今月の特集1

ボクは悩める坊さん。〜ミッセイ和尚、2冊目を書きあげることができるのか?

2013.05.10更新

   

第4回 ミッセイ和尚、立ち上がる

「仏教をポップに伝える」坊さんから、「悩める」坊さんになってしまっていたミッセイ和尚。それもこれも、「書くことができなくなった」から。
 その長いトンネルを抜け出すべく、「寺子屋ミシマ社in城陽」が開催されたわけだが・・・。お客さんとのやりとりのなかで、ついに「書けるような気がした」発言も飛び出した。
 さて、最後にミッセイ和尚は、いかなる言葉を残していくのか?
 その前に、「救う」役目のはずのお客さんから、人生相談が!?
 どうなる坊さん、どうする寺子屋ミシマ社・・・。

(文:三島邦弘、構成:新谷ゆり)


ネガティブトークが聞きたいです!

お客さん若くしてお寺に入られて、嫌な思いをされたこともたくさんあると思うんです。本なので、嫌だ嫌だっていうことばかりはあんまり書けないのかもしれないんですが、ここでちょっと嫌だなあと思うことを教えていただけないですか。思い切って。

ミッセイえーほんまに言っていいんですか?(笑)

一同(笑)

ミッセイ文章を書く上で、最も気をつけていることは、書くことによって誰かを傷つけないことです。そう思っていても傷つけてしまうことはあるんですが。ただ、嫌な思いをしたことを伝えるのは必ずしも悪いことではないでしょうからねえ。いっぱいあるはずなのに、ここでぱっと思い浮かばないなあ。でもいっぱいあると思います。
 いやなこといやなこと・・・。うーん。でも思い出そうと思ったら、何か本に生かせそうなことがあると思います。活かさせてもらおうと思います。

ミシマネガティブトーク、面白いですね。

ミッセイエピソードではなく抽象的に言うと、若い人も含めて、割とお坊さんは、お坊さん像を固めてしまっていることがあるかなあ。お坊さんとして、こういうふうにせなあかんっていうのを決めてしまっていることかな。もうちょっと柔軟でもいいんじゃないかとは思います。僕もその中で頭が硬いって言われるのでどっちがどうとは言えませんが。

ミシマへ~、ミッセイさん頭硬いって言われるんですか。

ミッセイまあ自分が柔らかいと思ってたら相手が硬くなるし、そういうのは相互的なもんですからね。
 あと、お金の話をしないといけないときが苦手ですね。「お布施ってどれくらいですか?」とかお葬式のときとかに聞かれると。「それはお心付けなので」って言っても「いや、なんぼくらいって言ってもらわな困る!」と言われたりするので。そんな話をしている隣の部屋にはご遺体があるわけですよねえ。そこで「ま、こんなもんですかねえ」「そうですか」みたいな会話をせなあかんとき。リアルやなあとは思いながらもちょっと抵抗があるかなあ。でも、こういうネガティブトークって面白いですよね。楽しいばっかりの話より。


突然ですがうちの上司に困ってます! (なぜか急に人生相談)

お客さんあの、なんかいきなり私の人生相談みたいになっちゃうんですけど、うちの上司がね!

一同(笑)

お客さんうちの上司が、私のミスとかをたしなめるとき、すごくツンツンした言い方をするんですよ。確かに私のミスのことを言いたいんだろうけど。で、そういうときに放っておいてしまった方がいいのか、「いや、そういう言い方はどうかと思います」っていうふうにたしなめた方がいいのか、どうなんでしょうか。

ミッセイそれは、もちろん答えはないんでしょうが。基本的には、自分の精神面にはその人を入れ込ませない方がいいのかなとは思うんです。もちろん社内の人間関係としてつき合うのは仕方ないけれども。
 ただねえ〜、僕はそういう会社とかで嫌われてる人と話すのわりと好きなんですよねえ〜。ま、だからそう言う人から「おお! 白川くんはわかってくれるわ!」って思われるからめんどくさいことになるんですけど(笑)

一同(笑)

ミッセイというのも、そういう人って痛みを抱えた人が多いんですよ。だから、ああわかるなっていうところも絶対あるんです。それに、特に上の立場の人っていうのは、上の立場に立ったときの辛さみたいなものを、わかってほしいとも思ってはるんです。だから、お母さんになったつもりで「なんか辛かったん? ボク?」みたいな(笑)。
 そういう心境で接せれたらいいんじゃないかとは思いますが。

お客さんうーん、たしかに、ちっちゃい子どもみたいやなあこの人って思うこともあるんですよ。でも「それはどうかと思います」って言わなきゃならないのかなって思ったりもするんです。

ミッセイそれは、瞬間瞬間の勝負でしょうね。僕がこのまま威張らせたらあかんなと思うパターンは非常にレアな数少ないケースです。それは自分の生き方の本質に関わる部分に触れられたとき。そういうときは、このままスルーしてはいけないなと思います。

お客さんそれは、毎回毎回というわけではなくて・・・。

ミッセイそうですね。その瞬間ってのは公式に当てはめられないもので、これを言わなあかん瞬間かそうじゃないかをその時一瞬で判断するしかなんですけども。自分や周りの生き方の中で大切にしているものにまで触れられたときとしかいえないんですが。
 まあ、そういう時以外は、大体は、僕はスルーするようにしています。僕はですけどね。ただ、仏教的に言うと、そういう人たちに良き影響を与えて、蘇生させてあげてください。

一同(笑)

ミシマよくできたお坊さんですね。

ミッセイでも人ってそんなにすぐには変わらないですからね。ただ、僕が会社員のときにひとつだけ心がけてたのは、「悪口はオブラートに包みながらも本人に直接言う、褒めるのは他人に話す方が効果的」っていうこと。そのほうがいいじゃないですか。

ミシマそれ、よくできたビジネスマンじゃないですか!

