今月の特集1

 毎日、わたしたちはいろいろな紙に触れて生活をしています。トイレットペーパーしかり、仕事の書類しかり、もちろん、本だってそう。いつもそこにあることが当たり前のように感じていますが、実は紙にも、ほんとうにたくさんの種類があるんです!
 凸凹があるものやツルツルなもの、熱を当てると、一部が溶けて色がかわるものなどなどなど・・・。たとえば本は、紙が違うだけで全体の印象がまったく別の物になります。そう考えると、か、紙って偉大・・・!!

 そんな偉大な紙のことをもっと知りたくて、うずうずしていたミシマ社一同。
 もう、これは紙屋さん(製紙会社さん)に直接うかがおう! ということで、製紙工場に突撃したレポートがこちら

 最終回の今日は、工場見学中には聞けなかった、紙に関するあんなことやこんなことを、おうかがいしてきました!
 お答えくださったのは、工場見学にもおうかがいした王子エフテックス株式会社の佐野さん、中野さんと、王子製紙株式会社の屶網さんです。
 それでは、どうぞ〜!

(聞き手:長谷萌、新居未希 写真:長谷萌)

突撃! 製紙工場 番外編 「もっと教えて、紙のこと」

2013.11.14更新

企画から、紙になるまでに

――たとえばひとつの紙を、企画から制作までもっていこうと思うと、だいたいどれくらいの期間がかかるものなのでしょうか?

佐野ファンシーペーパー(本の表紙やノート、包装などに使われる特殊紙のこと)の場合だと、長期間会社の顔になるものなので、かなりのリサーチがいりますね。ブンペルにしろなににしろ、だいたい1年くらいでしょうか。デザイナーさんから意見を聞いたり、「どういう色の系統がいいのか」などいろいろと情報収集をしたりします。「ブンペル」や「ポルカ」も、実際に1年ちょっとくらいかかってますね。

――いろいろ意見をおうかがいするのは、やはりデザイナーさんが多いのですか?

中野そうですね、多いですね。

佐野それに「ブンペル」と「ポルカ」はとくに、装丁家さん狙いで紙をつくったんです。なのでたくさんの装丁家さん方に、色の系統だとか紙のコシだとかのご意見をおうかがいしました。やっぱり紙にも、流行り廃りがあるんです。「いまは何がほしいのか?」というのを、常にリサーチしています。

――紙にもトレンドがあるんですね。

中野そうですね。最近ですと、飾り気のない、素朴な感じがここ数年は人気です。色でいうと、いまは「フランス伝統色」がブームですね。マカロンの色みたいな感じの色だとイメージしていただければ、わかりやすいかなと思います。
屶網 だいたい、洋服で流行っているような色合いが、紙でも流行ることが比較的に多いかなと感じますね。

――なるほど〜。

佐野ほかの業界のように、仕掛けてそれがブームになるというようなことは、紙にはなかなかないんです。紙が主役になる商品というものがなかなか少ないので。本も、紙が......というよりも、やっぱり「そこに何が書いてあるか」という中身が主役ですよね。紙は主役にはなれないものなのかなあ......。

――いやいや、そんなことないですよ! 紙はめちゃめちゃおもしろいと工場見学にうかがって本当に感じました。まだまだ知らない魅力がたくさんあると思います!


紙の名づけ親は、誰?

――あの、洋紙の名前はいつもどうやって決めていらっしゃるんでしょうか?

屶網うーん、いろいろなんですけど......(笑)。

中野たとえば「ポルカ」はカラフルな色玉がはいっているので、それが水玉みたいだということで、水玉(=ポルカドット)から「ポルカ」という名前になりました。

屶網ほかにも「アドニスラフ」という紙(※ミシマ社本でいうと、『遊牧夫婦』シリーズの本文用紙などに使用されている紙です!)は、ギリシャ神話にでてくる「アドニス」という美少年からとっているんです。そもそも「アドニスラフ」をつくっているのが苫小牧工場という北海道にある工場なのですが、新聞紙に使われているグレーの紙しか作っていなかったんですね。で、そんな苫小牧工場で「アドニスラフ」を作ることになりまして。「アドニスラフ」は写真もキレイにのるし、見栄えもそこそこ......ということで、新聞紙ばかり作っている工場のなかでは「美少年」だったのかな、と(笑)。

――へえ〜! なんだか、紙の名前を見ているだけでも楽しいですね。


服を選ぶように紙を選べたら

――たとえばこのミシマガジンの読者の方が実際に、「ポルカ」や「ブンペル」なんかのファンシーペーパーを買いたいと思ったら、どうやったら買えるんでしょうか?

