今月の特集1

「好きだと叫びながら自転車のペダルを思いっきり漕げるような、恋がしたい」

Cocco、歌手、沖縄県出身、東京都在住。気が付けば干支を三まわり。一瞬に散らばる夢の欠片を拾い集めて生きる女性。――36の断章(メッセージ)。

待望のCoccoさん最新エッセイ『東京ドリーム』がいよいよ発売です!!
ミシマガジンでは、本書に込められたCoccoさんの想いをいち早くインタビュー。心が瑞々しくなるような、まさに総天然色の言葉たちがどのようにして紡がれたか、一瞬で目を奪われるカバーの絵はどのように生まれたか、そして「東京ドリーム」とはどんな夢なのか。これらが1冊の本になるまでの軌跡を、感動と爆笑のエピソードを交えて、ここにお届けします!!

(聞き手:三島邦弘 構成・写真:森オウジ)

東京ドリームを探して―Cocco 第4回 Coccoさんと本と本屋さん

2013.10.25更新

ずっと「ことせん」、でも、ずっと伝えたい

―― 本はどれくらい読まれるんですか? 

Coccoあまり読まないとは思うけれどね。

―― 青山ブックセンター六本木店用に選んでいただいた「おすすめ本10」には、『おばけの天ぷら』とか絵本が多く選ばれてました。

Cocco小さい頃に読んでもらった本て、その時の匂いとかがしてくるから好き。

―― 『11匹の猫とあほうどり』、『おやすみなさいフランシス』もそうですね。

Cocco自分では本読まないからいつも読んでもらってた。宿題の感想文とかも、お姉ちゃんに読んでもらって、聞いて書いていた。小学生の私の読書はヒアリングだった(笑)。読んでもらうのは好きだったな。自分から「これ読んで」と言うこともあった。
 中学生くらいになると、もう読んでもらわなかった。「琴線」を「ことせん」なんて読んでいて、「"きんせん"だ」なんてよく笑われた。東京に出てくるまで漢字も読めないし、書けないだから、「バカだ」と言われて育ってきた。小論文テストもずっとD判定だった。
 でも歌手になって歌詞を書いてたら「漢字いっぱい知ってるね」とか言われて「うっそー」みたいな。不思議だった。もちろん、いまだに家族の中ではいちばん漢字が読めない。今もずっと「ことせん」(笑)。他人が面白い漢字の読み方をすると、「なんか私みたい」って思う。

―― 漢字は東京に来てから覚えたんですか?

Cocco多少は。でも、そもそも私の家族のレベルが高かったというのもあると思う。パパもお姉ちゃんもすごく本を読む人だった。家にはいっぱい本があった。トイレにすらもいっぱいあった。私は活字見るだけでオエ~って感じだったけれど、あの2人からしたら、あれだけ本読まずによく今、本書いてるなと思っていると思う(笑)。国語の成績も悪かったけど、手紙を書くのはずっと好きだった。小さい頃から。

―― 伝えたいんですね。

Cocco入ってくるより出る方が多いから。出してばっかりだ。自分の中は日々の生活で埋まっちゃうから、「もう入らない!」ってなっちゃう。

―― それでも何か読み返される本とかはあるんですよね?

Cocco『グレート・ギャツビー』は夏に読むのが好き。ああいう瑞々しいものを読んで感動すると、アメリカ人とも同じものを共有できるんだと思えてきて、なんだか安心する。
 日本の「侘び寂び」というのは、外国人には説明できないことがいっぱいあるもので。イギリスで学校に行ってるとき、私が侘び寂びだと思ってやったこと、話したことに「それじゃ意味わかんない」って言われると、「イギリス人にわかるかよ!」と思ってよく嫌になった。でも、そういう時にふと学校の図書館に行くと、是枝裕和監督の映画とかがあったり。ああ、本当にいいものって海を渡るんだ、というのを感じた。その時、自分が「侘び寂びだ」って言っているのって、ただの言い訳だなと思った。
 『グレート・ギャツビー』はその逆パターン。本当に心に入ってくるので、翻訳がいいのかな、と思って原作を英語で読んでみたら、英語でも同じだった。アメリカのやり方にがっかりした時も、この本のことを思い出すとほっとする。アメリカとわかり合える安心感をくれる。大丈夫なんだって思える。

―― 確かに。アメリカが「『グレート・ギャツビー』を生み出した国」という見え方になったとき、初めてわかることもありますね。他にオススメの本ってありますか?

Coccoやっぱ『東京ドリーム』じゃないですか?(笑)


本の匂いのするところ、Coccoの癒やしスポット


―― 沖縄にいらっしゃった時は本屋さんにはよく行かれました?

