今月の特集1

「好きだと叫びながら自転車のペダルを思いっきり漕げるような、恋がしたい」

Cocco、歌手、沖縄県出身、東京都在住。気が付けば干支を三まわり。一瞬に散らばる夢の欠片を拾い集めて生きる女性。――36の断章(メッセージ)。

待望のCoccoさん最新エッセイ『東京ドリーム』がいよいよ発売です!!
ミシマガジンでは、本書に込められたCoccoさんの想いをいち早くインタビュー。心が瑞々しくなるような、まさに総天然色の言葉たちがどのようにして紡がれたか、一瞬で目を奪われるカバーの絵はどのように生まれたか、そして「東京ドリーム」とはどんな夢なのか。これらが1冊の本になるまでの軌跡を、感動と爆笑のエピソードを交えて、ここにお届けします!!

(聞き手:三島邦弘 構成・写真:森オウジ)

東京ドリームを探して―Cocco 第2回 Cocco家の教育

2013.10.23更新


聞いて、聞いて、書いて、書いて。「自分調査」

―― いくつか印象的なものについてお伺いしていきたいと思いますが、本書に収録されている「ヒント」とか「自分調査」といった、アドバイスや自問自答のようなテイストのものは、どうやって書き進められたのでしょう?

Cocco日頃会う人に「自分がこんな状況だったらどうする?」って話を聞いて、本当に自分調査をずっとしてた。これはその時もらった言葉たち。たとえば、うちの税理士さんに「Coccoはね、独自路線でいいのよ」って言ってもらえたり、会社員の人に「あんたね、悪いけどバカにならないとダメよ」なんて言われたり。そんなことをメモっておいて、また別の人に会った時に「実はこんなアドバイスもらってね...」とか話してみて、そのときにもらった言葉も集めていった。どれも私に対して言われたことだけど、みんなにも当てはまるかなって。

―― 本当に調査されていたんですね。読んでいて自分に言われているような気持になりますよ。「まずは体力」とか(笑)。たしかにそうだな、と思います。「何かを作らないで我慢してる時期も重要だっていいますよ」というのも素敵ですね。


かっこいい大人、どこにいる?

―― この項に、「気にかかること」で「幼稚化する大人たち」を挙げていらっしゃいます。これはどういうことでしょう?

Cocco「大人になる」っていうことは、自分の時間を自分で遮断して終わらせたり、ガマンしたり、外の世界と自分の世界を合わせられるようになることだって思ってきた。
 たとえば小さい頃は食事中に本を読んでいたら「お食事しているときはやめなさい」と怒られる。自分の世界は一度置いて、みんなの時間に参加するように言われる。
 でもそれが今は、大人が自分の時間を遮断できないようになっている。ずっと carry on(続ける)している。節操がないし、「それ怒られることなんじゃないの?」って思うことがある。他人の時間を自分の時間と合わせられない人がいっぱいいる時代。大人が子どもっぽいなと思う。

―― それはたとえばどんなシーンで見受けられますか?

Coccoたとえば電車のシートにお母さんと子どもが座っている時。子どもはずっと自分にアテンションほしいから「次◯◯駅だよね?」とお母さんに話しかけているのに、お母さんはずっと携帯をいじってて聞いていない。お母さんは「はいはい、ちょっと待って」なんて言って、ちゃんと話してるつもりなんだろうけど、目線はずっと携帯。それで子どもがお母さんの気を引こうとして、ちょっとふざけたりしたら、すぐ「ちゃんと座りなさい」と言って叱る。でも、そもそもお母さんがちゃんと話聞いてないから全然説得力ない。ほんと、この子も親も大丈夫かなって思った。
 
―― どんどんそれが普通になっているから、子どもも大人もしんどくなってしまっていますね。

Cocco大人にとって「ちょっと待って」でも、子どもにとってはその瞬間が全てだからね。
 でも、最近は子どもも機械がほんとに上手。リモコンや携帯にもすぐ反応するし、使いこなす。
やっぱり、子どもは大人がやることを見てるからね。大人がやることをまず真似する。だからかっこいい大人がいないと、大人になりたいと思わない。

―― かっこいい大人ってどうやって増やせるのでしょうか?

Coccoどうしましょ。とにかく最近なんでも全部アンチエイジングなのが気になる。

―― ほお。

Coccoそんなに全力で老いに逆らってどうするんだろう? って思う。化粧のコスメカウンターに行っても、「これアンチエイジングなので」と来る。いや、べつにエイジングをアンチしなくていいよみたいな。

―― (笑)。

Cocco別にエイジングにアンチじゃねえし。みんなとどまろうとしすぎているよ、きっと。

―― そういうのって沖縄はどうですか?

