特集

三沢さんよ、永遠なれ!

2010.06.14更新

あの日から1年がたちました。そう、日本中が悲しみに包まれたあの日から、1年・・・・・・。

三沢光晴さんが生前書き残していた85日分の日記を集めた『ドンマイ ドンマイッ!』の発刊を記念して、盟友であり最大のライバルであった小橋建太選手に、三沢さんの思い出話などをうかがいました。聞き手は、本書の特別発行人である香山リカさんです。

今回、『ドンマイ ドンマイッ!〜プロレスラー三沢からのメッセージ』発刊記念記者会見の一部を特別公開します!


香山リカ氏

香山リカ氏
大好きなテクノ・ミュージックにのって入場!
「みなさま、今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます」

小橋建太選手

小橋建太選手
「本日は、三沢さんのメッセージ本『ドンマイ ドンマイッ!』発刊記念記者会見にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。よろしくお願いします」


三沢さんは文才がある

ドンマイ ドンマイッ!

香山本書を実際に見ていただいてどうでしたか?

小橋僕も三沢さんと交換日記というかたちでやってたんですけど、改めて読み返してみると、三沢さんってすごい文才があるなと思いました。交換日記をしていた時は、するどい突っ込みがたくさんあったので、どうかわすかばかり考えてたんですけど、改めて読み返してみると「文章をうまくまとめてるなぁ」という感じがしました。

香山そうですよね。この日記は、2週間に一度交換日記というかたちで最初に三沢さんと小橋さんでペアになって始めたんですよね。

小橋そうですね。

香山どうでしたか? 最初に三沢社長とペアでやろうと言われたときなんかは。

小橋月曜から日曜日まで、必ず誰かと誰かがペアを組んでるんですけど、三沢さんと組む以上は金曜日、一番アクセスがくるように頑張らないといけないなというような気持ちになりましたね。

香山これ、実際に携帯電話で書いていたんですか。

小橋そうです。でも以前、本人に聞いたことがあるんです。「三沢さんはとても文が長いので、本当に三沢さんが書いてるんですか?」って。そうしたら「書いてるよ」って(笑)

香山毎回、例えば三沢さんから小橋さんへ、小橋さんから三沢さんへの質問というのが最後にありますよね。それはけっこう答えにくかったですか? どうでしたか?

小橋答えにくい質問はさりげなくスルーして、答えやすいやつは答えて、という感じです(笑)。

香山例えば、あるときの日記には「小橋への質問です。写真集が熱血発売中だけど、大人の女性におすすめの写真はどれですか?」というのがあったりするんですけど、これは答えにくい質問でしたか?

小橋そういうのはうまくスルーしてました。はい。

香山もっと、「どこに行きたいですか?」とか、そういうのは答える?

小橋はい。そういう簡単に答えられるものは答えてましたね。

香山小橋さんから三沢さんへ質問するときは質問しにくかったですか?

小橋いや、別に基本的に質問しづらいというのは何もなかったですね。そういう関係でもなかったので。はい。

香山では、三沢さんとのペアというのは、割とやりやすかった。

小橋やりやすかったですね。

確かに、あまりにも少なすぎる気もしますね(笑)

香山リカ氏、小橋建太選手

香山そうですか。そうやって、始まった日記ですが、途中で小橋さんは入院されることになりましたよね。そこで三沢さんとの交換日記ができなくなって、毎週三沢さんが書くようになったんですよね。

小橋そうですね。

香山そのときなんかも、三沢さんは、もちろん小橋さんが入院で手術なんて非常に心配したり不安だったりしたと思うのですが、割とあっさりとここには書いてありますよね。

小橋僕はこの本、どこを一番最初に見たかと言いますとね、やっぱり2006年の僕が癌になって交換日記ができなくなったところらへんから見たんですね。そこを、どういうかたちで書いてるのか、というのを見ました。

香山そうしたら、意外と「小橋のことは皆さんもご心配かと思います。まぁ、本人も頑張ってると思いますので、よろしく」みたいな書き方なんですよね。

小橋はい。

香山で、すぐにあっさりと「こんなかたい話題ばっかりじゃなんだから」という感じでまたいつもの気楽な話に戻っちゃってますよね。

小橋そうですね。ま、そのほうが本当に三沢さんらしい。やっぱり、ファンのみんなにあんまり心配をかけないようにするという、三沢さんの心づかいというか、そういうものをすごく感じますよね。

香山そうですか。「いや、もっとオレのこと長く書いてくれてもいいのに・・・」とは思わなかったですか?

