今月の特集1

「好きだと叫びながら自転車のペダルを思いっきり漕げるような、恋がしたい」

Cocco、歌手、沖縄県出身、東京都在住。気が付けば干支を三まわり。一瞬に散らばる夢の欠片を拾い集めて生きる女性。――36の断章(メッセージ)。

 待望のCoccoさん最新エッセイ『東京ドリーム』がいよいよ発売です!!
 ミシマガジンでは、本書に込められたCoccoさんの想いをいち早くインタビュー。心が瑞々しくなるような、まさに総天然色の言葉たちがどのようにして紡がれたか、一瞬で目を奪われるカバーの絵はどのように生まれたか、そして「東京ドリーム」とはどんな夢なのか。これらが1冊の本になるまでの軌跡を、感動と爆笑のエピソードを交えて、ここにお届けします!!

(聞き手:三島邦弘 構成・写真:森オウジ)

東京ドリームを探して―Cocco 「本屋さんと私」特別編

2013.10.22更新

手で書いて生きていく

―― これから全4回に渡って『東京ドリーム』の執筆を振り返っていきたいと思います。大ファンをいたるところで公言しているCoccoさんの本を、こうしてミシマ社から出していただけるのが何よりも嬉しいです!
まず、前の小説の執筆の際は手書きだと伺っていますが、本書もすべて手書きなんですよね?

Coccoはい。全て手書き。うちにはパソコンないから。だからネットで何か調べたいときは、使える人がいるときにやってもらう。郵便番号を調べる時もだし、「◯◯さんにメール送っておいて」とかも誰かにお願い。バスなんかは困りもので...。今はバスの時刻表もくれない。

―― 何でもかんでもネットですもんね。紙がどんどんつくられなくなっている。

Coccoだからバスは、乗るたびに発車時刻をバス停でちょっとずつメモって、家で少しずつ時刻表を完成させてた。でも、ついこの前「やった!完成した!!」と思ったら、また最近になって変わったとかで(笑)。

―― まさかのダイヤ改正(笑)。

Coccoだから今またやり直し。

―― でも、そうやって手を動かして何かを知っていく、感じていくことで初めて見えてくるもの、それこそが大切だということがこの本には詰まっている気がします。


沖縄とCocco、「そのまま」のCocco

―― 今回は前半の中の6篇は「沖縄タイムス」に連載されていたものですね。僕は連載の頃から読んでいましたが、それ以外は全て本書のために書き下ろされたのですよね? どのようにして書き進めていかれたのでしょう?

Cocco編集の日野におだてられて...(笑)

―― (笑)。全36篇で構成されていますが、それぞれのテーマもご自身で設定しながら書き進められたのでしょうか?

日野少し補足をすると、最初の「沖縄タイムス」のものは1月1編だったので約12編ありました。まずそのうちからCoccoさんが精査をしたものに、書きおろしを加えていただいて、原稿用紙100枚程度になったものを最初にお預かりしました。
そして、本にするならもう少し分量が必要なので、「もう少し書いてみようか」とご提案したんです。「よく買い物するよね」、「テレビ最近見てるの?」なんて話しながら打ち合わせをして、テーマを10個くらい考え、まずそれを下敷きにして進めてみようということになりました。

Coccoえっと、そのメモをそのまま読むと...「今思っていること」、「最近の流れと自分のズレ」、「テレビを見て思うこと」、「旅に行きたいけど行っていない話」、「沖縄とか全然離れていい」、「全体における遊びの部分」、「生活しているCocco」、「嫌だなとか面白いと思っていること」、「東京の話がもっとあってもいい」、「テーマなんてもういいんじゃないか?」

―― (笑)。

Cocco「結局大きなテーマはCoccoの考え方」、「バナナや洋服の話」てなことをここ数年分まとめたエッセイ集。

日野沖縄タイムスのものはテーマが「沖縄と私」なんです。なので、そこからもう少し離れて、普段話しているCoccoが面白いから「今話してることをそのまま書いたらいいんじゃないの?」といったようなことも提案して、今の形になっていきました。


瞬発力で勝負です

―― 本書の執筆期間はどれくらいですか?

Cocco 5月くらいから書いてて、7月のバレエがある頃にはもう原稿を日野に渡した。

――すごいスピードですね。

Cocco持久力ないから。瞬発力の人生なの(笑)。小説も2週間くらいだった。日記とかは書けないタイプ。短期集中でずっと書いてるから「手が痛い〜手が痛い〜」って言ってた。小説の時なんてサポーター買ってたもんね。

―― 書く時というのは、言葉が降りてくる感じなのでしょうか?

Coccoなんだろうね、わからない。でも、降りてくる感じではない。一生懸命考えて、ちゃんと書こうとしてる。

―― 歌詞をつくる時とはまた違うものなんですか?

Cocco全然違う。歌は何も考えないもん。手も痛くならないし(笑)。文章で嫌なのは、たとえば「私は」なのか「私が」なのか「私を」なのかをいちいち考えないといけないところ。どれが正しいのかをひとに聞かないといけない。だから苦手。でも、歌は何も聞く必要がない。後で自分で書いた歌詞を見て、「ここの歌詞、"私は"になってるけど、なんでなんだろう?」って勉強するようなことはあるけど。文章はつくっている時に考えないといけない。

―― 書くのに困って立ち止まることはないのですか?

Coccoきれいに書きたい。だから、ちょっと間違えたら「ええい!」って破って捨てちゃう。そして、またそのページの最初から書いていく。その繰り返し。気力が無くなってくると、最初から書くのはやめて、「✕」書いて訂正しちゃう(笑)。最初はそれが嫌だから、やり直しで手が疲れてしまう。

―― 本当に一発書きなんですね。読ませていただいて、一篇一篇が見事にキマっているので驚きました。後で気分が変わってつなげた痕跡が全然ないですね。執筆ではどんなことを心がけておられたんですか?

Coccoうーん、ノリ?

―― 大事です(笑)。

*明日は、「Cocco家の教育」についてうかがいました。必読です!

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Cocco(こっこ)

1977年 沖縄県出身 歌手
96年日米インディーズデビュー。
97年ビクターSPEEDSTAR RECORDSより日本メジャーデビュー。CDシングル16枚とアルバム9枚を発売。音楽以外のフィールドでも絵本、エッセイ集、小説などの出版物を発表。

2011年6月東日本大震災救援企画「Cocco Inspired movies」発売。同年映画「KOTOKO」初主演。ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門最高賞他多数受賞。2013年8月DVD「Cocco ベスト盤ライブ~2011.10.7」発売。

著書に、絵本『南の島の星の砂』『南の島の恋の歌』エッセイ集『想い事。』『こっこさんの台所』『コトコノコ』小説『ポロメリア』がある。

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