佐野だいたい、製紙メーカーというのはまず代理店さんに卸すんですね。うちで在庫持って販売しますよ! と手をあげてくれる代理店さんと契約して、そこに紙を卸しています。たとえばファンシーペーパーだと、日本ではほぼ紙の代理店である竹尾さんか平和紙業さんに行けば揃っていますよ。

――たとえば東京だと、竹尾さんは青山と錦町に、平和紙業さんは茅場町にその場で直接紙が買えるお店がありますが、その他はなかなか、直接買おうと思うと難しいのでしょうか?

佐野大阪にも、竹尾さんと平和紙業さんは直接買えるところがありますね。あとは、東急ハンズさんなんかはうちの紙を、名前そのままで販売してくださっています。服を選ぶように紙も選べたら、とっても楽しいですよね。

――そうですよね!!

佐野でも、やっぱりハンズさんのような販売店で買える種類は限られてはしまいますけどね。

屶網洋紙の場合はほんとうに、一包み売りなのでなかなか難しいですが・・・。あとは、国際紙パルプ商事さんが運営するサイト、ペーパーモールであれば1枚から買えますよ!

――少し思ったのですが、たとえば製紙会社さんが会社の片隅で紙を売る、なんてことは・・・

佐野それはできないんです。必ず代理店さんが間に入っています。

――王子製紙さんには本社の1Fに、「ペーパーライブラリー」という紙の展示をされているところがありますよね。

屶網以前、わたしがホームページのお問い合わせ担当をしていたときに、「紙の見本帳をください」とデザイナーさんからご連絡がありまして。そのときはお恥ずかしながら、本を作る過程にはデザイナーさんが深く関わっているということを知らなかったんです。

――なるほど。

屶網なので「見本帳をお渡しがてらどういうことをしているのか聞いてみよう」とお話をうかがいに行ったら、「どの紙を使うか、デザイナーも決められるんですよ」と聞いてびっくりしました。私たちは、出版社さんや印刷会社さんがどの紙にするかを決めているものだと思っていたんです。そこが最終だと思っていた。けれども、デザイナーさんというまだその先があったんですね。
 また、うちでは「グロス紙」というピカピカしている、印刷の再現性がいい紙が一番だ! と思っていたんですが、お話を聞くと「アドニスラフ」みたいなざらざらしたものが、とか、風合いがあるものがいいです、とおっしゃるんですね。「あ、方向性がまったく違うんだ!」とそのときにはじめて知りました。そこで危機感を感じて、直接意見をお伺いできるところをつくろう、ということで、弊社の1階にある「王子ペーパーライブラリー」を作りました。でも、ここでは直接は売れないんですけどね(笑)。
 自由に紙のサンプルを持ち帰れる、贅沢な場ということで。


紙の会社で働いて

――普段の生活のなかで気になる、紙のポイントはありますか? たとえば本を読んでいても、「ここでこの紙をつかうのか!」というような・・・

佐野それは、ぼくはあまりないですね。本は好きでよく読みますが、まず気になるのは紙よりも装丁家さん(笑)。これを見るのはクセなんです。

中野ミステリーであったり、小説のジャンルによっていろいろと使われている紙が違うので、それこそ色味であったりは気になったりしますね。

――なるほど〜。

屶網わたしの部署は一般紙を取り扱ってるのですが、一般紙はやはり一番多く使われる紙なんですね。けれども、それぞれ差がないようで実はあったり・・・というような微妙な違いがあるラインなんです。たとえばこの「ミルクリームロゼ」はピンク色なんですが、「ミルクリームハニー」は白っぽい。どちらの紙にするかで、本を開いた感じが全然違いますよね。そういう感覚も実感してもらい、説明しつつ本のイメージにあわせて選んでいただいています。真っ白な紙にするのか、生成りの紙にするかでも全然違いますからね。

――みなさんの、紙への愛を感じました・・・!


 紙にもそれぞれ個性があって、ぜんぶひとつずつ違うんだなあとしみじみ感じました。紙ひとつで、印象もまったく変わります。これから、紙を見る目線が変わりそう! 紙の可能性はすごいなああ〜〜と感動しました。
 屶網さん、佐野さん、中野さん、王子グループのみなさま、ほんとうにありがとうございました!

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