小橋いや、全然思ってないです(笑)。あー・・・、でも読んでみると、確かに少ないなぁ、とは思いました(笑)。

会場

小橋まぁ、でも、そこは逆によかったっていう気持ちもありますけど。

香山復帰は翌年の12月でしたっけ。武道館ですよね。そこらへんも割とあっさりしてるんですよね。

小橋まぁ、リングでがっちりやってるんで、日記はあっさりですね。

香山ですよね。ここはご覧になりました?

小橋いや、見てないです。やはり、重要なのは日記をしてないときですね。そこはすごくみんなに迷惑をかけてるので。

香山でも、あまり休んでらっしゃる間は小橋さんの話題はでてこないですもんね。この日記には。

小橋そうですね。確かに、あまりにも少なすぎる気もしますね(笑)。

会場

香山そうですよね(笑)。

小橋あまりにも少なすぎるのも、ちょっといけないなぁ、と思いますね。やっぱり納得いかないですね(笑)。

香山復帰のときは2007年の12月ですが「欠場中もそして今も、小橋には大きなプレッシャーがあると思います。そのプレッシャーを代わってあげることはできませんが、小橋が安心して帰ってこられたのもまた、日々の試合を頑張った選手とそれを支えてくださったファンの方々がいてこそのものです」って、あまり小橋さんが頑張ったおかげとは書いてないですね。まわりの人が頑張ってくれたと書いてありますけど。

小橋まぁ、でも、そこは自分もその通りだと思います。

香山ああ、そうですか。

小橋僕も、まわりの人に支えられましたから。

香山もちろん、欠場して復帰した人が頑張ったのはあたり前だけど、こうやって、「小橋の欠場中にさらに頑張った選手にも、僕から大きな拍手を送りたいと思います(私には拍手は要りません・・・)」と書いてあるんですけど、まわりで支えてくれていた人に対する気遣いはけっこうあるんですね。

小橋そうですね。それが、ファンのみんなであったりとか、他の選手であったりとか、そういうことだと思います。

止まってるわけにはいかないですから。

香山リカ氏、小橋建太選手

香山私もこの本を出版してくれた出版社(ミシマ社)の三島さんもなんとか一周忌までに出そうということで、かなりいろいろ頑張って、ようやく今日にこぎ着けることができました。なかなかちょっと聞きづらいのですが、小橋さんにとってこの1年は長かったですか? それとも速かったですか? どういう1年でしたか?

小橋言葉にするのがすごく難しいです。あのときのショックというのはすごく大きくて、なんかうまく言えないのですが「もう1年たったのか」という感じですよね。

香山まだ、きちんと振り返って「1年で長かった」とも「短かった」というのともまた違う感じですか?

小橋三沢さんが亡くなったということはちゃんと認めてですね、前に進んで行かなくちゃいけない。そこのけじめはできてますけど、そういう気持ちを言葉にするのはやっぱりまだできないです。

香山ということは、最初は、まず認めるまでにも時間はかかりましたか?

小橋やはり、自分は三沢さんを追いかけて「どうしたら三沢さんを倒せる技を出せるか?」とか、よくそうやって技を開発したりしてきました。その三沢さんがリング上で亡くなった。「あの、不死身の三沢さんが、どんな技をかけても立ち上がってきた三沢さんが」という思いがあるので、なかなか、ひとつの言葉に出して言うのは難しいですよね。

香山でも、小橋さんも割と早い時期に「もうとにかく前に進むしかない」というメッセージを出されてたと思います。まわりのノアの選手たちもやっぱりそこは同じだったんですか?

小橋そうですね。止まってるわけにはいかないですから。三沢さんもそれを望んではいないと思うので。

香山私、実は6月13日の広島での試合の次の日、博多の試合を見に行ったんです。事故の一報を聞いた後、とにかく「これは行かないと」と思って急に行ったんですね。あのとき、まず博多の試合があるのかどうか、大会を開くのかどうかもわからなくて、でも、どうやらやるようだというので行ってみた。皆さんたいへんな状況で混乱した状況だったと思うのですが、きちんと第一試合から最後の試合までありましたよね。そのとき、本当に皆さんどういう気持ちなのかなと思ったんですね。もう、見てる方も辛かったんですけど、本当に皆さん全力で試合をされているのを見て、それこそ言葉にできないくらい感動をしました。そのときに、リング上での挨拶でも、「三沢さんもやっぱり、これで試合が止まることは望んでないだろう」ということをおっしゃっていて。

小橋そうですね。その日の昼にですね、もちろん試合を中止にするとかしないとか、そういう話はやっぱり出ました。けど、まずはチケットを買ってくれて、観に来てくれるファンのために試合を中止するということを三沢さんは望んでないし、自分たちはプロレスラーである以上、決まってる試合は絶対にやらないといけない。そういう意見で、その日も変わらず試合をしました。

香山なるほど。それで、ずっと1年間変わらずにやられてきて、今度来週6月13日はディファ有明で一周忌の大会がありますよね。どうなんでしょう。団体の皆さんもここらあたりで、自分なりの区切りをつけてまた次のステップに進んで行こうという感じなんですか? 

