今月の特集1

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? Yeah! Yeah! Yeah!!

2013.04.03更新

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? YEAH! YEAH! YEAH!!

 3日目

 「プライベートとパブリックのボーダーを緩くしたい」と、建築家の光嶋裕介さん。
 「企業活動は無常。それでも健全な成長意欲は大事」と、株式会社はてな代表近藤淳也さん。
 鼎談は、「拡大か、縮小か」「システムか、人か」という本質的な問いを含みつつ、核心へとじわりじわりと近づいていきます。
 今、「みんな」の意味を問い直すことは、僕たち一人ひとりのこれからの生き方にも直結していくことでもあると感じています。
 3日目の今回は、本誌「みんなのミシマガジン」のあり方を考えることを通して、「これからのみんな」像へと迫りたいです。

(文:三島邦弘)


「みんなのミシマガジン」、世界をめざす。

(「みんなのミシマガジン」を大きくしたいか、と訊かれた三島。間髪おかずに、「国民的雑誌にしたい!」と答えた、その真意とは??)

近藤そうですか、本当に<みんな>のミシマガジンなんですね。

光嶋マスメディアの意味の<みんな>?

三島そうですね。自分のなかにどこかあるんです。世界中の人が共感してくれるかも、ということを無根拠に信じたい自分がどこかにいます。

光嶋それは先ほどの近藤さんに似てるんですか? 「誰もが使えるシステムをつくってみたい」っていう。

三島はい。一編集人として、それはがないとはいえません。

近藤へ~

三島昔は、それがモチベーションだったりしたんです。絶対にたどり着かないところをめざす、みたいな。

近藤いつ頃ですか?

三島若かりし頃です。20代前半? 20代ずっと、そうだったかなぁ。

規模とスパイス

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? YEAH! YEAH! YEAH!!

光嶋全国民を取りこもうとするミシマガジンと、ベストセラー至上主義をめざすことの違いをどう捉えていますか?

三島結果が重要なわけではないんです。
そこに到達するまでに出会った人たちとのかかわりが大事なんだと思います。

光嶋なるほど。

三島じゃあ、共感の積み重ねでそこまで行くのかというと・・・それは、わかんないんですけど(笑)。
ただ、わかんないですけど、そうありたいという気持ちはあります。
といいつつ、まあ、大ベストセラーはいいかな、という想いが最近は強いんですけど。

光嶋おい、どっちや(笑)

近藤折り合いがついたんですかね。

三島ですから今回、「みんなのミシマガジン」をサポーターの方々と運営することにしたのは、そういう意識からです。顔の見えるくらいの限られたサポーターの方々へ、想いを込めた「紙版」をお送りし、喜びを共有したいな、と。

光嶋規模って大事だと思うんですよ。
建築でいえば、300メーター四方くらいが地域として、誰が住んでいるとかまで認識できる。その人たちをひとつの共同体とみれば、ここに公園があって、ここに学校があって、と発想できると言われています。
ですから、ひたすら規模が大きければいいということではないと思うんです。
1億3千万人と友だち、という状態が幸せと思えないように。

三島うん。

光嶋「みんなのミシマガジン」といったときの「みんな」をどう定義するかは難しい問題です。僕のばあい、その「みんな」をバインドするスパイスのほうに興味があります。

三島スパイスかぁ

光嶋そう。
「みんなのミシマガジン」も、スパイスをどう埋め込むかのビジョンが大事なのではないか、と。
これまでは、成長しよう、たくさん取りこもう、という具合に拡大することにあまりにウェイトを置き過ぎていた。
それ以外のところは軽く見られていたわけですけど、これからはそこにスパイスを注入しないといけないのかなと。

「若者よ、夢をもとう」。うん。

近藤僕は、すこし違う観点で、「夢をあんまり批判過ぎちゃだめだ」と思うんです。

光嶋ほ~

近藤世界中の人に読まれたい、世界中の人に使ってほしいウェブサービスを作りたい、世界中の人が使う建築をつくりたい、とかって夢じゃないですか。

光嶋はい。

近藤その夢がもっている力があるから仕事をやっているところがあります。
なのに、「せいぜいよくても数万人だから。そんな(大きな)こと考えるほうがおかしい」とか。妙に冷めたことを言う若い人がいるんですよ。

光嶋いるいる~(笑)

近藤夢とは真逆に、「自分が使いやすいものがいいんです」とか言う。そうしていると、絶対に自分が傷つかないわけですよ。自分が使いやすいものを作って、自分が使いやすいと思っている。その限りだと、夢が破れて自分が傷つくようなこともない。

けどそれって、道具をつくる人間としてどうなんだろう? と思う。自己満足もいいけど、周りの人が使って喜んでもらえるものをつくってよ、と(笑)。

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? YEAH! YEAH! YEAH!!

