今月の特集1

浦沢直樹さん

 そもそものきっかけは、漫画家・浦沢直樹先生のスタジオとミシマ社のオフィスが、ほど近いところにあるということでした。
 『自由が丘の贈り物』にご登場いただけただけでも夢のようでしたが、去る8月4日、浦沢先生とミシマ社三島との、まさかの対談イベントが実現。
 会場となったのは、本書でもご紹介しているcafé イカニカさん。この完全地元密着型のイベントでは、自由が丘のこと、本づくりのことなど、2時間にわたるトークが交わされました。その一部を、全3回でお届けします。

(文:皆川夕美、写真:新居未希)

「自由が丘と本づくり」浦沢直樹さん×ミシマ社三島 トークイベント

2013.08.20更新

自由が丘にオフィスを構える同士

浦沢直樹さん

三島今日は朝からアドレナリンが出まくっていて、いつにないテンションです。ハルク・ホーガンに会えたような気分です。僕自身は、お会いするのは今日が初めてなんですね。

浦沢はじめまして。すごいワチャワチャしてますね(笑)。

三島(笑)。まず、この本に出てくださった経緯としては、浦沢先生のご自宅兼スタジオとミシマ社のオフィスがご近所だからなのですが。

浦沢企画書を郵送してきたんじゃなくて、家のポストに投げ込みましたよね。すぐ近くの会社から出演依頼の手紙をもらってしまったら、ご近所づきあい大事にしなきゃでしょ。「こーれは断れないね」って妻と話してました(笑)。

三島そうなんです。ほかの出版社経由で遠回りするよりも、直接ポストに投げ込んでしまった方が早いな、と考えまして。一か八かで。

浦沢中学生みたいな、ね。


「怒っていると、話しかけられる」(浦沢)

三島7年前に自由が丘に事務所を構えてから、実はちょくちょくお見かけしていたんです。

浦沢あ、そうなんですか。

三島本屋さんと、会社のすぐ前の道で犬の散歩をされているところを。

浦沢そうですか。本屋さんにいたとき、僕、怒ってなかったですか?

三島いえ、それはなかったですけど(笑)。

浦沢僕、本屋さんやCDショップで「品揃えがよくない!」って怒ったことがあるんです。で、そういうときにかぎって、直後にサインを求められてしまうという。「いまの一部始終みられてたかな」って思うことがよくありましたね。

三島僕も何度かお声かけしたい! って思っていました。本当に今日はありがとうございます。
まず、この本を読まれて、どんなご感想でしたでしょうか?

浦沢本の内容というかね、締め切り迫ってたんだなって思いましたね。原稿チェックのときのつっつき方がね、切羽詰まってたんだなって。案外、ギリギリで仕事されてるんだなと(笑)。


「お店って生き物なんだなと思うんです」(三島)

三島先生に原稿チェックいただいた数週間後には、もう本ができあがっていたという・・・。実は本当にカツカツ状態で作っていました(苦笑)。

浦沢出版とはそういうものですからね。取って出しみたいな、湯気が立っているような本が書店に並ぶのがいいわけですから。とくにお店を取り上げていたりすると、移り変わりがありますからね。

三島そうなんです、実は発行直後に数店舗、閉店が決まってしまったんです。とくにミシマ社が初めてイベントをさせていただいたお菓子屋さん「クレチュール」さんが、7月31日で突然、閉店してしまったんです。取材のときは何ともなかったので、本当にビックリしました。
 こういうことがあると、お店って生き物なんだなと思うんです。できるときにカタチにしておかないと。会いに行きたい人やお店がどんどんなくなってしまう。それが少し悲しいです。

浦沢どんどん改訂版を出されたらいいじゃないですか。

三島(笑)。でも、思い入れのあったお店を最後にカタチにできたのはよかったと思います。お店はなくなってしまったけれど、この本の中ではずっと生き続けるのかなという想いがあります。
ちなみに、本の中で浦沢先生が気になったお店などはありましたか?

浦沢大木凡人さんのページが気になりましたね。自由が丘を歩くと、本当によく大木さんをお見かけするんです。

三島本の中でも、「自由が丘を一番歩いている有名人」とご自身で仰っているんですね。でも、僕まだお会いしたことがないんです。


自由が丘の動物たち

三島ミシマ社のオフィスは築50年の一軒家なのですが、借りた当初はけっこう閑散としていました。でも、人が出入りするようになったことで、一軒家が生き生きしだしたんです。

浦沢それは社長がワチャワチャしてるからでしょ? それで家が命を吹き込まれたんですよ。

三島仕事中はこんなにワチャワチャしてないです(笑)! わりと、普通のテンションでやっています。

浦沢やっぱり家というのは、人がいるのといないので変わりますね。人がいなければ、どんどん朽ち果てていきますから。

三島本当にそうですね。最果ては、ねずみまで出てきちゃったんです。生き生きしすぎたのかな、という反省もありましたが。イカニカさん、このあたりは、ねずみは大丈夫ですか?(イカニカさんも古い一軒家を利用したカフェです)

店主・平井さん大丈夫です。

浦沢ねずみといえば、こないだ犬の散歩をしていたら、ハクビシンらしき動物を見ましたよ。夜の街灯の下を、テテッと横切っていったんですよ。

三島そうなんです! 自由が丘といえばハクビシンらしいんです。この本の取材中も、ハクビシン目撃情報が多々ありました。あの、今後ハクビシンが漫画に登場することは・・・?

浦沢何でもやりますよ(笑)。すべてのことがアイデアの素ですからね。

三島コウモリと絡む展開とか・・・?

浦沢あ、そう、自由が丘ってコウモリもめちゃくちゃ飛んでるんですよ。緑ヶ丘に向かう緑道がとくにすごいですよ、夕方になると。

三島本当ですか? 全然気づかなかったです。

浦沢コウモリはいい感じの生き物ですよね。「見つけた!」って思った瞬間、もうその実態はわからないじゃない。

浦沢直樹さん

『BILLY BAT』(講談社)

三島影だけが残って実態がない感じですよね。ちなみに、自由が丘でコウモリを見たという方はいらっしゃいますか?

(ちらほらと2、3人の手が上がる)

浦沢ほら、多いじゃん。

三島そんなにいなかったじゃないですか(笑)! 『BILLY BAT』と同じで、見える人と見えない人がいるとか・・・。じゃあ今度、「緑ヶ丘BILLY BATツアー」と題して、本物のコウモリを見に行くツアーやりましょう。


※明日に続きます!

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浦沢直樹うらさわ・なおき

1960年東京生まれ。1983年デビュー。1989年『YAWARA!』で第36回小学館漫画賞を受賞、『MONSTER』『PLUTO』で二度の手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞など受賞歴多数。海外での評価も高い。現在「モーニング」(講談社)にて『BILLY BAT』を連載中。
音楽活動も活発で、アルバム「半世紀の男」を発表している。

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