今月の特集1

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? Yeah! Yeah! Yeah!!

2013.04.02更新

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? YEAH! YEAH! YEAH!!

 2日目

 『みんなの家。』著者の光嶋裕介さんと、株式会社はてな代表の近藤淳也の本誌編集長の三島邦弘による座談会。
 昨日は、光嶋さんから「閉じた世界」が「みんな」(パブリック的なもの)へと開かれていくことの大切さが、建築家の視点から語られました。
 そして、近藤さんから、「ネットサービスは市役所のお仕事みたい」という驚きの発言が。はたしてその真意とは?

(文:三島邦弘)


はてなの社長は市長さん。

近藤たとえば、ブログに悪口を書く人もいるじゃないですか。そうすると書かれた人から「消してください」とリクエストが来ます。その悪口を消すべきかどうか、って一概には判断しづらい。

光嶋重い・・・ですよね。

近藤ええ。言論の自由もあれば、誹謗中傷からも守りたい気持ちもある。その間で、消すか消さないか、自分たちの判断にぎゅーっとかかってくるわけです。

三島そういうの、そうとう来るんじゃないですか?

近藤はい、来ますね。警察がいるわけでもないので、自分たちが判断するしかない。

三島はぁ~、つまり、はてなっていう一つの市をつくってるんですね。

近藤よく「はてな村」と呼ぶ人がいますけど、人口的には市ですかね。

三島近藤さんは、市長さんですね(笑)。ところで、総ユーザー数はどれくらいですか?

近藤登録者数は、300万人です。

光嶋大都市ですね~。

三島そんな大きな市の市役所的役割もしなければいけないなかで、でも、けっしていわゆる「市役所」なわけでもありませんよね。

近藤あ、あくまでも運営主体が民間企業なので、自分たちの意図で変えていけるわけですから、民主主義ではないんですね。ただ、けっこう僕たちはユーザーさんの声を訊くことも確かです。たとえば、アイデア市場「はてなアイデア」というのがあって、ユーザーさんからの要望を聞きながら運営をしています。もちろん、結局は自分たちが決めていますが。

三島なるほど。

近藤結局、はてならしさって何という話になっています。
それはなんていうんでしょう、さっき光嶋さんは、ちいさな家から「みんなの」という「広がり」を考えられましたが、僕たちは広いものはつくったんだけど、結局見えてくる「こっちに行きたい」はけっこう「狭い」。もっとローカル性をどう出していくか、集まっていただいた方の良さをどう引き出していくか。
今ですと、おもしろい議論している方が多いんで、そういう方の良さを出していこうと。

三島すごいな~。はてなユーザーの方々は、おおらかな市長さんのいる街に暮らせて幸せですね。

近藤どうでしょう(笑)。
最初の意図もあれば、たまたま集まった方々の雰囲気と呼応しながら見えてきている部分もあると思います。

三島いい市長さんだなぁ。

システム? それとも人?

光嶋ただ、市役所と違う点は、会社として利益を出し続けなければいけない、ということですよね。

近藤ええ。

光嶋300万人が対価を払ってサービスを享受し、はてなが成り立ったり、成長していく。そういうなかで、『「へんな会社」のつくり方』の頃と比べてると、会社の社員の人数も多くなり、やれることも大きくなったでしょうが、300万人でなくて、日本全国民がはてなを知るようになって、というふうに拡大していくと国内では限界がきますよね。

近藤はい。

光嶋そのとき、ターゲットを海外へと拡大することをめざすのか、それとも・・・。そこらへんのビジョンはどうなんでしょう。

近藤ああ~、なるほど。

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? Yeah! Yeah! Yeah!!

『なけらかな社会とその敵』(鈴木健、勁草書房)

光嶋建築だったら、あまりに個々に細分化されているから、それぞれがもう少し開いていけば鈴木健さんの言う、「なめらか」(@鈴木健『なめらかな社会とその敵』)に関連し合えるようになっていくだろうと。建築的に。プライベートとパブリックのボーダーを緩くしたほうが、するするするといけるのではと。

それを探っていきたいのですが、今のはてなの話を建築に置きかえると、デカクてみんなが来れるような体育館をつくればもう十分というわけではないですよね。

近藤はい。

光嶋はてなという会社の場合、「ヘンな会社」から始められ、今の状態がベストか、もっと大きくなりたいのか、本当はちょっとデカクなり過ぎて、身動きがとりにくいと思っているのか。
そのあたりの本音を聞かせてください(笑)。

近藤サイズについては、方向性は二つあると思います。わりと両方ありだな、と思うときがあります。
ひとつは、すぐれたシステム、プラットフォームをひとつ作って、世界中の人に使ってもらう。一番でかい建物をつくる、みたいな。グーグルやフェイスブックのように世界中の人が使っているひとつのシステム・・・。

光嶋そういう野心はありますか?

