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タバコ・カルチャー再発見!

2010.07.05更新

スモーカー受難の時代、楽しく美味しくタバコ・カルチャー再発見!

水野さん

シーシャ店長の水野さん。6年前、旅先で出会った水タバコのカルチャーに魅せられて同店を開業。日本の水タバコカルチャーの火付け役であり、今や多くの常連がつくコミュニティに。卸業も営み、横の繋がりも生み出している。

タバコが「社会悪」と見られるようになって久しい。嫌煙権運動が異常に盛り上がり、喫煙者たちは迫害され、 立てこもった喫煙者たちに対して「スモーカー狩り」が行なわれる......。かつて作家・筒井康隆が短編「最後の喫煙者」で描いた世界が、現実化していくようだ。

タバコは「百害あって一利なし」。それが当たり前だと思われている。
しかし、かつて喫煙者だった僕は、このたった10年ぐらいの短い期間で、タバコの存在が全否定されるのは、おかしいのではないかと感じている。
喫煙の起源は紀元前10世紀のマヤ文明にさかのぼる。喫煙行為の意義には、宗教的な意味や、共同体への参加の意味、通過儀礼など諸説があり、15、6世紀の大航海時代以降、世界中に広まったとされている。ゆうに3000年ほどの歴史があるのだ。

それだけの歴史的・文化的背景を持つ「タバコ」という人間の営為を、「健康のため」の一言で切り捨ててしまって良いのだろうか――。

そんなことをぼんやりと考えていたときに出会ったのが、下北沢の「シーシャ」という「水タバコ」のお店。

この嫌煙ブームの中にありながら、この店では皆が、羨ましいほど幸せそうにタバコを楽しんでいる。一体この人たちを虜にする「水タバコ」とはどんなものなのだろうか? ミシマガライター森オウジ、足立、松井の三人が体験してまいりました!! (文章・写真 森王子)


水タバコ(シーシャ)って何なの?

フレーバー

棚にはさまざまなフレーバーが並ぶ。なんだか不思議の国の雑貨屋さんに来たようなイメージを連想させる。これからさまざまな味や香りが楽しめるというのもワクワクさせられる。

(森)今日はよろしくお願いします。水タバコについて、そしてタバコ学を教わりにミシマガライター一同でやってまいりました。

水野まず何か作りましょうか?

(森)お願いします。それにしても、すごいフレイバーの数ですね!

水野水タバコは果物や花などの香りを味わうものなんです。いちばんポピュラーなフレーバーはダブルアップルですね。キング・オブ・シーシャと呼ばれています。その次に人気なのは爽やかな香りの、マスカットです。数種類同じ料金でブレンドもできますよ。ミックスジュースを想像しながらやってみるといいと思いますね。

(森)へえ、アップルがもっともポピュラーなんですね、紙巻タバコとはずいぶんちがいますね。紙タバコのフレーバーって、メンソールぐらいしかないですよね。へえ、コーラなんてのもあるんですね!

水野ここには置いてないですが、スイカやグアバなんてのもありますよ。

(森)ほんと、ミックスジュースのお店の感覚ですよね。これらの香りはどうやってつけるんですか?

水タバコのフレーバー

こちらが水タバコのフレーバー。色は赤っぽく、手触りもベタベタしている。甘く、良い香りがしてくる。

水野当店ではエジプトのナハラという会社のフレーバーを使っていますが、香りの素によって変わりますね。果物や植物の場合は、それらから抽出した花蜜、果糖などに煙草の葉を漬け込みます。「煙草の漬物」みたいなものです。ローズなどの花の場合は、アロマオイルにします。その他にもハチミツを入れて、甘みをつけたりもしますね。

(松井)じゃあドリアン風味とかもできるんですか?

水野ドリアンですか。それは・・・好みが分かれそうですねえ(笑)。でも、できると思いますね。今はラズベリーを開発中だと聞いています。

(足立)ピスタチオもあるんですね?

水野はい、味は薄い感じですが。けっこう好きな人がいて、コーヒーのフレーバーにも使われるカルダモンと掛け合わせて楽しまれているようです。甘いのが苦手な人に人気がありますよ。

シーシャ

これがシーシャ。トロフィーのような形をしている。国によって形は異なるらしい。

(森)このシーシャの構造はどうなっているんでしょう?