小橋みんな、個人はそれぞれそういう思いでいると思います。

香山なるほど。

三沢さんの思いを背負ってリングに立ちたい

香山リカ氏、小橋建太選手

香山いま、小橋さんご自身はケガで試合をお休みになっていらっしゃいますが、またこれから、「こういうふうにレスラーとしてやっていきたい」という思いがもしあったら教えてください。

小橋そうですね。やはり、三沢さん、去年亡くなってもうすぐ1年になるんですけど、やっぱりその「思い」ですね。三沢さんはもう試合をすることはできないですけど、その思いを背負って今度リングに立ちたいなと思います。


活字離れをしている若い世代に読んでほしい

香山リカ氏、小橋建太選手

香山最後に、この本をどんな方に読んでもらいたいとかありますか?

小橋できれば活字離れをしている若い世代に、10代20代に読んでほしいですね。この本に書いてあることは、何かを説いてるといった教育の本ではないのですが、やっぱり読んでいるうちに勉強になると思います。なので、10代20代の方に読んでもらいたいですね。

香山本当ですね。これは別に先生口調で書いてるわけでもないし、本当に親しみやすい口調で書いてるんですけど、ずっと読んでいくと「あぁ、友達にはこうやって接しないといけないんだな」とか、「悩んでいるときにはこうやって解決すればいいのかな」とか、いろいろと知らないあいだに勉強になると言いますか、得るものがけっこうあるんですよね。

小橋そこで失敗したら「ドンマイッ」ですからね。

香山そうですね。この本はプロレスファンじゃなくても読めますよね。

小橋そうですね。三沢さんよく、なんていうのかな「なるようになる」ということを言ってました。それは「ドンマイッ」という言葉と通じるのかもしれないんですけど、とにかく一生懸命にやる。まずそれがあったうえで、あとは運に任せるというのは一緒にいてよく感じましたね。そして、まわりにはあまり弱みを見せない。

香山「やってるぞー」というのを、いかにも「私やってます」ということをアピールする人いますけど、そういう感じでもないですよね。

小橋そうですね。三沢さん自体がそういうことをアピールする人じゃなかったので。

香山ちょっと照れたような感じで、「自分も適当にやってますけど」というようなことを書いてるんですよね。

小橋でも、適当じゃないですよね。やっぱりそれは馬場さんからの受け継がれているものはありますかね。そういうものを感じます。

香山三沢さんの思いとか、馬場さんから受け継がれているものは、また小橋さんをはじめノアのいろんな選手たちにもちゃんと生きているというふうに考えてもいいですか。

小橋そうですね。

香山わかりました。今日はどうも、ありがとうございました。

香山リカ氏、小橋建太選手

小橋選手、香山氏による会見はこうして和やかな雰囲気のなか終わりを迎えた。その後、質疑応答、写真撮影がつづき、最後にお二人から三沢さんへの思いが語られた。

香山今日は本当にありがとうございました。私も実はこういった記者会見は苦手なんですけど、今日はこの本のことをひとりでも多くの皆さんに知ってほしいし伝えてほしいと思い、この場をもうけさせていただきました。大勢の皆さまにきていただき本当にありがとうございます。この本も、いま出版不況と言われるなか、発売初日に増刷が決まったとのことで、多くの方たちもいろいろなブログとかで「ありがとう」とか、本当に感動的なことを書いていただいて、本当によかったなと心から思っております。これからも、この本をたくさんの人に伝えて行きたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

小橋本日はどうもありがとうございました。三沢さんが亡くなってもう1年になろうとしていますが、三沢さんが残した偉大な業績は何年経っても色褪せることはないです。だから、その三沢さんをこれからも、背中を追いかけて頑張って行きたいと思っています。本日はどうもありがとうございました。

体を張って生きる――。三沢さんがまさに人生を賭けて残してくれたあたたかい言葉は、かけがえのないものばかりです。小橋選手をはじめとする現役レスラーたち、香山リカさんのようなファンや、この記事を読んでくださったすべての人たちのなかで、三沢さんは今も、そしてこれからも、永遠に生きつづけるのだと思います。

三沢さん、僕たちに感動を本当にありがとうございました。

いつもこの言葉とともに、忘れません。
「ドンマイ ドンマイッ!」

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