三島よくわかります。結局、今回の「みんなのミシマガジン」だって、気づけば、「to all over the world」って書いてましたもん。

光嶋出ましたね(笑)

三島限られたサポーターの方々に届けたいというのは間違いないのですが、一方で、本気で、チェコやアフリカや世界中に届けたいという思いもあります。

多聞英語の読み物もつくるんですよね。

三島はい。じょじょに(笑)・・・。

膜の接触をやわらかく。

三島光嶋さんは、創刊にあたって、こういうメッセージをくださいました。


『みんなのミシマガジン』には、
<驚き>を期待します。
それは、既成のメディアにはない、
桁外れに面白い異分野同士による
科学反応が高い熱量でもって
行なわれるような
社会をプロヴォークする、
<驚き>を<みんな>で共有し、
形にするメディアであってほしい。
ネットでも面白く、
紙でも2度美味しい、
いきいきしたモノを期待します。
――光嶋裕介


光嶋僕個人でいうと、知識という膜を大きくすることや中身の密度を高くすることよりも、それは主観的で難しいのですが、自分が開かれているということが大事な気がしているんです。つまり、膜を大きくするより、<驚き>によって膜のエッジが柔らかくて、開かれていることを気にしています。

三島は~、なるほど。

光嶋膜にぶつかったときに、取りこむかどうかは僕の判断でするが、思い込みなどで排除することをしないように心掛けています。
水と油のように、すーっと避けるように排除することはしない。味わってから、「う~、ちょっと違うなぁ」と思うことはあると思いますが。ただ、味わいたいと思う、その接点に<驚き>があるんじゃないかと。

新しい膜につながりたいと思うのは、<驚き>があるから。
接点で起きた<驚き>がバチッと熱いものであれば、取りこみたいと思うし、豊かになれると思います。

三島はい。それを、「みんなのミシマガジン」に期待してくださってるということですね。

光嶋ええ。

三島膜の接点で<驚き>を感じたり与えたりすることって、とても身体的ですよね。とすると、メディア自体の身体性がどれだけ豊かであるかが重要だと思いました。

光嶋そうですね。

三島コンテンツより接触のところが、より重要なんだろうと思います。それって、実際に思い当たるんです。
自分たちのそのときの身体感覚が如実に反応するんです。
たとえば、自分でやばいな、と思っているとき、接触部分が硬くなっている。

光嶋うんうんうん。閉じている。

三島ええ。面白いことに、だからといって、そういう状態でつくった本が売れないわけでもない。むしろ、売れることもあるんです。

近藤へ~。

三島ただ、それって、「明日のジョー」みたいな硬質なパンチなんです(笑)。腕と身体がバラバラで、当たるとインパクトはあるけれど、当たらなかったら、身体が崩れてるもんだから自分も倒れてしまう。
そんなパンチって、やはり後味が悪いんです。相手も傷つくし、自分も傷つく。

近藤さっき光嶋さんが言ったのは、読者としての膜の柔らかさで、三島さんが言ったのは送り手の柔らかさのことですね。

三島どっちが先であってもいいと思うんです。最終的には、送り手も受け手も、どっちが先だったかわからないくらいに一体になっていたらなぁと。

なんとなくでいいじゃない。

座談会 「みんなの時代」がやってきた!? YEAH! YEAH! YEAH!!

近藤「本当に面白い」ことや「驚き」もそうだと思うんですけど、そのときは理由がわからないことが多いと思います。
それが、膜の接触の柔らかさを生んでいるんじゃないですかね。

光嶋その通りだと思います。

近藤なぜそれをやっているのか、まだ言語化できないことが、面白いよなぁと。
ただ惹かれるから、としかいいようがない。

三島うん。

近藤「みんなのミシマガジン」がいいと思ったのは、三島さんが、ピーンときたんだと思うんですよ。

一同

近藤いちおう、経済の話とか、創刊理由に書いているじゃないですか。 
たぶん、あれ本当の理由じゃないんだろうなぁと感じるんです。まだ、本人もまだ、よくわかってないんだろうなと(笑)

一同爆笑

三島たしかに。サポーターに応募くださった方へは、「まだ僕もどんなふうになるかよくわからないのですが、ワクワクしてます」といった内容のメールを返信してます。

近藤それでもやらざるをえない。なんかあるぞ、と思っている直感的ひらめきのようなものを感じるんで、おもしろいなぁと。

三島ありがとうございます。

近藤で、何がいいたいかというと、数字を追うのは目的じゃないという話も同じで、なんか面白いのが先にあって、あとで数字がこうなったんだな、となる。

三島まったく共感します。嬉しいです。
自分でそれを言ってしまうと、「自分で企画しといて、説明は『なんとなく』かい!」となりますから。

一同

近藤それでいいと思いますよ。


*この鼎談がおこなわれた理由が「よくわからない」ことも、「それでいい」と思えてきたところで、いよいよ明日、最終回。大詰めです!


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みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

光嶋裕介(こうしま・ゆうすけ)
1979年米ニュージャージー州生まれ。早稲田大学理工学部建築家卒。大学院修了後、独ベルリンの建築事務所ザウアブルッフ、ハットン、アーキテクツに4年間勤務。2008年に帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。2012年より首都大学東京助教。ドローイング集『幻想都市風景』(羽鳥書店)、著書に『みんなの家。』(アルテスパブリッシング)。
http://www.ykas.jp/index.htm

近藤淳也(こんどう・じゅんや)
1975年三重県生まれ。京都大学理学部卒。2000年同大学院中退後、2001年7月に「人力検索はてな」を開始し、有限会社はてなを京都で設立。2003年「はてなダイアリー」サービス開始、2004年2月に株式会社はてなに改組。現在、京都に本社、東京に本店がある。著書に『「へんな会社」のつくり方』(翔泳社)。
http://www.hatena.ne.jp/

三島邦弘(みしま・くにひろ)
1975年京都生まれ。2006年10月に株式会社ミシマ社を設立。原点回帰の出版社を標榜し、現在、東京・自由が丘と京都で活動中。「みんなのミシマガジン」編集長。

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