水野まずフレーバーをシーシャの上のトップヘッドと呼ばれるところに乗せます。そしてアルミホイルで包み、その上に熱した炭を置きます。下のビンには水が入っていて、吸うと煙が水の中をくぐってチューブから出てくる、と、ざっくり言うとそういう仕組みです。

(森)なるほど、小学校のときに理科でやった「水上置換法の実験に似てますね。」

足立:ローズ&ミントという華麗さと爽やかさが同居したようなイメージをチョイス。
森:コーヒーやジャスミンなどさんざん揺れた挙句、レモン&コーラという夏に飲みたくなる香りを。
松井:マスカット&メロンという、緑が共通色のオーダー。どことなく子どもっぽさを感じさせる。

オーダー後、店員さんがブレンドして、セットしてくれます。


シーシャの歴史と出会い

(森)シーシャにはどれくらいの歴史があるんですか?

水野インド発祥で、400年ぐらいの歴史がありますね。もともとの語源は「ガラスのビン」という意味です。水で濾過をする構造は変わりませんが、昔はココナッツの実に竹の棒を差して作られていたようですね。

(森)シーシャってトロフィーみたいですよね。

水野これは国によってデザインが違うんです。イスラムのモスクに立つ「ミナレット」ってわかりますか? 礼拝時刻の告知を行うのに使われる塔なんですが、そのデザインを取り入れているといいます。うちではエジプト製のものを使っていますが、エジプトのはけっこうデザインがゴテゴテしてますね。シーシャを見ればどこの国のものかすぐにわかります。

シーシャ

独特の形をしたシーシャ。店内には実に様々な種類のシーシャがある。

(森)シーシャと出会ったきっかけは?

水野僕は昔から、旅をよくしているんです。学生時代にはイギリスを1年半ぐらい旅して、それからヨーロッパも回りました。そんな感じで旅を繰り返すうち、アフリカを縦断しようと思ったんです。それで、モロッコに行って、エジプトを経由し、ずっと陸伝いに南アフリカを回ろうとしたんですが、エジプトでいわゆる"沈没"をしたんですね。

(森)沈没って何ですか?

水野"外ごもり"とも言われるバックパッカー用語なんですが、海外で引きこもってしまうことです。物価が安くて、社会的なストレスもない旅先の環境に慣れ切ってしまって、移動や観光もほとんど行わずに、一つの街や宿に長期滞在するバックパッカーのことですね。そのとき僕は日本人宿に滞在していたんですが、そこで麻雀が流行ってたんです。そこで、みんなで麻雀をやりながら、シーシャを吸うという文化に出会ったんですね。

(森)へー。

水野それで、なんか香りもいいし、面白いし、ってことで調べてみると当時は専門店が日本にはなかった。それで、ぜひ日本に紹介したいなと思って、すぐに現地でいろいろ調べて、道具を買いこんで、商売の準備を始めたんです。通関の勉強もしましたね。嗜好品なのでそのあたりはきっちりしておく必要があるので。

(森)素早いですね。

水野いろいろ問題もありましたけどね。アラブ人との商売って、難しいんですよ。まず一見さんとは、決して良い条件で商売をしてくれない。いっしょにご飯食べたり飲んだりして、人間関係つくるのを数カ月やってからじゃないと、まともな商売にならない。今となっては6年ぐらいの付き合いがあるので、気心も通じ合ってますが。でも今でも困るのが、なんせ敬虔なイスラム教徒だから、ラマダン(断食)中に仕事の話をしに行くと、全くやる気がないんですね(笑)。

(森)まさに異文化ですね。

水野年に多いと4~5回はエジプトに買い付けに行きます。ウチが取引しているナハラとはほぼ独占的に商売できるので、大量のフレーバーを一気に入れることができます。卸もしているので全種類を集めておかないといけないですからね。それゆえこれだけのフレーバーを確保できているんです。

水タバコにあつまる人間模様

シーシャに集まる人

旅人や外国人、会社帰りのOL、おじいちゃんまでと、いろんな人が集まってくる。フレーバー同様、シーシャに集まる人は様々だ。

(森)お店にはどんな方がいらっしゃるんでしょう? 本当に明るい雰囲気ですよね。

水野来る人はほぼ毎日来ますね。あと1号店と2号店では、また別のコミュニティができています。リラックスできる雰囲気の2号店はアラブ人が多いんですよ。店にいる人全員が外国人なんてこともありますね。アラブの国の大使館の人も来ますし、大使館ナンバーの車が店前に並ぶなんてこともあります。

(森)以前、来たときに、目の見えないお客さんがいたんです。店員さんと常連さんが「点字のメニューを作ろうか」と話されていて、なんだかとても温かい場だなって思いました。
世間は今、嫌煙ブームですけれど、このお店には純粋にタバコを楽しむ人が集まってくる。ここには、タバコを吸う場所だから得られる安らぎや豊かさがあるのかもな、と不思議に感じたんです。