お客さん極意として実践していきたいと思います。ありがとうございました。

ミシマいやあ、ミッセイさんの話を聞いていると、ミッセイさんってほんとに仏教の言葉が自分の中に身体化されておられるんだなと思いますね。だから、そういうときにぱっと仏教が判断基準として出てくるんですね。みんないろんな場面場面で、悩んだりとか感情的になったりとかすると思うんですが、そういうときに仏教が体の中に宿っていると制御することができるんですね。制御されるし、次への指針になるし。それがすごいなと思います。

なんと密成和尚、お土産をお持ちくださいました。 参加者に手ぬぐいをプレゼント〜

ミッセイいや、そうなればいいなとは思っていますが。僕も全然できていないとこばっかりですけども、仏教はお坊さんの世界だけのものじゃないんで。仏教が生き方と乖離してはいけないと思いますしね。みんなでどうやって生きていこうか、嫌な上司にあったらどうしようかって考えること、その中で仏教がいいヒントになっていけたらいいですね。一日一日の問題ってこういう小さなことですしね。

ミシマ「仏教学栄えて仏教滅びる」とも言われたりしますが、ミッセイさんはまさに仏教そのものを実践されている方だなっていう風に思います。そういう言葉こそ僕らが待っている言葉なので、それをどんどん今日から書き進めていただけたらなと思います。


悩める坊さんを私は救いたい!

お客さんあの〜

ミシマはい? あ、どうぞ。

お客さんあの~、私、悩めるお坊さんを救いたいと思うんですけど。

ミシマおお!

ミッセイお願いします。

お客さん私も最近再就職して働きはじめたばっかりで、ああもう辞めたいなと思うこともいっぱいあるんです。でも、そういうときなんで働こうと思ったのかっていう初心を思い出すんです。そしたら、やっぱり自分がやりたいと思ったからやり始めたんですよ。だから自分がやりたいって思うこと、本だったら書きたいって思うことに専念するといいなと思うんです。先ほどミシマさんもおっしゃっておられたけど、もうそういう気持ちを正直に書いていただいたらOKかなって。

ミッセイそうですね。

一同(笑)

ミッセイほんとそう思います。

ミシマ素晴らしいシメをありがとうございました。
というわけで、最後に、ミッセイさんにこの本がいつできあがるのかここで宣言していただきましょう。

ミッセイ・・・はい。でも、一日一編いけると思うんですよね。ということは、5月に一回原稿をあげる形で、そっからやりとりがあって完成していくかな。だから初夏くらいに。おっしゃるように、ある程度一気にやりあげたほうが疾走感もあっていいですよね。

ミシマそうですね。蓄積はもう十分ありますから。あとは肩の力抜くだけっていう。さきほどお客さんも言われたように。

ミッセイそうですね。ある程度、自分の思うままに、心の動くままにやったらいいのかと思います。やります!

(イベントを終えて)
 こうして、ついに動き出したミッセイ和尚。最後に、「やります!」という力強い言葉を残してくれた。
「救ってください」
 の言葉通り、本イベントを通して救われたのだろう。
 めでたし、めでたし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 なんて、大上段にまとめてる場合じゃありません!
 ミッセイ和尚、こんな無茶な企画におつきあいいただき、本当にありがとうございました。「書けない」だの、「悩める坊さん」だの失礼なことをさんざん言い募り、申し開きのしようもございません。ただただ伏してお詫び申し上げる次第です。
 本当は、全然、「書けない」なんてこともなく、すこし時間がかかっただけ、というのもよく存じております。無礼な私どもの発言はどうぞお気になされず、のびのびいきいき書いていただけましたら、と望むばかりです。
 参加者の方々も含め私も、それを一番望んでおります。
 和尚にそのことが伝わっていたら、寺子屋ミシマ社を開催したこれ以上の喜びはありません。
 今はただ、近い将来、「2冊目」の完成祝いをしている日を想像するだけです・・・。

 あっ、その後、宣言通り「一日一編」進んでますか? ミッセイさ~ん。

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白川密成(しらかわ・みっせい)

1977年愛媛県生まれ。栄福寺住職。高校を卒業後、高野山大学密教学科に入学。大学卒業後、地元の書店で社員として働くが、2001年、先代住職の遷化をうけて、24歳で四国八十八ヶ所霊場第五十七番札所、栄福寺の住職に就任する。同年、糸井重里編集長の人気サイト『ほぼ日刊イトイ新聞』において連載を開始。著書に『ボクは坊さん。』(ミシマ社)、『空海さんに聞いてみよう。』(徳間書店)がある。


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