語詞はジョンヒョンが担当。今作で「妖精か!?」と見紛うばかりのキラキラしたスタイリングに。

SHINee「ジュリエット」動画

高橋編集長のKポップ布教(中級者編)

キル・ハンミM-netのオーディション番組「スーパースターK」出身の女性シンガー。ミニアルバムの表題曲「Super Soul」は歌のうまい子が歌うような曲でふつうだが、それ以外の収録曲が全部ハウス・テクノですごくかっこいい。

Boni(ボニ)R&B系女性シンガー。ミニアルバム「Nu One」は、全曲軽めのR&Bで、メロディーラインも洗練されている。

ジョンインR&B系女性シンガー。ミニアルバム「ジョンイン From Andromeda」に収録されているクラジクワイ・プロジェクトのアレックス、エピック・ハイのタブロをフィーチャリングした「Show !」は必聴!

KポップのCD

Boni ミニアルバム「Nu One」

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