特集

出羽三山で、山伏修行(前編)

2010.08.30更新

小関宥潮先生、梅田和幸班長

先達してくださる羽黒山伏の小関宥潮先生(右)と梅田和幸班長(左)

みなさん、猛暑の夏、いかがおすごしでしょうか。
8月も後半にさしかかり、すでに夏休みをとられた方も多いと思います。

アダチの場合、夏休みといえば、5年前からご縁があって、毎年、山形県にある出羽三山の夏山行に参加しています。

「夏山行」といっても、本格的な修行ではなく、出羽三山をめぐる大人の遠足といった方が、イメージしやすいかもしれません。

出羽三山への参拝は、昔から西の伊勢詣りに対して、東の奥詣りと称されてきました。
出羽三山の三つのお山――羽黒山(現在)、月山(過去)、湯殿山(未来)――をめぐることにより、生きながらにして生まれ変わることができると言われています。

今月の特集では、今流行りの「山ガール」ならぬ「山伏ガール」のアダチが出羽三山の魅力をお伝えします。

(取材・文:足立綾子、写真:寺井政智、取材協力:慈光講東京班


出羽三山とは?

約1400年前に蜂子皇子が開山

出羽三山を開山した蜂子皇子(はちこのおうじ)は、祟峻天皇の第一皇子で、聖徳太子の従兄弟にあたります。592年の蘇我馬子の乱で祟峻天皇が暗殺されたのをうけ、難を逃れるために海路北へ。佐渡を経て、由良の浜(現在の山形県鶴岡市)に漂着した蜂子皇子は、三本足の烏に導かれて、羽黒山に登り、羽黒権現を感得。続いて月山、湯殿山を開山したそうです。開山後、修験道の祖・役行者、最澄、空海などが来山し、修行を積んだとも伝えられています。

「三語」と「拝詞」

出羽三山夏山行では、各拝所で「三語」と「拝詞」を独特の節回しで各三回唱和します。簡単にいうと、神様に対して丁寧にご挨拶する行為です。「三語」は祓詞・神詞・賀詞から成り立っています。

祓詞「諸諸の罪穢(けが)れ 祓(はら)い禊(みそぎ)て清々(すがすが)し」
神詞「遠つ神笑み給へ 稜威(いず)の御霊(みたま)を幸(さきは)へ給へ」
賀詞「天(あま)つ日嗣(ひつぎ)の榮え坐(まさ)むこと天地(あめつち)の共無窮(むたとこしえ)なるべし」


「拝詞」は「綾(あや)にのご真言」とも呼ばれています。

「綾に綾に奇(くす)しく尊(たふ)と 月山(つきのみやま)の神の御前(みまえ)を拝(おろが)み奉(まつ)る」


この「月山」の部分を「出羽(いでは)」「湯殿山(ゆどののみやま)」など、拝所によって変えます。なお、「三語」と「拝詞」は神前での正式なご挨拶として、出羽三山以外の全国の神社でも応用できるそうです。

The お山スタイル!

出羽三山夏山行では、白装束をまといます。下着を含めて衣類はすべて白。その上に白衣・輪袈裟(わげさ)・注連(しめ)を着用します。首からさげる注連と左手に結ぶ五色の組みひもは、魔よけとして身に着けます。杖を手に持ち、鈴をくくりつけ、山笠を被れば「お山スタイル」の完成です。いざお山へGO!

現在の山・羽黒山

羽黒山は標高414m。蜂子皇子を導いた三本足の烏の羽の色にちなんで「羽黒山」と名づけられました。山頂の出羽(いでは)神社には、出羽国の産土神である「伊氐波神(いではのかみ)」と衣・食・住を守護する「稲倉魂命(うがのみたまのみこと)」がおまつりされています。門前町・手向(とうげ)には宿坊が軒を連ね、全国から集う講の宿泊施設・山案内として現在も機能しています。羽黒山は大峯山、英彦山とともに日本三大修験山のひとつに数えられ、出羽三山信仰の中心地です。羽黒山山頂まで全長約2km、標高差270m、2446段もある石段を登り、現世の穢れを祓います。

2446段の石段を裸足で歩く

出羽三山夏山行

車中泊を経て、羽黒山表参道に9時半に到着。石造りの鳥居をくぐり、右手にある「天地金神社」へご挨拶することで、形だけですが現世のお葬式をします。

出羽三山夏山行

晴れて(?)生きながらにして死者になった私たち。随身門をくぐって羽黒山のご神域に入ります。はじめは「継子坂」といわれる下り坂の石段です。裸足になり、足の裏にじかに感じる石段がひんやりしていて気持ちいい。(ごくたまに出現する細かい砂利道では、強力な足ツボマッサージをされているようで、ちょっと痛い......)