近藤できるならやってみたい、という想いは、一設計者としてはすごく思います。いっこくのプログラムを書いて、世界中の人が使ってくれるというのは、憧れではあります。
建築家的な視点でいうと、自分のつくった建築物を世界中の人が使ってほしいという願望があります。

三島そっか~。わかります。

近藤これはシステムのレイアーの話です。でも結局、ものをつくるとそこに人が集まってきて、人がコンテンツを生み出す、人の上に情報が乗っかる。なんというんでしょう、何かができるんです。「コミュニティ」といいますか。
そのとき、その「コンテンツ」や「人」をどこまで生かすかによって、プラットフォームをめざすか、それともそこの「人」を生かしたものになるかが決まる。

三島システムか人か、これはものすごく大きな分かれ目ですよね。

近藤ええ。たとえば、検索エンジンには人はいないじゃないですか。ふらっと訪れて、おしゃべりする場所じゃない(笑)。

一同

近藤検索してなるべく早く別の場所に行く。できるだけ「いない」場所なんです。

光嶋検索エンジン自体は。

近藤ええ。フェイスブックは、人が多くいるように思えますが、個別のやりとりはまさに「個別」的で、どこかにいくと人がわんさかいて、出会えるというものではない。連絡帳みたいなものじゃないですか。

光嶋なるほど。

近藤ツールっぽいんです。ただ、そういうツールっぽいものが広がりやすいんですが、日本企業にはなかなかそこまで行く会社がない。

会社なんて最後はつぶれんです。けれど・・・

三島だけど、ユーザーさんは、はてなを支持してるわけですね。

近藤そうですね。それでも、はてなが好きだということで集まってくれているコミュニティーがあり、そこから生まれている情報に面白さがあるので、それを生かしていきたいですね。そして、隣接領域をつくっていきつつ、大きくしていきたいです。

三島規模感は出すわけですね?

近藤う~ん、それ以外の選択をあまり考えてなかったんで・・・。

三島規模を大きくしていくと、どうしても濃度が薄まると思うんです。「はてなエキス」「ミシマ社エキス」みたいなものがあるとすると、最初に支持くださった方々が、「あのエキスの濃さが好きだったのに、最近なんだか薄くない?」ということになりかねないですよね。

近藤実際、はてなにも、そういう局面がありました。

三島ありましたか?

近藤ええ、プラットフォームを増やそうとしすぎて・・・。
ただ、逆説的にいうと、今いる人で十分ですというとさびしいじゃないですか。

三島ええ(笑)

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? Yeah! Yeah! Yeah!!

『移行期的混乱』(平川克美、ちくま文庫)

光嶋平川克美さんの言う「移行期的混乱」で、つまり縮小していく社会で、成長していくことの意味を問い直さないといけない。
成長していくだけを良しとするような単純な評価基準では、怪しくなっていくんじゃないのか、と。短絡的に勝ち組を目指すだけの社会というものは、貧しいんじゃないか、と思います。
300万人を多くしていくという以外の何を良さにしていくのかなと。規模以外の何を。

近藤僕は『なめらかな社会とその敵』を読んで、企業活動って膜がでかくなったり小さくなったりするだけのことじゃないかと思いました。

光嶋なるほど。でかくなるだけが良しじゃないし、常に動いている動的平衡だと。

近藤核と膜の話が書いてありますけど、人の集団のリソースを囲っているのが会社で、経営者が核にあたる。で、会社の成長は何かといえば、膜の中にいる社員の数を増やしたりして、それを囲えるだけのお金が入ってくるシステムをつくる活動じゃないですか。

けど、つぶれない会社はないし、ばーと大きくなってもすぐにひゅーとなくなっていく会社もあるわけで(笑)。というか、たぶん、最終的には全部そうじゃないですか。ずっと大きなままの会社なんてないし、ある程度のスパンでみたら国も同じですよね。そういう無常観(笑)があります。

三島無常(笑)。いい言葉ですね。

近藤無常なんですけど、せいぜい膜が大きくなったり小さくなったりするだけだと思う中で、健全な成長意欲を持つことは大事だと思う。

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? YEAH! YEAH!YEAH!!

(たまたま同席していた「みんなのミシマガジン 紙版」デザイナーの矢萩多聞さんが、突然質問)

多聞ミシマさんは「みんなのミシマガジン」を大きくしたいんですか?

三島したいしたい。国民的雑誌に!

一同


*明日、「みんなのミシマガジン」のコンセプトが、参加者の「みんな」によって練りこまれていきます(皆さんに感謝!)。 

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光嶋裕介(こうしま・ゆうすけ)
1979年米ニュージャージー州生まれ。早稲田大学理工学部建築家卒。大学院修了後、独ベルリンの建築事務所ザウアブルッフ、ハットン、アーキテクツに4年間勤務。2008年に帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。2012年より首都大学東京助教。ドローイング集『幻想都市風景』(羽鳥書店)、著書に『みんなの家。』(アルテスパブリッシング)。
http://www.ykas.jp/index.htm

近藤淳也(こんどう・じゅんや)
1975年三重県生まれ。京都大学理学部卒。2000年同大学院中退後、2001年7月に「人力検索はてな」を開始し、有限会社はてなを京都で設立。2003年「はてなダイアリー」サービス開始、2004年2月に株式会社はてなに改組。現在、京都に本社、東京に本店がある。著書に『「へんな会社」のつくり方』(翔泳社)。
http://www.hatena.ne.jp/

三島邦弘(みしま・くにひろ)
1975年京都生まれ。2006年10月に株式会社ミシマ社を設立。原点回帰の出版社を標榜し、現在、東京・自由が丘と京都で活動中。「みんなのミシマガジン」編集長。

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