水野そうですね。お店を作った当時は、「ガラの悪い人が集まったらどうしよう」なんて心配もしましたが、取り越し苦労でした。そもそもシーシャは、落ち着きのない人には向かないんです。1時間以上かけて、ゆったり吸うものですから、必然的に落ち着きがあって、自分の時間をゆったり過ごせる人が集まってくる。そういう人って穏やかな人が多いものでしょ? 
常連で80歳ぐらいのおじいちゃんがいるんです。ココアをすごく甘くしたものを飲みながらタバコを吸う人なんですが、あるときぱたっと来なくなった。

(森)ほうほう。

水野それで「どうしたんだろな」ってみんなで心配してたんですが、あるときひょっと現れたんです。話を聞くと、奥さんが亡くなられたって言うんです。それで、生前にその奥さんが、この店の椅子が固いからって専用のクッションを作ってくれたみたいで、それを嬉しそうに今でも使ってらっしゃいます。この店にそんな愛着を持っていただいているというのが、本当に嬉しいです。

(森)なんだか、昔ながらの街にあって、近所の人が集う店みたいですね。

水野お、できましたね。ではお試しください。

ここからはミシマガライターズによるシーシャ体験です!!

ノンスモーカーも楽しめる水タバコ

足立さん、松井さん

まずは一口。足立さん(左)、松井さん(右)いかがでしょうか?

(森)では、さっそく試してみましょう。ちなみにオーダーは、

足立:ローズ&ミントという華麗さと爽やかさが同居したようなイメージをチョイス。
森:コーヒーやジャスミンなどさんざん揺れた挙句、レモン&コーラという夏に飲みたくなる香りを。
松井:マスカット&メロンという、緑が共通色のオーダー。どことなく子どもっぽさを感じさせる。

水野最初はできたてのマックシェイクを飲む感じをイメージしてください。緊張させずに喉をリラックスさせて吸ってくださいね。そして肺に入れるよりも、口と喉を使って香りをもわっと出す感じをイメージしてください。もちろん肺に入れてしまっても大丈夫です。そして持つところはできるだけ下を持つようにするとサマになりますよ。

松井さん

松井さんは終始青い煙を吐いています!

ーー吸い込むと、煙が水の入ったビンの中を通り、ボコボコボコという独特の音がします。

(足立)コツをつかむまでが難しいですね。

(松井)ゴホゴホ

水野煙を肺まで入れてしまうと、青白い煙がでるんです。そうではなくて、白くてもわっとした煙を出すのがポイントです。それを鼻と口から出すと香りがしっかり味わえますよ。あと、燃焼時間が1時間以上と長いので、そのまま放置しても大丈夫です。ゆっくり吸ってください。

(足立)なんか口の中がミントの香りでサッパリしますね。

(森)コーラ、なのかな? という感じです。あまりコーラの味は感じないですね。

水野レモンの方が味が強く出てきますからね。調合する人の能力により左右されます。あと、炭の量で煙の量も加減できるんです。それに応じて時間も変わっていきますね。

(森)そうですね。レモンのサッパリ感のほうが感じる。

(松井)なんとなくコツがわかってきました。

水野さん

さすがはマスター・オブ・シーシャ。

水野僕はもうプロなんで(笑)。自分の前が煙でまったく見えなくなりますね。

(森)すごいですね!

水野ここのバイトで輪っかを作るのがすごい上手い人がいますよ。輪っかの中にさらに輪っかを通すこともできます。遊びでは面白いけど、そんなに上達されると「え? そんなに暇なの?」と思ってしまいますよ(笑)。仕事しないで何してんのと。

(足立)私は喫煙経験が少しだけありますけど、ほとんど非喫煙者ですね。紙巻タバコも全然体に合わなかったです。タバコはそれ以来ですが、ほんのりとした甘さの中にミントの爽やかさが混ざっていて、初夏の気分に合うかんじかな。

(森)とにかく普通の紙巻たばことは全く異質の体験ですよね。まず全然タバコ臭くない。


足立さん

ローズミントがよく似合う足立さん。コツをつかんできました。

水野そうですね。こうしたフレーバータバコは基本的に最初にタバコ葉を蒸して匂いの要素を取ってしまいますからね。その後で香りや味をハチミツとかに漬け込んで出すのです。昔はノンフレーバーだったんです。それに個人がハチミツとかで香りや味を付けて吸っていた。それをナハラという会社が工場で生産して作り出したのが100年前。そうしてフレーバータバコが商品として出るまではシーシャは若い人からの人気もなく、廃れつつあったのです。でもナハラがいろんなフレーバーを生み出して、挽回してきました。ここ20年くらいのことと聞いています。

(松井)口の中が甘くなってきましたね。マスカットの甘くて爽やかな味が印象的です。香りを食べている感じですね。

水野甘くなりますね。シーシャを吸ってからキスすると甘いと言われます。普通のタバコでは臭いと言われますけど。それだけ口当たりはいいものですね。


「体にいい」はウソ。でも...?