出羽三山夏山行

しばらくすると祓川にかけられた「神橋」を渡ります。右手に見えるのが「須賀の滝」。昔、参拝者は祓川で禊ぎをして身を清めたそうです。「須賀の滝」の下にある「須賀神社」でお参りします。

出羽三山夏山行

注連縄が張られているのが羽黒山のご神木「爺杉」(推定樹齢1千年以上)。そのすぐそばに国宝「五重塔」があります。釘をいっさい使わずに建てられた東北地方最古・最優秀の木造建築で、平将門が創建したと伝えられています(現在の塔は約600年前に再建)。

出羽三山夏山行

ここから「一の坂」スタート。山頂まで本格的な石段登りがはじまります。樹齢300~600年の杉木立のなか、ずーっと先のほうまで続く石段。途中休憩をはさみつつ、「一の坂」「二の坂」をもくもくと登っていきます。

出羽三山夏山行

「あれ? 氷の旗が見えてきた!」

「二の坂」を登りきったところにある「二の坂茶屋」で軽食タイム! ここの名物は「力餅」。庄内のお米とお水でつくったお餅の味は格別。他にも味のしっかり染み込んだ玉こんにゃく、かき氷やお蕎麦もおいしい。お天気がいい日は茶屋から庄内平野を臨むことができます。

聖地・南谷を経て頂上へ

出羽三山夏山行

お腹も満たされたところで11時頃出発。続く「三の坂」を登る前にちょっと横道に入り「南谷」に行きます。「南谷」はあまり知られていない羽黒山の聖地です。山伏の方々が修行中に英気を養うために訪れる場所だそうです。しっとりと水分を含んだ柔らかい土のうえを500mほど歩いていきます。

出羽三山夏山行

歩くこと十数分で「南谷」に到着。ここでのお目当てはストーンサークル。どくだみなどの草が青々と生い茂っている開けた空間に点在している石。石。石。この石の上に立って、しばし休息します。一人専用の小さめのものから二、三人立てる大きめのものまで、大きさもさまざまです。足の裏からじんわりと伝わってくる温かいなにか。車中泊でほとんど寝ていない私たちの重い身体がすっと軽くなる不思議な場所です。

出羽三山夏山行

「この場所は空からエネルギーが降りてきているんだよ」

との小関先生の言葉をうけ、真似して空に向かって手をかざしてみると、手のひらにピリピリしたものを感じます。傍目からみると、ちょっと怪しいですね(笑)。

出羽三山夏山行

来た道を戻り、最後の坂「三の坂」へ。「南谷」で充電したことで、日頃の疲れや睡眠不足で重かった足取りが、ぐんと軽くなり、石段登りも終盤なのにさくさく歩が進みます。13時頃、頂上の鳥居に到着。手水舎で足のよごれを洗い、手と口を清めます。

出羽三山夏山行

開祖・蜂子皇子をまつる「蜂子神社」へ。昇殿してお参りできます。気持ちがしゃんとする雰囲気の神社で、「南谷」と同じくらいおすすめの場所です。そのあと、日本最大級の大きさを誇る茅葺屋根が目印の「出羽三山神社三神合祭殿」にて祈祷をうけます。月山・湯殿山は、豪雪で冬季は閉山するため、羽黒山に三山の神様をあわせておまつりしています。「三神合祭殿」の前にあるのは「鏡池」。ここから500枚もの銅鏡が発見されたことから「鏡池」と呼ばれています。

一日目の夏山行はこれにて終了。宿坊で早めに就寝して(翌日の起床時刻は1時半!)、月山・湯殿山登拝に備えます。続きは後編で!

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