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出羽三山で、山伏修行(後編)

2010.08.31更新

過去の山・月山

月山は標高1984m。山頂の「月山神社本宮」には、夜・海・魂や死後の世界を司る「月読命(つきよみのみこと)」がおまつりされています。また、祖霊安鎮の山としても崇敬され、希望者は先祖供養をすることができます。8合目から往復約8時間かけて本格的な登山に臨みます。

あの世に一番近い場所

出羽三山夏山行

1時半に起床し宿坊を2時半に出発。3時半に月山8合目(海抜1400m)から山頂を目指します。夏でもかなり肌寒く、各々ウィンドブレーカーやポンチョを着込んで、防寒対策。ほぼ真っ暗闇のなか、先頭を歩く先達さんがさす懐中電灯の微かなあかりと前に歩く人の気配を頼りに、御田ヶ原(みだがはら)の湿原に設えられた木道を歩き、「月山中之宮・御田原神社」へ。

出羽三山夏山行

だんだん空が白んできました。靄がかかっているからか、まるで月のような姿で太陽が顔を出しました。雨が降ることが多い月山では、なかなか拝めないご来光を目に焼きつけます。

出羽三山夏山行

月山には夏でも雪渓が9合目の手前と山頂に残っています。この雪渓を越えてしばらくすると9合目の山小屋「仏生池小屋」に到着します。時刻は5時半になりました。

出羽三山夏山行

「仏生池小屋」で朝ごはんを食べます。ここの名物は山菜ラーメン。薄味のスープがうまい! 塩気のある汁物で身体を温めます。自家製の味噌でつくったなめこ汁や月山の天然水で淹れたコーヒーなど、ここのごはんは、おいしいものばかり。

ご先祖様にエアメールを出す

出羽三山夏山行

9合目では濃かった霧もだんだん晴れ、太陽もかなり高くなってきました。月山の裾野や遠方の景色まで、見渡せられるのは本当に珍しい(私自身、6回目の参加にしてはじめて見る景色が多かったです)。今回は一度も雨に降られず、お天気に恵まれました。

出羽三山夏山行

月山最大の難所「行者返し」。昔、役行者が月山登拝の折り、月山大神に修行の未熟さを諭され、羽黒山に返されたとの言い伝えがあります。巨石と巨石の間を縫うように慎重によじ登っていきます。

出羽三山夏山行

やっと月山の尾根に辿り着きました。右手には湯殿山が見えます。ここは風の通り道でいつも強風が吹いているのですが、この日はとても穏やか。木道が現れると、頂上はすぐそこです。

出羽三山夏山行

8時頃、月山頂上に到着。ここから先は撮影禁止になります。入り口でお祓いをうけてから「月山神社本宮」に参拝します。ご祈祷をうけたあと、お社の屋根にあるふたつの鏡(日天と月天)にむかって、お賽銭を投げます。お賽銭が鏡に当たったら、願い事がかなうといわれています。

場所を移して、希望者は先祖供養を行います。小関先生曰く「先祖供養とは、ご先祖様にエアメールを出す」こと。「おかげさまで、家族みんな元気です。ありがとうございます」とおじいちゃんとおばあちゃんに手紙を書くような気持ちで手を合わせて祈ります。

未来の山・湯殿山

「湯殿山神社本宮」には、山の神様「大山祗命(おおやまづみのみこと)」、五穀豊穣・商売繁盛・縁結びなどの神様「大巳貴命(おおなむちのみこと)」、医業・薬・温泉・酒造の神様「少彦名命(すくなひこなのみこと)」をおまつりしています。ご神体は、巨石とそこから湧出しているご神湯。湯殿山自体が神聖な場であるため、ご神体に人の手を加えることが許されず、社殿を設けていない珍しい神社です。湯殿山のご神湯を産湯に見たてて、生まれ変わり・再生の山とされています。また、「千と千尋の神隠し」のモチーフになったとも言われています。

出羽三山夏山行

休憩所前に停車している専用バスに乗り込み、湯殿山へ向います。ご神域は撮影禁止。履物を脱いで裸足になり、入り口でお祓いをうけてから「湯殿山神社本宮」に参拝します。

ご神湯の湯ばなで赤褐色に染まった巨石の前でご祈祷をうけたあと、こんこんと湧き流れるご神湯に足を浸しながら、巨石を登っていきます。巨石の真裏にある、梵字川の激流が急落下してできた滝をおまつりしている「御滝神社」に向かって、参拝。今回は時間があったので「三語」「拝詞」を唱和したところ、ざあーっと雨が激しく降ってきました。神職さんから「雨が降ったのは、神様が願いを聞き届けてくださったからですよ」と教えていただきました。お守りなど、お土産を見繕っているあいだに、ものの数分で雨がやみました。こんなことがあっても不思議ではない出羽三山であります。

出羽三山夏山行を終えて

5年前、出羽三山にはじめて訪れたとき、ご神気みなぎる場所では、木々がこんなにも活き活きといるのかと、その緑の濃さに圧倒されました。出羽三山の息吹を吸い込んで、元気いっぱいになるときもあれば、お山からみぞおちの辺りに、ずどーんと気合を入れてもらうようなときもある。お山からいただくなにかはその年によって変わるから、毎年足を運んでしまうのかもしれません。個人的に思うのは、出羽三山は「家内安全」の山だということ。親から子、子から孫へと受け継がれている講に加わらせていただいていることもあるのか、自然と家族を大切に思うようになりました。とはいえ、出羽三山の生気あふれる自然は理屈抜きにして素晴らしいので、是非一度訪れて、あなたの五感で感じてみてください。

出羽三山のご縁年

出羽三山には、羽黒山は午年、月山は卯年、湯殿山は丑年とそれぞれの開山の年にちなみ、ご縁年があります。なかでも丑年は出羽三山のご縁年として、この年に参拝すると、一回で十二回分のご利益をいただけると言われています。

おすすめのお土産

出羽三山夏山行

蜂子神社のお札
魔除けのお札として、お財布に入れるなどして日頃から身につけます。また、山伏の知恵として、頭痛がするときに、お札の文字が書いてある方を眉間につけ、痛みの緩和に役立てたりする使い方もあります。

湯殿山のおあか
おあかとは、湯殿山のご神湯の湯ばなを留出させたもの。小さじ1/3~1/2をお風呂にいれれば、自宅で湯殿山のご神湯を味わうことができます。

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