今月の特集1

インド映画を観に行こう!

2013.06.03更新

第2回 アスパラガスキー

第一回 『きっと、うまくいく』座談会

 その波は突然はじまりました。

 なんのことかと申しますと、ミシマ社にはいままさに「インドの波」がきているのです。
 すべてのことのおこりは、「みんなのミシマガジン」で『たもんのインドだもん』を連載していただいている、デザイナー・矢萩多聞さん。
 彼は中学1年生のときに学校に行くのを辞めてインドに渡り、それ以来今日に至るまでインドと日本を往復しつづけています。多聞さんからインドの話を聞くにつれ、「おお、インドって楽しそう」と思いを募らせていたミシマ社一同。
 そんな多聞さんが、「ここ20年で一番好き」と激褒めしているインド映画があります。
 『きっと、うまくいく(原題:3 idiots)』です。

インド映画を観に行こう!

ⓒVinod Chopra Films Pvt Ltd 2009. All rights reserved

 インドのエリート大学を舞台に、3人の学生が巻き起こす珍騒動や恋愛を描いたヒューマンコメディー。インドでは、歴代最高の興行成績を記録したとか。あのスティーブン・スピルバーグも3回観たらしい・・・。

 2013年5月26日、「インド映画の会」を結成したミシマ社京都オフィスメンバーは、スペシャルゲスト・140Bの青山ゆみこさん、多聞さんとご一緒に、『きっと、うまくいく』を観るべく京都みなみ会館に向かったのでした。(ただし、三島は新刊の編集に追われていたため欠席)

 単刀直入に申します。
 最高の映画でした。ひとりでも多くのひとに観てほしい。

 映画上映後の興奮の声を、お届けします。

(座談会メンバー:多聞さん、新谷、池畑、牛島、上田、宮川、新居  文・構成:新居)


開く映画で、距離が縮まる!

多聞さて、いかがでしたか?

新居終わったあとに、「良かった」ってすぐに言えないくらい良かったです。

新谷なんなんだろうね、この映画観たあとの楽しさというか、言葉にできない気持ちの高まり。

牛島心は映画のなかに置いてきちゃった感覚です。

多聞子どもの頃、映画館に行くってひとつのイベントでしたよね。遠足や遊園地みたいな。前日までのわくわく感、観たあとの満足感、ご飯食べたりとか、全部がワンセットになっていて。

池畑あの、デートの口実で映画に行くっていうの、よくあるじゃないですか。僕実際にそれで失敗したことがあって。

一同(笑)

多聞それはどっちに失敗したの? 人? 映画?

池畑いやいや(笑) 気になる子を誘って映画を観に行ったんです。ハッピーな映画かと思ったら結構つかみどころのない内容で、観終わってからもずっと自分の中でモヤっとしていて。そもそも相手の子が楽しんでくれたのかどうかも怪しかったなあ(笑)。結局その後、何もなかったんですけどね・・・。

多聞「楽しんでくれたのかどうか怪しい」っていう時点でもうかなりダメだよね(笑)。

池畑そういう「口実で映画行ったはいいけど思ってたのと違う」体験が僕自身にあって。今日ぐらいうわ〜ってなったら、もうそのまま勢いよくうまくいってたんじゃないかなあとか思います(笑)。

多聞そう。なんかね、からだが開くんだよね。開く映画と閉じる映画ってあると思うんだけれど、この映画は完全に前者。

新居しかも、この映画を一緒に観に行こうって言ってくれる人・・・いいよね!

一同(笑)


ほんとうにそれでいいの?

新居映画のなかで言っていたように、インドでの成功への道は、エンジニアか医者になるかなんですか?

多聞エンジニアと医者はインド社会のエリートの象徴。安定と高収入へのわかりやすい道なんですよ。中産家庭の出身でも、エンジニアになれば生活レベルの底上げができる。物語のなかで、自殺してしまう子がいたでしょう。彼は田舎の村で初めての秀才で...家族やコミュニティ、村中の期待を背負っている。...実はインドって、いま世界で一番若者の自殺が多いんです。

池畑40人に1人の学生が自殺してるって、映画でも言っていましたよね。

多聞特に10代、小学生くらいの子どもの自殺も少なくない。

一同ええー! 小学生!