Coccoみんな同じじゃない? うちの母親なんか、キャンプに行った写真見ても、ぜったい隅っこで携帯いじっている。自分でいじってるってわかっているのかな?
 私は、携帯持ってうちの子どもと写ってる写真、全然ない。つまり、ひとつもアテンションが他にいっているものがない。アテンションはいつも、子ども。「どうだすげえだろ」ってうちの子どもに言ったら、「ふうん」って。「どんだけ私のアテンション、あんたに集まってるかわかってる?」って聞いたら「わかってるわかってる」って(笑)。
 そしたら子どもは「5カ月くらいイタリアに行って、結婚する練習したら?」って言ってきた。「おれは一心にアテンション浴びてるから、お母さんはもっと自分の練習したほうがいい」って。だから私、「はい」って言った。

―― 本当にかっこいい親子ですね。


Cocco家の教育、基本は「ナメられたら終わり」

―― 教育方針は「ナメられたら終わり」と書いていらっしゃって、めちゃくちゃ面白かったです。これはCocco家の教育方針ですよね?

Coccoそう。うちは自衛隊みたいに絶対服従(笑)。親は友だちじゃないからね。ナメられないというのは大事。
 たとえば、うちの子どもが同級生とちょっと問題を起こした時のこと。主犯格の子どもとお母さんが全員集合して事件の究明に乗り出した。そうしたらひとりのお母さんが「みんなさあ、秘密は無しにしようよ」とか言ってきた。いや、子どもにも秘密はあるだろうと。私にも秘密があるし。秘密なんてどうでもいいけど、「私にうそつけんの?」ってのが大事。そこで私は「おい、並べ~!」って並ばせて問いただした。最後はみんな並んで「すみませんでした」で、解決。
 他のお母さんとかはもう、全然ナメられてる。最近の女の子なんて超マセてるからね。ナメられたら「ふざけんなお前、ちょっと来い」くらい言わなきゃだめ。
 まあ、うちの子どもは「うちのお母さん、昔ヤンキーだったから逆らわないで」みたいな感じでフォローしてたけど(笑)。

―― 推奨するもの「豊かな母国語」というのも、背筋がぴんと伸びます。

Coccoこのあいだ、まだ1歳半くらいの子どもに「英語をやらせたいから、教えてやってくれ」と言われて。いやいや、まずは母国語だろ? って。日本語みたいに難しい言葉ができれば英語なんて、後で全然間に合うからって言っても、みんな英才教育したいみたいね。

―― とにかく英語できれば素晴らしいということになっていますよね。オリンピック開催が決まって、"英語第一主義"にますます拍車がかかりそうで心配です。

Cocco日本は戦争に負けたからね。戦争に負けた国って、勝った国の言葉を優位に感じてしまう。歴史はずっとそういうことになっている。

―― 豊かな母国語の第一歩は何ですか?

Coccoなんだろう、やっぱり"やりとり"かな。読み聞かせも大切だと思う。子どもなら、だっこしているときに親がどれだけしゃべるかだね。

―― そこからしか言葉覚えないですもんね。お母さんの言葉はそれほど大切です。

Cocco他人の子どもを見ると、親が何をしゃべりかけているかわかるもんね。たとえば「おいしい」ってことでも、お母さんが「うまい」って言えば、子どもは1歳でも「うまい」って言うからね。私は「うまい」っていう言葉を、東京に来るまで使ったことがなかった。「うまい」という言葉は、私の家では男の人が言う言葉だと教えられてきたし、「うまい」という言葉は生活になかった。実際に聞くと、かわいいんだけどね。

―― 親の責任は「子どもの歯並び」っていうのも面白かったです。

Cocco子どもの意思でできることとできないことはある。歯並びはお金がないと治せないから、子どもにはできないこと。
 自分には八重歯があって、子どもの頃ずっと治したかった。なぜなら、ケンカの時、血が出たらすぐに負けになるから。ケンカして顔を殴られて、八重歯があるとすぐに血が出て負けになってしまう。それが嫌で、ずっと矯正したかった。
 その後、さらに反対側にも八重歯が生えてきてしまったけど、それでも矯正させてもらえなかったので、結局抜くことになってしまった。大人になってから自分で矯正したけれど、八重歯が足りないから、私の歯はきちんと揃っていない。それがすごく嫌だった。今、整体行ってもうまく合わないのは、歯が左右対称になっていないから。歯は命。悪いと体も顔も歪んでくる。
 だからうちの子どもは矯正させている。ある時、病院が予約の関係で朝しか取れなかったから子どもに学校を休ませた。電話で先生に「歯は命なんで」っていったら「将来何になるんですか?」と聞かれた。いや、そういう次元の話じゃないと。ほんと、歯は命。

*3日目は、物事の基礎を身につけ、想像力を育む「原始生活のすすめ」です。

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Cocco(こっこ)

1977年 沖縄県出身 歌手
96年日米インディーズデビュー。
97年ビクターSPEEDSTAR RECORDSより日本メジャーデビュー。CDシングル16枚とアルバム9枚を発売。音楽以外のフィールドでも絵本、エッセイ集、小説などの出版物を発表。

2011年6月東日本大震災救援企画「Cocco Inspired movies」発売。同年映画「KOTOKO」初主演。ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門最高賞他多数受賞。2013年8月DVD「Cocco ベスト盤ライブ~2011.10.7」発売。

著書に、絵本『南の島の星の砂』『南の島の恋の歌』エッセイ集『想い事。』『こっこさんの台所』『コトコノコ』小説『ポロメリア』がある。

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