Cocco毎週行った。おばあちゃんちに行くと、ごはんできるまでの時間におばあちゃんが500円の図書カードを差し出して「本を買っておいで」って。本屋さんは徒歩5分くらいにあった。お姉ちゃんは『赤毛のアン』とか『小公女セーラ』。で、私は本屋さんで鉛筆買ってお釣りの450円を手に入れた(笑)。まずは換金。でもしばらくすると図書券はお釣りが出なくなって、えー!うそ!意味ないじゃん!って。

―― いや、むしろそれが図書券の本来の使い方かと...(笑)

Cocco 本屋さんと図書館はすごく好き。本の匂いが好きなのと、みんな静かだからね。他人を相手しなくていいから楽だった。他人がいると、私はつい楽しくふざけて何かしないといけない気持ちになるから。だから図書館の沈黙ルールは楽だった。
本は1年で1冊くらいしか借りないのに、子どもの頃、午後はずっと図書館で過ごした。それに夏はクーラーがきいてるしね。
本屋さんは今も好き。本を買うのもだけど、やっぱり匂いが好き。なんか寝ている間にする勉強法とかあるじゃん? ああいう感じ。本に囲まれているだけで本の何かを吸収できる気がする。だから私にとって本屋は癒やしスポット(笑)。今でも引っ越しする時は必ず図書館の近く。

――東京出てきてからも?

Cocco最近は本屋さんの方が多い。子どもたち最近図書館で勉強するよね。昔は大人が勉強しているイメージがあった。今はわりと子どももいて、「ちっ」って思う。家帰ってしろよみたいな。

―― いやいや、勉強させてあげてください(笑)。都内はどんな本屋さんに行くんですか?

Cocco小さい本屋の方が趣味が見えて楽しいな。店主の性格がモロに出てる。ポップとか超つまんないのに「これイチオシ」とか書いてあるのが面白い。


絵は、最初から見えているものを「出す」だけ

―― 絵について教えてください。この表紙の絵はこのエッセイ用に描き下ろされたものですか? そもそも絵が先行したものなんですか?

Cocco絵が先。描いたのは5月くらいかな? 『東京ドリーム』は、歌がまず最初にあって、次に絵を描いて、最後に文章を書いた。文章は一番苦手分野、けっきょく。

―― すごく素敵な絵です。今度展覧会もやっていただけるということで、ありがとうございます。

Cocco絵は外に出したほうが褒められるからね。うちにあってもなんか、"日よけ"とかに使われてしまうから(笑)。

―― (笑)。Coccoさんはどんなふうに絵を描かれるんですか?

Coccoどうなんだろう? 絵は、絵としてそこに見えてるから、それを手をつかって"出す"だけ。考えて「こういうふうに描くぞ」といった感じではなくて、イメージが頭の中にあるけど、頭の中だとみんなが見えないから出したい、という感じかな。ヴィジュアル先行なんだろうね。文章は説明しないといけないから苦手。見えているものをそのまま活字で出すとうまくいかない。書くのは根気がいるよね。

―― 見えているものは一気に描けるんですね。

Cocco瞬発力が勝負、ですから。


東京ドリームを探してたどり着いた「好き」

―― 『東京ドリーム』というタイトルへの想いを教えてください。

Coccoまず『東京ドリーム』という歌があった。Coccoヴィジュアル重視だから、タイトルも音楽もイメージも全部一緒に出てくる。でも、なんだろう? なんでだろう? って知りたくなった。だから歌をうたって、絵を描いて、文章も書いて、なんで東京ドリームなんだろうということを自分で確かめたかった。

―― 自身を知りたくてエッセイも書かれたんですね。結果、何が見えましたか?

Cocco東京が好きなんだなってことがわかった。それは発見でもあるけれど、いちばん好きなひとって一番きびしく見ちゃうから。今、沖縄なんて嫌なこと100個くらい言える。これからは東京の嫌なことがたくさん見えてきて、東京との戦いとかが始まるんだなって気がする。だからこの先からは、私の「好きになっちゃったってわかってる東京」が始まる。

―― 大好きになると嫌いもいっぱい見えてくる...。

Coccoだからこの次はアンチ東京(笑)。東京ってほんとに不思議なポジション。故郷って絶対に揺るがない存在。故郷じゃないけれど、故郷以外でもっとも長く住んでいる場所が日本の首都で、大好きな東京。とても不思議な存在。

―― ありがとうございます。僕は本当にこの本を日本中の人に読んでもらいたいです。本当に、『サザエさん』並に一家に一冊あってほしいと思っています。

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