多聞インドは基本的に大家族だから。試験でいい結果が出ないと、家族はもちろん、親戚のおじさんおばさんまでいろいろ言ってくるわけ。そういうプレッシャーに押しつぶされて自殺する子がいるそうです。

牛島すごい競争社会なんですね・・・。

多聞あと単純に海外で働けたら、国内の何倍もの給料をもらえるでしょ。アメリカの医者とエンジニアの3人に1人はインド人って言われるくらい、インド人移民の占める割合って大きい。そういう人たちは成功者。故郷に帰ってきたら親戚や隣近所にお土産ふるまったりして(笑)、羨望の的なんだよね。
「でも、そこにみんな突進していくの? ホントにそれでいいの?」っていう問いが、この映画を作り出した根っこのところだと思う。

新谷日本でも「君は君のまま好きなように生きたらいいんだよ」みたいな、そういうのを啓発するような映画は結構ありますよね。けどインドにおけるそれって、また意味が違うというか。

宮川ハードルの高さが半端じゃないですよね。

多聞日本以上に大変だと思います。でも、恋愛して結婚したいとか、自分がこれ!って納得できる仕事をやりたいとか、そういう若者は増えてきている。インドで『きっと、うまくいく』がヒットする裏には、みんなどこかで「そうなったらいいな〜」「自由に生きたいな~」って気持ちを持ってるからでしょう。


あのテンションが恋しい!

池畑主人公、めちゃめちゃ優秀で全部できちゃうスーパーマンじゃないですか。いまの日本の映画って、スーパーマンみたいな人出てこないですよね。

新谷あり得ないでしょ、ってなるからね。

多聞人間諦めてるからね~。変に共感というものをありがたがる人が多いから、こんな現実離れしたキャラクターにしたら共感されないんじゃないかって思うかもしれない。

新谷でもこの映画に共感したかっていうと・・・

上田共感じゃないですよね。映画が全部共感だったら、娯楽じゃないですもん。

池畑でも「んなことあるか!」と心の中でツッコミいれつつも、やっぱりそういうふうに生きて行けたらいいなあって思う部分もあって。

宮川なんか恋しくなりますね、あのテンション。

多聞映画も小説も同じで、この世界にずっといたいって思わせる物語ってあるよね。例えば、本を読んでいても、ページをめくりながら「あ〜、もうあとちょっとしかない、読み終わりたくなぁ」って。そういう映画にはそうそう出会えない。

牛島ああ、もう一回観たいなあ。

多聞観終わってすぐ、もう一回観たいって思える映画って、ほんとにいい映画だと思いますよ。

上田そうですよね、映画観てもう一回観たいってあんまり思わないですよね。

多聞映画は終わっても、物語は終わっていないのよね。

新谷だって、ほんとにまだあいつら生きてるもん、自分の中で(笑)。

宮川岐阜でも上映してんのかなあ...。実家にいるおかんに観てもらいたいなあと思ったんですけど。

新谷今日家に帰ったら多分予告編を見返すんだろうけど、映像に対する愛情すら違ってきそうだなあ(笑)。

多聞いや〜、今日はみんなと観れてよかったです。

牛島ほんとに、ひとりで観るよりみんなで観るほうがより楽しい映画ですね!

新居インド映画って初めて観たけども、こんなにも誰かと一緒に観るのが楽しい映画ってあるのか! と驚きました。

新谷ほんとにそう! そうだよね。


 大興奮のまま解散した、インド映画の会一同。
(ちなみに青山さんは、座談会はご欠席でした。残念。)

 帰宅してからもあまりの余韻に、友人に良さをひたすら語る電話をかけた者もおれば、
夜な夜な主演の俳優「アーミル・カーン」をgoogleで検索し続けた者もおり、
とにかく顔を合わせれば映画の話をする日々を、しばらく送り続けたのでした。

Aal izz Well!(きっと、うまくいく)

次回はこの映画をめぐるエッセイをお届けします!お楽しみに!!


インド映画を観に行こう!

『きっと、うまくいく』

 舞台は日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する、超難関理系大学ICE。未来のエンジニアを目指す若き天才が競い合うキャンパスで、型破りな自由人のランチョー、機械よりも動物が大好きなファラン、なんでも神頼みの苦学生ラージューの"三バカトリオ"が、鬼学長を激怒させるハチャメチャ珍騒動を巻き起こす。彼らの合言葉は「きっと、うまくいく!!」
 抱腹絶倒の学園コメディに見せかけつつ、行方不明になったランチョーを探すミステリー仕立ての"10年後"が同時進行。その根底に流れているのは、学歴競争が加熱するインドの教育問題に一石を投じて、真に"今を生きる"ことの素晴らしさを問いかける万国普遍のテーマなのだ。

公式サイトはこちら

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

バックナンバー