(森)健康への影響はどんな具合なのでしょう?

水野ニコチンは微量ですね。タールは水に溶けてしまいます。変な説で体に悪くないなどと、たまにささやかれてますが、あれは嘘です。基本はタバコですから。体にいいと思ってる人すらもいて、びっくりです。

(森)なるほど、一回で吸う量というのはどれくらいなんです?

水野普通のタバコ1本のタバコ葉の量は1グラムです。でも水タバコの場合は10グラムになるので、煙の量としては普通のタバコ3~4本ぐらいですね。決して少ない煙の量ではありません。でも、感覚的な話なのですが、たとえば僕の場合、かなりのヘビースモーカーでセブンスターばかり吸っているのですが、たまに水タバコに替えると喉の調子がいいですね。

(森)そうなんですか! やっぱり違いがあるんですね。

森

昔とったキネヅカとでも言うか、僕の上達は早い。

水野それでたまに紙タバコ禁煙しているぐらいです。やっぱり水たばこはタバコ葉も湿っているし、水にも通すので、しっとりします。

(森)僕は元喫煙者で、もしかしてこれを吸ってしまうと、また中毒生活に戻ってしまうのかな、という危機感があったんです。でも、全くならなかったです。たまに下北に来たらシーシャさんに寄ろうかな、ぐらいで。タバコを求めてコンビニに走ったりもなかったですし。(笑)

水野水タバコを常用しようとするとまずセットが面倒ですしね。なのでここに来て吸う、というスタイルになるのかもしれません。ここのバイトのマイキー(アメリカ人)はノンスモーカーでシーシャしか吸わない。

(森)とにかく紙巻タバコとは、少し別物なんですよね。たまに吸いに来る、ぐらいの楽しみ方にとどめておけるのは僕にとって、タバコを常習せずに、その楽しみをたまに味わえるというのが魅力だと思います。


シーシャから見えること

マイ吸口

常連のマストアイテム、「マイ吸口」。これを買えば、繰り返し使えるうえ、全てのフレーバーが100円引きに。部屋のオブジェにもGOOD。

水野あと、シーシャからだけ、見えるものがあります。たとえばもう5~6年使っているシーシャがありますが、だいぶくすんでいます。これは別にいい味が出ているのではなくて、金属が高騰していたのでメッキが甘かったんです。たとえば日本にいたら、よほどのことがないかぎり、特定のものの供給が一切途絶えるなんてことないじゃないですか?

(森)そうですね。

水野でもむこうに行くとそれがざらにあるんです。エジプトに行くと、物価なんて信じられないくらい変動するし、イスラエルとパレスチナの関係もダイレクトに生活に影響してきます。たとえば以前、パレスチナとイスラエル間の物資供給ルートが国勢の影響で絶たれたとき、エジプトの物資がごっそりなくなったことがありました。シーシャも例外じゃなく、全てなくなってしまって、買い付けに困ったこともありましたね。

(森)なるほど、なるほど。エジプトでは水たばこが吸えるお店がやっぱりたくさんあるのですか?

水野そうですね、2~30メートルおきにあります。だから町中がシーシャの香りで包まれますね。コミュニティの数では日本の比ではありません。みんなそこで顔なじみと会って、話をして、好きなフレーバーを楽しんで行きます。

シーシャ下北沢

今夜も笑顔が絶えないシーシャの夜は更けてゆきます。お店の場所や開店時間はホームページを。http://shisha-tokyo.com/

(森)素敵です。なんだかこのお店では時間の流れが外とは違いますね。

水野すぐに飲んでしまえるコーヒーなどと違って、シーシャは長い時間をかけてゆっくり味わうものです。自分の気の済むまでシーシャを楽しむ、それだけで楽しめるというのはシーシャだけの時間の使い方だと思いますね。
そして、シーシャはコミュニケーションツールになるんです。ご覧の通りお店がぎゅうぎゅうで、いろんなフレーバーがあるものだから「何吸ってるんですか?」なんて会話が生まれてゆく。常連ではここで知り合った人がほとんどです。それに、暇なときに来たら、いつでも誰かに会えるという場ですね。その愛着から、客からバイトになる人が多いです。アメリカの留学生のマイキーにいたっては「ここがなかったら日本にいない」とまで言っています。

(森)ほんと、百害あって一利なしなんてことはないんですね。いろんな文化的なプラス面があったから、タバコの文化は世界中に今も根づいている。今日は面白いお話をたくさんありがとうございました。そして、みなさんもぜひ一度、シーシャを味わってみてくださいね!

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